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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや海岸カウンセリングなどを研究しています

中井久夫『統合失調症の有為転変』2013・みすず書房-その2・こまやかな精神科治療に学ぶ

2025年01月08日 | 精神科臨床に学ぶ

 2017年のブログです

     * 

 中井久夫さんの『統合失調症の有為転変』(2013・みすず書房)を再読しました。

 前に読んだのは2013年秋ですから4年ぶりです(当時のブログもありますので、拙いものですが、よかったら読んでみてください)。

 いい本なので早めに再読をしようと思っていましたが、4年たってしまいました(中井さん、ごめんなさい)。

 しかし、やはりいい本です。

 中井さんの統合失調症の患者さんへの優しさが本からあふれてくるような感じで、読んでいてこちらまで優しくなれるような気がします。

 4年で自分がどれだけ成長できたのかは心もとないのですが、こういういい本を見つけて読むのも、一応、才能かもしれません。

 本の中身は、やはり中井さんの精神科診療のさまざまな工夫、丁寧な考察、そして、優しい祈りでしょうか。

 そうなんです。中井さんは患者さんに薬を出す時に、どうか効きますように、と祈るらしいです。

 すごいお医者さんです。

 あとは前回も書きましたが、絵画療法についての報告と考察。細やかでいい論文が並んでいます。

 この4年の間に、中井さんの『精神科医がものを書くとき』(2009)、『隣の病い』(2010)、『世に棲む患者』(2011、いずれも、ちくま学芸文庫)などなどを読ませていただきました(そのうちのいくつかはブログにご紹介させていただきました)。

 そんなわけで、中井さんのご本からはずいぶんと勉強をさせてもらっています。

 中井さんはいつもそうですが、実践第一で、ご自身が経験したことを丁寧に細やかに書いてくださるので、本当にとても参考になりますし、そこからまた自分の考えを深めていくことができるような気がします。

 そういう本が本当にいい本なのだろうと思います。

 今後、さらに経験を積み重ねて、考えと実践を深めたいと思います。        (2017 記)

     *

 2022年5月の追記です

 じーじも、カウンセリングが、効きますように、効きますように、ってお祈りしようっと。               (2022.5 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com 

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中井久夫『統合失調症の有為転変』2013・みすず書房-その1・ていねいな精神科臨床に学ぶ

2025年01月07日 | 精神科臨床に学ぶ

 2013年のブログです

     *

 6月~8月にかけて放送大学大学院臨床心理プログラムの病院実習で精神科病院におじゃましました。

 統合失調症の患者さんと接するなかで,いろいろなことを考え,学ばせていただきました。

 実習中は本を読む余裕がなかったのですが,実習が終わってから中井久夫さんの『精神科医がものを書くとき』(2009),『隣の病い』(2010),『世に棲む患者』(2011,いずれも,ちくま学芸文庫)などを読んで,実習中のじーじの疑問などがすでに中井さんによって丁寧に説明されていることがわかりました。

 実習前に読んでおけばよかったと後悔の毎日です。

 そんな中井さんの『統合失調症の有為転変』を読みました。

 中井さんのご本はいつもそうですが,この本も実践第一の本です。

 絵画療法など,じーじにとってもとても興味深い文章も載っています。

 中でも圧巻なのは中井さんと土居健郎さん,神田橋條治さんの鼎談です。

 何と豪華な顔合わせと思いましたが,読んでみると本当にすばらしい内容でした。

 1990年の文章ですが,今でも全く古くありません。

 雑誌『みすず』に載った文章らしいのですが,それをこれまで全く知らなかった自分が何と迂闊なことかと反省をしました。

 でも,今,読むことができて幸せでした。

 明日からまた少し元気に頑張れそうです。         (2013.11 記)

     *

 2022年12月の追記です

 この本については、その後、2017年に再度、ブログを、2020年にその追記を書いています(よろしかったら、読んでみてください)。

 同じような感想を繰り返してばかりですが、やはり大家の人たちの失敗を含めた正直さに感銘を受けます。

 少しでも近づけるように、さらに謙虚に学んでいきたいと思います。        (2022.12 記)

