2019年のブログです
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中井久夫さんの『隣の病い』(2010・ちくま学芸文庫)を再読しました。
これもかなり久しぶりの再読。
付箋とアンダーラインがすごいことになっているので、少し整理をしながら、しかし、またたくさんの印をつけながら、読みました。
例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、統合失調症の患者さんの幻覚妄想について。
患者さんにとって、幻覚妄想はたいへんな症状ですが、しかし、発病時の表現しがたいような恐怖体験に比べれば、幻覚妄想は言語化と視覚化がなされているので、まだ耐えられやすいかもしれない、という理解をされます。卓見だと思います。
二つめは、以下の文章。
「いかにデータとして欲しくても、患者さんにとって意味のないことはしない」
すごいです。当たり前のことなのですが、大学教授の言葉として、すごいと思います。
三つめは、河合隼雄さんとの出会いの思い出。
1969年11月の芸術療法研究会(今の芸術療法学会)に中井さんが顔を出したところ、河合隼雄さんが、当時はまだ知られていなかった箱庭療法の症例について発表をされていて、そこで意気投合をされたということで、なかなか感動的です。
中井さんは、これは使える、と考えて、さっそく病院で手作りの箱庭を作って、試してみられたそうで、その熱意と研究心がすごいです。
さらに、そこから中井さんの有名な風景構成法にも発展をしたといいますから、お二人の出会いは本当にすばらしいものだったと思いますし、お二人の熱意と探求心はすごいと思います。
読んでいて、なんだかこちらにまで勇気をもらえるような、そんな気がしました。
いい本を再読できてよかったなと思います。 (2019. 11 記)
もともとヨーロッパには砂遊びの文化があって、それが心理療療法として洗練されたと思うのですが、日本も箱庭遊びの文化があったことから、河合さんが導入されたと思います。ただし、その理論づけがすごいですし、感心させられますね。
もっとも、河合さんがおっしゃるように、砂に触っただけでも治療効果がありますし、あまり難しいことをいわずに、箱庭を味わうだけでもいいようですよ。