はびこれる惡草(あくそう)のあひだより
美なるものはほろび去れり
白き光の中より
健(けな)げなるものは逝けりーー
この詩に、私は痺れた。
三木露風の詩集『廃園』の冒頭の一節である。私がY書店で手にした『三木露風詩集』は、函なしの裸本であるため古書価格4000円であった。
岩佐東一朗の『詩集 航空術』が3000円。
両詩集ともに裸本にありがちな、革は痛んでいなかったのでうんとお買い得な気がした。
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西村貞の『日本銅版畫志』。
20年近く前、古書目録で購入した。
当時から、浮世絵は好きで、それに派生する銅版画にも興味があったため、特製版70部本エッチング付きに魅力を感じて、思わず求めたものだ。
『日本銅版畫志』は、対支那との15年戦争中にもかかわらず、西村貞により1941年(昭和16年)4月25日に刊行された非常に豪華な銅版画の研究書だ。
本和紙、原色版4カット、モノクロ図版多数という内容 . . . 本文を読む
坪内逍遥の『阿難と鬼子母』を紹介しよう。
著者署名入り50部本(70部?)だ。
この極美本を古書店で見つけたとき、思わず購入してしまった。
25年くらい前の話。
この頃は、書物展望社本で綺麗な保存状態であったら、軒並み手に入れていた。
3万円くらいだった。
装訂を行った齋藤昌三は、随筆集『書淫行状記』の中で、「本書の好評を得たこと」は、「著者坪内逍遥の声望と荒井寛方画伯の力」であった謙遜してい . . . 本文を読む
大阪出身の画家・鍋井克之の処女随筆集『和服の人』だ。
フランスやイタリアへの留学経験もある洋画家だが、「ちっとも洋風なことを書いていない」ので、タイトルは『和服の人』としたという。
限定200部の特装本で、天金に久留米絣装、著者の肉筆画が一枚入っている。
限定本ブーム時は、この肉筆絵入り本を探求する人も結構いたようだが、最近はどうであろうか。
私がこの本を入手したのは、古書蒐集に目覚めたばかりの . . . 本文を読む
岡場所で有名な深川。
中でも、殷賑を極めた切見世は、今どうなっているのか。
急に旅をしたくなって、築嶋倶楽部のある月島から出かけることにした。
ただし、江戸風情を味わうため、当時の切絵図片手の旅である。
さぁ、行こう!!
月島。
明治以降に埋め立てられた土地のため、江戸時代には存在しなかった。
江戸時代にタイムスリップすれば、月島は海の中。
そこで、切絵図でのスタート地点は、やむなく佃島だ。
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