     *

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 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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神田橋條治『精神科講義』2012・創元社-患者さんを大切にする精神科医に学ぶ

2024年12月19日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2017年ころのブログです

     *

 精神科医で精神療法家の神田橋條治さんの『精神科講義』(2012・創元社)を再読しました。

 神田橋さんは、じーじが若い頃、名著といわれている『精神科診断面接のコツ』(1984・岩崎学術出版社)や『精神療法面接のコツ』(1990・岩崎学術出版社)などという面接技法の本を読ませていただいて、心理療法の勉強をさせていただいたかたで、じーじにとっては、土居健郎さんや河合隼雄さんなどとともに重要な先生です。

 その神田橋先生の精神科医療についての本で、この本もじーじにとっては中井久夫さんの精神病についての何冊かの本と並んで大切な本です。

 今回がたぶん3回目の再読ではないかと思うのですが、アンダーラインでにぎやかなだけでなく、付箋があちこちにあって、本がだんだんと膨らんできてしまいました。

 それでも、今回、初めて気づいた箇所もあったりして、あいかわらず自分の読みの甘さを反省させられましたし、何回読んでもいい刺激になる大切な箇所もいっぱいあって、勉強になりました。

 今回、印象に残ったことのひとつは、他の大家もよく言われていることですが、心理療法において、わからないところをきくことの大切さ。

 すぐにわかった気にならないで、不思議なところ、よくわからないところをていねいにきくことの重要性を指摘されています。

 そして、共感というのは、わからないところをきいて、双方がわかるからこそ共感が生じる、と述べています。

 また、治療者が、ああでもない、こうでもない、といろいろきいているうちに、患者さんもそういうやりとりの中で気づきを得るからこそ、患者さん自身の気づきになる、ともおしゃっています。

 さらに、この時に、治療者の理解はできるだけがまんをして言わずにいて待つと、それが患者さんの気づきを得られやすくする、とも述べられています。

 このあたりは、治療者が事態を理解するだけでなく、患者さんも事態を理解できる道筋が示されていて、たいへん勉強になりました。

 他にも、相手を大切にすることが即自分を大切にすることになること、看護においては意見の統一より個性をいかすことが重要、パワーポイントの功罪と双方向の議論の大切さについて、などなど、勉強になることが多くありました。 

 なにより読んだ後にすがすがしい気分になれて、本当にいい本だと思います。

 いつかまた読んでみたいなと思いました。           (2017?記)

     *

 2024年3月の追記です

 今ごろ気がついたのですが、神田橋さんも、わからないことに耐えることの大切さ、を述べておられました。       (2024.3 記)

     *

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 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

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 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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中井久夫『「つながり」の精神病理』2011・ちくま学芸文庫-ていねいな精神科治療のお手本に学ぶ

2024年11月27日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2016年ころのブログです

     *

 精神科医の中井久夫さんの『「つながり」の精神病理』(2011・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 単行本の『個人とその家族』(1991・岩崎学術出版社)の時も含めるとたぶん5~6回目だと思いますが、もの忘れのせいか(?)、今回も全く新鮮な気持ち(!)で読めました。

 読んでいると、ところどころにアンダーラインや付箋の個所に出会うのですが、ほとんど内容を記憶していません。

 全く新しい本を読んでいるようで、なにか得をした気分のようでしたが、しかし、よく考えると、うれしいような、かなしいような、複雑な気分でした。

 そんな中で、今回、一番のインパクトがあったところ、それは精神病者の人格についての考察の文章でした。

 このところ、同じようなことを考えていたので(でも、ひょっとすると、以前、中井さんの本で読んだ内容が、今ごろ私の中で熟してきただけなのかもしれません)、とても参考になりました。

 例えば、多重人格の人は人格の分裂が過激、とか、境界例の人は人格の統合性が不十分、などと述べられ、一方、健康な人は人格が柔軟に分裂しているのではないか、と述べられています。

