さよなら風景

毎朝、部屋のベランダからスマホで写真を撮ってTwitterにアップしていた。

特に理由は無く、何かしらの日々のルーティンが欲しかった。

映画「スモーク」で、ハーヴィ・カイテルが、毎日同じ場所で写真を撮ってるという、めちゃくちゃ良いエピソードがあり、それを真似たのもある。

何も考えず、誰も映らない写真を日々撮り続け、アップし続ける。

それはそれで楽しい。人を撮るのはいろいろ気を遣うが、風景ならば気が楽だ。

風景だけでも、日々、ちょっとした変化に気づく事もあったりなかったりと楽しい。

そんな僕の部屋の前に、最近、新たに建物が建つことになった。

4年近く、毎日見続けてきた景色が、一瞬にして奪われてしまった。

誰が悪いわけじゃないけど、好きなものが奪われるのは、こんなに一瞬であっけないものなんだな。

悲しいけど仕方ない。

今までの風景は失われたけど、それぞれは存在している。

何も消えてはいない。

もう今までの風景を撮るのをやめます。

新たに楽しいもの見つけて行こう。

2019/12/20（金）晴れ

気づけば週末。そして気づけば年末だ。

日々の仕事に追われ、気づかぬうちにいろんなものが過ぎ去っていく。

仕事納めをしてしまうと、みなさん実家に帰ったりと予定があるので、わが職場の忘年会は、本日行われるらしい。

そう。行われるらしい。。。

いや、いいのだ。僕はバイトみたいなもんで、そういう場にお邪魔する立場でもないし、お邪魔したところで、何を話せばよいのかわからず、終始緊張して、結果つまらなそうにしている、と見られるのが関の山だ。

いい。これでいいんだ。

そうして僕は、今日もKATO'Sキッチンに行ってしまった。

2日連続だとアレかなぁ。。行きすぎかなぁ。
。
そんな思いを抱えつつ、看板も何もない、住宅街の中にひっそりとたたずむアパート。その一室にあるKATO'Sキッチンへと向かった。

外階段を上り、ドアを開ける。

「いらっしゃい」

2日連続だろうが、半年開こうが、大将の「いらっしゃい」は全く変わらない。嬉しすぎる。

靴を脱いで和室へ入り、コタツの前に腰を下ろす。

そしてすぐにつきだしが出てくる。

・里芋と厚揚げの煮物



里芋は初めてだ。味はちゃんと染みていて、里芋のねっとりした食感が、最初の突き出しとしては、食べ応えが十分な一品だ。いつものように発泡酒を頼み、その一品を楽しむ。

本日のおススメボードを見たら「塩サバ」がある。焼き魚があるとは！！！！早速注文する。

・塩サバ


ちゃんと大根おろしも添えられている。脂ものっていて、白ごはんが欲しくなるが、そこはグッと我慢して発泡酒で流し込む。

発泡酒を飲み切るころ、おススメボードの「里芋のポテサラ」というのが目に入った。なので、それと一緒にレモンサワーも注文する。

・里芋のポテサラ


見た目はジャガイモのポテサラと変わらないなぁ、と一口食べてみる。

ぅおうぉおお！！！！こ、、ここ、これは！！！

突き出しで出た里芋のねっとり感そのままに、それがポテサラになっている。

味はちゃんとポテサラだ。美味しい。でも食感がどえらいねっとりしている。何と言うか、ちょっと混乱する。

混乱して、驚いて、ちょっとのどに詰まりそうになる。

これ、おじいちゃんが食べたら危険なやつかもしれない

でもKATO'Sキッチンにはおじいちゃんは来ないのかもしれない。

美味しい。ちゃんと美味しいのだけど、食感とのど越しにパンチがありすぎて、しゃっくりが止まらない。

思わずレモンサワーをお代わりしする。

その後、安定の刺身を注文。

・いなだの刺身


ああ美味しい。ノーサプライズでちゃんと美味しい。。

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いやぁ、楽しかった。

ちょっと慣れてきた時に、こういうサプライズをしてくれるKATO'Sキッチンのお茶目さと粋さ。

慣れたらあかんよ。そう言われた気がした。

そうですよね。慣れるのなんて簡単だし、どうしたって慣れていくのだから、

いつまでも初めての気持ちで向き合って、楽しんでいかなきゃですよね。

大将、ありがとうございます。なんだか生き返った気がした。

帰り際、大将に「ありがとうございました」と言った。

大将は照れたように目をそらし、「また、、お待ちしてます」と言った。

僕はドアを閉め、外階段を、足早に降りていく。

また、、お待ちしてくれている。また、、来なきゃな！！