レスビアンをテーマにした作品で感動したのが、1961年の『噂の二人』。監督がウイリアム・ワイラー。主演がオードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーンだった。オードリーもシャーリーも一番脂がのったころで、最高に美しかった。
『キャロル』を見た時、私はなぜか、ふっと『噂の二人』が頭に浮かんだ。
裕福な家に嫁ぎ、かわいい娘までいる主婦・キャロルを演じるのがケイト・ブランシェット。デパートの店員をしながらも、写真家を目指すのがルーニー・マーラー。
この二人の出会いは、売り子とお客の関係から始まる。
一見、ありそうでなさそうなミステリアスな出会い。お互いが惹かれ合うエクスキューズが、二人だけの車の旅によって露見されていく。
女性という同性であるがゆえに、お互いの心の病みへの憐憫の情が沸騰点に達した時、二人はついに結ばれる。
その狂おしい二人の姿を、優しく眺めるようにカメラが追う。まさに耽美と退廃である。
ラストのケイト・ブランシェットの表情は、もしかしたら、映画史上、最高の表情として、賞賛され、語り継がれるに違いない。