 そして、統合失調症の人は(昔は精神分裂病といわれましたが)、人格が分裂しているのではなく、適度な分裂ができずに、かえって解体の危機に直面をしているのではないか、という仮説を述べておられます。

 まさに卓見だと思います。

 中井さんが述べておられるように、精神的に健康な人とは、人格を状況に応じて柔軟に分裂できる人、人格の分裂に耐えられる人なのではないか、と思います。

 今後もさらに深く勉強を続けていきたいと思います。          (2016?記)

     *

 2021年1月の追記です

 人格の分裂、というとちょっと過激な印象を受けますが、たとえば、人はたまに子どもっぽくならないと、こころのバランスが悪くなるのではないかと思うのです。

 子どもっぽくなって、甘えて、自由奔放になることで、こころの健康を保つようなところがありそうです。

 遊びが大切なことをウィニコットさんが述べましたが、遊びがないと創造性もなくなって、生き生きとしたところがなくなります。

 たまに子どもっぽくなることはこころにとても大切なことのように思われます。         (2021.1 記)

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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統合失調症のひろば編集部編『こころの科学・中井久夫の臨床作法』2015・日本評論社

2024年11月23日 | 精神科臨床に学ぶ

 2016年のブログです

     *  

 なぜか読みそびれていた雑誌「こころの科学」の特集号『中井久夫の臨床作法』を読みました。

 精神科デイケアでボランティアをしながら読んでいたのですが、久しぶりに、雑誌を読みながら、笑いそうになったり、涙ぐみそうになったりして、困りました。

 いい本です。

 それほど厚い雑誌ではないですし、値段もそれほど高くはないですが(ちなみに値段は1,800円です)、中身がすごいです。

 中井さんと一緒に仕事をしていた精神科医のみなさん(それぞれのかたがたが今では一流の先生たちです)が中井さんを囲んで行なった座談会と、中井さんの仕事ぶりをよく知る臨床家の先生がたの思い出話、それと中井さんの主要論文の三本立てですが、いずれも読みごたえがあります。

 特に、じーじは、村瀬嘉代子さんと青木省三さんの思い出話を読んだ時には涙が出そうになりました。

 座談会でも貴重なお話がたくさん出てきて、ひとつひとつが勉強になります。

 一貫しているのは、中井さんの、患者さんの側に立つ、患者さんを尊敬する、という姿勢。

 すごいです。

 本当の意味で(同じ人間どうしとして)患者さんと対等なんだなと思います。

 じーじも精神科デイケアではメンバーさんのすごさや純粋さを実感する毎日ですが、さらに、みなさんといっしょに深く学び、経験を積み重ねたいと思います。               (2016 記)

     *

 2024年11月の追記です

 中井さんは、『ハムレット』の、世の中には人間の力ではわからないものがある、という言葉を引いて、わからないことに耐えることの大切さを述べます。

 人間の限界と、それに耐えて考え続けることや生き続けることの大切さを教えられています。

 そして、その上で、祈ることの大切さにも触れます。

 すごい人だな、と本当に思います。          (2024.11 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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中井久夫『こんなとき私はどうしてきたか』2007・医学書院-希望を失わないちから

2024年10月31日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 中井久夫さんの『こんなとき私はどうしてきたか』(2007・医学書院)を再読しました。

 たぶん、数年前、大学院の精神科実習の頃に購入したのではないかと思いますが、その後、2種類の付箋が貼られていますので、読むのは今回で3回目だと思います。

 本の帯に、希望を失わない力、とあって、統合失調症の患者さんへの細やかで、丁寧で、それでいて、実践的な配慮が綴られています。

 もともとはある精神病院の医師と看護師の研修会での講義をまとめた本で、とてもわかりやすく述べられている点が特色です。

 今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、妄想を語れる時期や独り言を語れる時期は、それまでの形のない恐怖に直面していた時期を抜け出した時にあたる、という指摘。

