マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『母の身終い』

2013年11月08日 | 映画

来年、還暦になる。つまり60歳になるのだ。そのせいとは言えないが、最近、「死」をかなり意識してきた。

日本の女の平均寿命は88歳というが、私はそこまで欲張らなくてもせめて80歳でいいかなと思っている。いや、これは理想であって、もう少し早まるかもしれない。

とすると、あと、私の寿命は20年ということになる。

「MerryXmas &happy New year」を言えるのも、あと20回だと思うと、なんだか、急になんに対してもストイックになってきた。

今までムカついていた奴にもムカつかなくなり、人よりも一歩抜け出したいという野心も失せ、何事に対しても頭に来ることがなくなっている。

まるで性欲を封じられた去勢馬のような感じなのだ。

だからと言って、空しいとか寂しいとかいうセンチメンタリズムもなく、「ただ一人、毎日楽しく、面白く生きていれば、ま、いいっか」的な人になってしまった。無駄な喜怒哀楽のエネルギーを使うのがばかばかしくなってきたのだ。

ジムで筋トレ、有酸素運動やり、大好きなヒップホップダンス踊り、いい汗かいて、お風呂に入ってビールを飲む毎日がたまらなく楽しいのだ。その合間に原稿書いたり、講演したりで、本当に充実しているのだ。

今はこれでいい。これ以外の何も望まない。

しかしだ。『母の身終い』の主人公の老婆のように寿命前に、不治の病を患ってしまったら、それこそこんな充実した日々が一転してしまう。

日本は高齢化社会ではあるが、ある意味において安楽死、尊厳死に対しては消極的な国だと思う。

しかし、スイスには「幇助自殺協会」というシステムがあり、利己的な動機以外の自殺を望む人を幇助することが許されている。

この発見には驚いた。

脳腫瘍の末期を宣告されたエレーヌ・ヴァンサン演じる老婆は、スイスに渡り、この方法を選び死を迎える。死ぬ瞬間まで、医療つけになり苦しみ痛むのなら、その前のまだ元気なうちに逝ってしまいたいという人間としての美学と矜持を保ちながらである。

「さて、もし、私がそうなった時、どうするのだろうか?」

この作品を見た人なら、誰もが自問自答することだろう。

11月30日から公開

【監督】ステファヌ・ブリゼ

【出演】エレーヌ・ヴァンサン  ヴァンサン・ランドン