「男2万円、女千円、カップル5千円 乱交パーティ」
こんなキャッチコピーの『愛の渦』試写状が届いた時、ちょっとだけドン引きしていた。今年で還暦になる干上がったおばさんには、はるか彼方の昔の出来事(あ、乱交パーティには出たことがないが)のような感じがして、最近セックスへの欲望が萎えている自分は、この作品をきちんと正視できるか不安だった。
しかし、男2万円、女千円、カップル5千円が、なんだかいつまでたっても頭から離れず、いや、こりゃー見ろ!ということだと思い、試写室に出かけた。
オープニングからラストまで、ほとんど乱交パーティシーンだけと言っても過言ではない。見ず知らずの赤の他人の男女が組み合わせを変えて、とっかえひっかえ絡み合う。
正常位、騎乗位、アナル、フェラ、もう何でもありなのである。
ややもすると、エログロナンセンスな展開になるかも知れないのに、各シークエンスのこのピュアな清涼感はいったいどこからきているのかと、感心していた。
そこには、ベルナルド・ベルトリッチ監督の「ラストタンゴインパリ」が見えたり、パゾリーニの「デカメロン」が見え隠れしたりで、崇高な文学作品に仕上がっていたのだ。
音楽も映像も実に洗練されている。何よりも、岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家・三浦大輔初監督の脚本には鳥肌がたっていた。
人間の性欲のリアルさ、切なさ、哀愁、見事に描き出していた。
乱交パーティに出席するフリーターを演じた池松壮介亮君、女子大生を演じた門脇麦ちゃんの体当たりの演技は、性に対するアグレッシブな姿勢や本気度を強烈に表現してくれ、早くも今年見た邦画では最高の一本になってくれた。
3月1日から公開
【監督】三浦大輔
【出演】池松壮亮 門脇麦 滝藤賢一 新井浩文 柄本時生 窪塚洋介