 とかく、妄想や独り言は否定的にとらえがちですが、肯定的な見方も提示していて、すごいな、と思います。

 二つめは、回復の度合いを、精神面でなく、身体面の診察で診るという視点。

 ともすると、患者さんは焦りもあって頑張りがちですので、それよりも、睡眠、寝起き感、食事(特に、味わえるかどうか)、口の渇き、便通、などなど、体の調子を細やかに検討することで、病気の回復具合がわかる、と述べています。卓見です。

 そして、三つめ。

 すごくびっくりしたのですが、中井さんも、シェイクスピアさんの『ハムレット』を引用していました(3回目でようやく気づくとは、自分のどんくささにあきれますが…)。

 それは、『ハムレット』にホレイショさんという誠実な家来が出てきますが、ハムレットさんとホレイショさんのあいだで、わからないことがいっぱいある、という命題が話題になるところを挙げて、中井さんは、ホレイショさんの原則となづけて、わからないことがいっぱいあるけど、でも、命にかかわるとはかぎらないよ、と話す、といいます。

 まさに、わからないことに耐える、わからないことを尊重する、というシェイクスピアさん、キーツさん、ビオンさん、メルツアーさんなどのさまざまな人たちの知恵の再現だと思います。

 考えれみれば、わからないことがあっても、それに動揺をしなければ不安にもなりにくいわけで、精神衛生は悪くなりにくいでしょう。 

 シェイクスピアさんはもっともっと大きなテーマも語っているような気もしますが、わからないことに耐える能力というのは、いずれにしても生きていくうえで、大なり小なり大切なことのようです。

 遅まきながらの大きな驚きにおおいに喜び、さらに勉強をしていこうと思いました。          (2019.2 記)

     *

 2021年1月の追記です

 中井さんも、わからないことに耐える、ことの大切さを挙げておられることに、この時にようやく気づいて、本当にびっくりした記憶があります(勉強不足を反省です)。

 あいまいさに耐えること、ネガティブ・ケイパビリティ(消極的能力・負の能力)の大切さです。

 さらに勉強をしなければ、と思います。         (2021.1 記)

     *

 2022年9月の追記です

 庄司薫さんの『さよなら怪傑黒頭巾』(1973・中公文庫)を再読していたら、なんとこのハムレットさんとホレイショさんの場面が引用されていました。

 大学1年生だったじーじは1回読んでいたのですが、素通りしてしまったようです。

 それでも、50年後に気づいただけでも偉いかな?          (2022.9 記)

     *

 2024年1月の追記です

 久しぶりに本書をぱらぱらと読んでいると、わからないことがいっぱいある、ということは、患者さんには新鮮な情報である、という記載に気がつきました。

 患者さんの妄想の一つに、みんなわかられている、というのがあって、それが否定されるのがホレイショの原則だというのです。

 中井さんはやはりすごいです。         (2024.1 記)

     *     

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 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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村澤真保呂・村澤和多里『中井久夫との対話-生命、こころ、世界』2018・河出書房新社

2024年10月30日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 村澤真保呂さんと村澤和多里さんの『中井久夫との対話-生命、こころ、世界』(2018・河出書房新社)を読みました。

 お二人のお父さんが中井さんと大の親友で、お二人は子どもの頃から中井さんのことを、ナカイのおじさん、と慕っていた間柄とのことで、そういうこともあってこの本が書かれたようです。

 すごく面白かったです。そして、刺激的でした。

 第一部は、中井さんとの対話。

 中井さんの本音トークが久しぶりに聞けますが、その丁寧な語りは貴重です。

 治療とは患者さんの内なる自然を回復すること、とか、治療には遊びが大切、などなど、意味深い発言がなされています。

 中井さんの発言から、深い思索が導かれるようで、なんとなく襟を正して読むような感じになりました。

 第二部は、中井さんの思想を村澤さんたちが解説を試みています。

 中井さんの、寛解過程論、を中心に中井さんの世界が解読されます。

 中井さんが翻訳をされたサリヴァンさん、その世界に近い量子力学のボーアさん、免疫学の多田富雄さん、生物学のユクスキュルさん、小児科医の松田道夫さん、などなどの思想が紹介されます。

