2018年のブログです
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アメリカの精神分析家であるボラスさんの『精神分析の経験-事物のミステリー』(館直彦他監訳・2004・岩崎学術出版社)を再読しました。
これもかなり久しぶりです。
ボラスさんの本については、何冊かはこのブログにも感想を書いていますので、ご承知のかたもいらっしゃるかもしれません。
アメリカ人ですが、イギリス独立派の精神分析を学んだ人で、ウィニコットさんやビオンさん、クラインさんなどの名前がたくさん出てきます。
本書はその書名のとおり、精神分析という経験をていねいに描写して、その中で起きていることを学問的に考察しています。
精神分析の経験がない人でも精神分析というできごとを想像できるような細やかな本だと思います。
じーじも精神分析そのものの経験はなく、精神分析的心理療法の経験から想像をするしかないのですが、それでも精神分析の重要な概念や考えが多少は理解できるような内容になっていると思います。
今回、勉強になったことの一つめは、ウィニコットさんのいう、二人でいて、一人でいる能力、の考え。
じーじはこれまで、これは母子関係の中で、子どもが徐々に自立していく様子と単純に理解していました。
しかし、これについては「本質的孤立」といって、成熟したおとなが、他者のいるところで一人でいるという能力に通じる大切な概念のようです。
二つめは、破壊性の創造的側面ということ。
これも基本は、母子関係の中で、母子分離のために、子どもが母親の(心理的)破壊を通して開放や自発性が起こる、と考えているようです。
三つめは、これとも関連をしますが、母親が思いやりの中で子どもの(心理的)破壊を是認することで、子どもにすまなさや罪悪感が育ち、子どもがそれまでの万能感からの脱出や成長が可能となる、という考えです。
いずれも、母子関係の中から、母親の愛情のもとで子どもがどう自立していくのかを考察し、成熟したおとなになる条件を考察していて、参考になります。
今後も、臨床現場での経験をさらに積み重ねて、こういった概念を参考にし、確認をしながら、力のある臨床家になりたいと思いました。 (2018.5 記)
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2020年11月の追記です
よく考えると、ここでも、生き残ること、がテーマになっているようです。
親が子どものわがままに耐えて、生き残ること、が子どもの自立や精神的成熟に大切なようです。 (2020.11 記)
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ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)のご紹介
経歴
1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。
1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。
1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。
1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。
1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。
2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。
2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。
仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。
所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会
論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか
住所 新潟市西区
mail yuwa0421family@gmail.com