 いずれも、じーじも以前から興味のある方々で、その偶然に驚きながら、本棚を改めてチェックしました。

 じーじが中井さんに魅かれるのも、このあたりに理由があったのかもしれません。

 無理のない、患者さんに優しく、患者さんを信頼しているその姿勢には、本当に頭が下がります。

 今後も折にふれて読んでいきたいな、と思いました。             (2019.1 記)

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 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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木村敏『臨床哲学対話-あいだの哲学-木村敏対談集2』2017・青土社-精神医学と哲学の対話に学ぶ

2024年10月17日 | 精神科臨床に学ぶ

 2017年のブログです

     *

 木村敏さんの対談集『臨床哲学対話 あいだの哲学 木村敏対談集2』(2017・青土社)を読みました。

 とってもむずかしかったですが、とっても面白かったです(どこまで理解をできているかはやや不明(?)ですが…)。

 対談者は、坂部恵さん、中村雄一郎さん、柄谷行人さん、市川浩さん、中井久夫さん、村上陽一郎さんなどの、哲学者や思想家などをはじめとするそうそうたるメンバー。

 木村さんの「あいだ」の哲学を中心にすえて、人間の存在や精神病についての哲学的な議論が進みます。

 その議論をご紹介するのは凡人のじーじの手には余ります。

 ぜひご一読ください。

 今回、わからないなりに、じーじの印象に残ったのは、まずは、坂部恵さんとの対談。

 坂部さんは『仮面の解釈学』や『かたり』などで有名な哲学者で、じーじもそのご本は何冊か読んでいますが、とても面白く、刺激的です。

 坂部さんといえば、じーじが家裁調査官になった時に、坂部さんの『仮面の解釈学』を絶賛していた同期がいて、当時、じーじは坂部さんのお名前も知らなかったのですが、それから30年くらい遅れて読んで、感動した記憶があります。 

 今考えると、もったいないことをしたなと思いますが、読めただけでも幸運かもしれません。

 木村さんと坂部さんは、「作り」と「かたり」というテーマで対談をされていますが、人間の存在や「仮面」についての考察がなされます。

 「仮面」についてのところでは、レヴィナスさんも出てきてびっくりでした。

 もうひとつ、印象に残ったのが、市川さんや柄谷さん、中井さんとの対談で、ここでは、境界例は嗜癖、対人関係嗜癖である、という議論がなされ、今後の参考になりました。

 また、ここでも、人間の存在をめぐる議論でレヴィナスさんが出てきて、やはりレヴィナスさんという哲学者は大切な存在のように思われました。

 今、ちょうどレヴィナスさんの『全体性と無限』(2005・岩波文庫)を再読している最中なのですが、方向性は間違っていないのかなと自信になりました。

 回り道になろうとも、焦らずに、ゆっくりと勉強を続けていきたいと思います。          (2017 記) 

     *

 2020年秋の追記です

 じーじがレヴィナスさんに興味を持ったきっかけが何だったのか、しばらく思い出せなかったのですが、どうも木村さんの論文に刺激をされて読むようになったようです。

 なかなか難しくて、今も十分には理解ができていませんが…。          (2020.10 記)

     *    

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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木村敏『臨床哲学対話-いのちの臨床-木村敏対談集1』2017・青土社-精神医学と哲学の対話に学ぶ

2024年10月16日 | 精神科臨床に学ぶ

 2017年のブログです

     *

 精神科医の木村敏さんの『臨床哲学対話-いのちの臨床-木村敏対談集1』(2017・青土社)を読みました。

 木村さんの本を読むのは久しぶりでした(木村さん、ごめんなさい)。

 木村さんは名著『人と人の間-精神病理学的日本論』(1972・弘文堂)で有名で、当時、土居健郎さんの『「甘え」の構造』(1971・弘文堂)とともに一世を風靡しました。

 じーじは少し遅れて、1977年の就職後に、なぜか『分裂病の現象学』(1975・弘文堂)を読んで感動しました(こうしてみると、じつはこの頃から統合失調症に関心があったようですね)。

 そして、さらには『自覚の精神病理』(1970・紀伊国屋書店)などへと進んで、それからはずっと木村さんの著作と格闘しながら臨床をやってきた感じです(木村さんの本は難しいので、本当に格闘するという感じです)。

 今回の本は対談集なので比較的気軽に読めます。

 一番の収穫は、精神障碍者施設べてるの家のメンバーさんとの座談会の部分で、私はここで初めて、おそらくは木村さんのふだんの優しい、ていねいな精神科医ぶりを少しだけ拝見することができた感じがして、とても感動しました。

 高名な精神科医の先生ですが、さすがにその対話や面接の力量はお上手だなと感心させられました。

 また、同じく精神科医の中井久夫さんや安永浩さんとの鼎談も、三人三様のお人柄とお考えが垣間見られて、とても楽しく読ませていただきました。

 さらには、作曲家の武満徹さんとの対談では、それこそ木村さんの得意とする「あいだ」をめぐっての考察がくりひろげられ、知的好奇心をかき立てられました。

 ほかにも、有名な臨床家などとの対談があって、木村ファンには魅力的で、楽しく読める本だと思います。

 久しぶりに木村ワールドにひたって、知的な刺激をいっぱいいただき、元気になったような気がします。        (2017 記)

     *

 2024年10月の追記です

 口が悪いというか(?)、率直なお話をすることが多い精神科医で心理療法家の山中康裕さん(山中さん、ごめんなさい)は、名古屋市大時代に、教授の木村先生は面接が下手(?)なので、面接の上手な中井久夫さんを助教授にお招きした(?)、とある本で述べておられましたが、この本を読むと、木村さんの面接のうまさがよくわかりますね。         (2024.10 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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中井久夫『最終講義-分裂病私見』1998・みすず書房-精神科臨床の深い理論と実践に学ぶ

2024年10月11日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2014年ころのブログです

     *

 精神科医の中井久夫さんの『最終講義-分裂病私見』(1998・みすず書房)を久しぶりに読みました(統合失調症と名称変更がされる前に書かれた本です)。

 購入したのが2003年で、その後、何回かは読んでいるはずですが、それにしても久しぶりです。

 ところどころにアンダーラインがあるのですが、やはりかなり新鮮な感じで(?)読んでしまいました。

 精神科デイケアのボランティアでの経験をふまえて読むと、うなずけるところが多々あり、勉強になりました。

 エヴィデンスとケーススタディの関係、妄想のプラス面、妄想へのつきあい方、患者さんの提案を3週間待ってみること、などなど、ていねいで細やかな配慮が参考になります。

 中でも、今回、もっとも、勉強になったこと、それは、現実の姿を大切にすることの重要性、ということです。

 中井さんは、事象を区別したり、分類をせずに、事象そのものを素朴に見ることの大切さを説きます。

 その理由は、事象を区別したり、分類をすると、事象は概念に近づくから、と言います。

 エヴィデンス重視の中で、概念化が盛んで、それがあたかも科学的と誤解をされますが、臨床にあっては、概念より事象そのもの、現実そのものが重要だ、ということになるのではないかと思います。 

 いま、ここでの現象を、いかにありのままとらえ、感じ、考えていくのかが、より重要、ということではないかと思います。

 信ずるに足る先輩がいることに感謝をして、さらに勉強を続けていきたいと思います。        (2014?記)

     *

 2022年12月の追記です

 今月のEテレ「100分 de 名著」は中井久夫さんの特集。

 第一回目はこの『最終講義』でした。

 講師は精神科医の斎藤環さん。中井さんのすごさをていねいに解説されています。

 じーじも初心にかえって勉強させてもらっています。         (2022.12 記)

     *

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 経歴 

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 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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松木邦裕『精神病というこころ-どのようにして起こりいかに対応するか』2000・新曜社

2024年10月10日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

     *

 精神科医で精神分析家の松木邦裕さんの『精神病というこころ-どのようにして起こりいかに対応するか』(2000・新曜社)を再読しました。

 ずいぶん久しぶりの再読ということで(松木さん、ごめんなさい)、ところどころにアンダーラインや付箋があるのですが、例によって(?)、ほとんど覚えておらず、おかげさまでとても新鮮に読みました。

 このところ、精神科デイケアで勉強をさせていただきながら、精神病患者さんの不安や迫害妄想、処罰妄想などと罪悪感、後ろめたさの投影といったことなどを少し考えているのですが、ちょうど参考になりそうな記述があったりして、とても勉強になりました。

 特に、精神病の患者さんが破滅不安から逃れるために不安を周りに投影し、迫害妄想を形成するという説明は、とてもよくわかるような気がしました。

 また、この本では、病理の理解だけでなく、それらへの対応もとても具体的で、裏づけがあって、参考になります。

 いずれも、精神分析のクライン派の妄想・分裂ポジションの考え方や精神分析家のビオンさんのもの想いの考え方などが基本になっているようですが、とても難しいのでさらに勉強の必要性を感じました。

 今後ももう少し精神科デイケアでお世話になりながら、勉強と経験を積み重ねていきたいと思います。         (2015?記)

     *

 2019年夏の追記です

 ボランティアでおじゃまをしている精神科デイケアでの最近の議論は、妄想のあるメンバーさんにいかに対応するかという点。

 精神科医の中井久夫さんなどの本を読むと、否定も肯定もせず、不思議がることがいい、とあるのですが、興奮気味にやや早口でしゃべるメンバーさんにうまく対応するのはなかなかむずかしいことです。

 しかし、妄想を無理になくすことの危なさも述べられていますので、ゆっくりとつきあっていければと思います。

 さらに勉強が必要です。         (2019.7 記)

     *

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 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

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 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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松木邦裕『精神科臨床での日常的冒険-限られた風景の中で』2001・金剛出版

2024年10月09日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

     *

 精神科医で精神分析家の松木邦裕さんの『精神科臨床での日常的冒険-限られた風景の中で』(2001・金剛出版)を久しぶりに再読しました。

 何回目になるでしょうか。

 読みやすい本なので、家裁調査官の頃から精神科臨床のことを勉強するために読ませてもらっている本です。

 本は付箋でいっぱいですが、今回も勉強になったところが多くありました。

 一つめは、臨床家が生き残ることについて。

 松木さんは、とにかく、なんでも、持ちこたえなさい、といいます。

 まずはそれが大切なことのようです。

 二つめは、患者さんをおとな扱いすることの大切さ。

 さんづけで、患者さんの調子が悪い時でも、患者さんのおとなの部分と会話をすることの重要性を説きます。

 三つめは、患者さんも精神科臨床も10年以上のスパンで見ていくことの大切さ。

 ともすると、目の前のできごとに一喜一憂してしまいますが、患者さんも臨床も10年単位で見ていく大切さを述べています。

 その他にも、学ぶところが多くあって、やはりいい本です。

 読みやすい本ですが、中身は深く、経験を積めば積むほど、勉強になることが増えてくる本だと思います。

 さらに謙虚に経験を積み、学びを深めていきたいなと思いました。         (2015?記)

     *

 2022年5月の追記です

 10年以上のスパンで見ていくことの大切さ、ということは重要だと思います。

 統合失調症の患者さんに限らず、たとえば、パーソナリティ障害の患者さんなどもその治療は時間が必要なことが多いです。

 難しいことだとは思いますが、焦らないことが大切です。

 かりに一時的に症状が悪化しても、落胆する必要はありません。

 そして、症状が軽くなれば、その後は、治療とともに社会生活の中での成長が大切になると思います。         (2022.5 記)

     *

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 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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木村敏『臨床哲学講義』2012・創元社-こころ・自己・生命を考える

2024年10月01日 | 精神科臨床に学ぶ

 2020年10月のブログです

     *

 木村敏さんの『臨床哲学講義』(2012・創元社)を再読しました。

 なんと8年ぶり。ご無沙汰してしまいました。

 木村さんは精神科医で精神病理学者。

 このブログでも何冊かの本を紹介させてもらっていますが、人と人のあいだ、とか、自己論、とかで有名です。

 じーじは、きっかけをよく記憶していないのですが、家裁調査官になって少しして、河合隼雄さんや土居健郎さんらに続いて、木村さんの本を読んだように思います。

 難しい内容でしたが、わからないなりにも頷けるところがあり、調査官研修所の修了論文は大胆にもユングと木村さんのことを書きました(今考えると、若気の至りで恥ずかしいです)。

 その後も木村さんの本を追いかけていますが、とにかく難しいので、どこまで理解できているか心もとありません。

 今回の本は、連続講演の記録ですので、少しは読みやすいのですが、中身はレベルが高いので、やはりなかなか難解です。

 それでも、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、精神の病いは、症状だけではなく、生き方や対人関係のあり方が大切だということ。

 現代の精神医学は、症状をDSMなどのマニュアルによって判断し、薬を処方しますが、本当に治療をするためには、人間学的な理解が大事になるといいます。卓見だと思います。

 二つめは、ちょっとびっくりしたのですが、フロイトさんの死の欲動への評価。

 フロイトさんが晩年に唱えた死の欲動については、精神分析家の間では評判があまり良くありませんが、木村さんの生命論とかなり近いところがあるようです。

 人が生まれ、死ぬということはどういうことなのか、かなり根源的なところを議論されていて、なかなか刺激的です。

 難しい本ですが、さらに読み深めていこうと思います。         (2020. 10 記)

     *

 同日の追記です

 木村さんの自伝(『精神医学から臨床哲学へ』2010・ミネルヴァ書房)を読んでいると、小学校時代、運動が苦手でいじめられっ子だった、と書かれています。

 そういえば、中井久夫さんもいじめられっ子だったとのこと。

 こんな大学者さんたちでも、子どもの時には苦労をされたのですね。          (2020. 10 記)

     *

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 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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木村敏・金井恵美子『私は本当に私なのか-自己論講義』1983・朝日出版社-「私とは?」を考える

2024年07月30日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2017年ころのブログです

     *

 精神科医の木村敏さんと作家金井恵美子さんの対談『私は本当に私なのか 自己論講義』を久しぶりに再読しました。

 1984年に買って読んでいるようなので、30数年ぶりです。

 買った時はまだじーじの臨床の実力が本当に初心者の時でしたので、あまり印象に残らずに今日まできてしまいました(木村さん、金井さん、ごめんなさい)。 

 今回は違います(?)。そうも言えませんが…。

 まず、今回、気がついたのが、作家金井さん相手に木村さんの優しい精神科医ぶり。

 診察室での精神科医、木村さんの温かい雰囲気がうかがわれます。

 難しい理論を構築される一面とはまた違った精神科医本来の木村さんを見るようです。

 もう一つ、気づいたことは、木村さんの精神病理学である臨床哲学の深化の途中経過をちょうど眺められる点。

 今ではかなり確立されている木村さんの自己論や生命論が、この本ではまだまだ深化途中の形で、少し荒っぽく、しかし、エネルギッシュに、大胆に、見ることができます。

 差異の差異化、場所の自己限定、自己の自己限定、など、懐かしい言葉が並びます。

 このような思索と経験の中から木村さんの臨床哲学が進化してきたんだな、と感慨深いものがあります。

 作家の金井さんに触発をされて、木村さんはていねいに細やかな考察を行なっており、以前よりは多少は力のついた(?)今の私でも、とてもスリリングに読めました。

 今後は30年も放っておかずに、10年くらい内には(まだ生きているかな?)また読みたいなと思います。 (2017?記)

        *

 2023年6月の追記です

 木村さんの自己論や生命論はかなり難解ですが、興味深いものがあります。

 自己や生命を完全に解明できているわけではないのだろうと思いますが、しかし、方向性は間違っていないような気がします。

 少なくとも、精神病の患者さんの自己のあり方を考えるうえではとても参考になります。

 今後も少しずつでも学んでいきたいなと思っています。          (2023.6 記)

     *

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 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

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 仕事  心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています。

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