マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『シャッターアイランド』

2010年03月29日 | 映画
マーティン・スコセッシ監督が、なぜに『シャッターアイランド』を撮ったのか?

あまりにも強い印象を残したので、スコセッシファンの私は、この新作を見た後、すぐにスコセッシの監督デビュー作品『明日に処刑』(1972)を見ることにした。

30年代の大不況のアメリカを舞台にしたギャングもので、主演はバーバラ・ハシーとデヴィット・キャラダイン。小規模だが、社会的矛盾、男と女の個性的かつ偏執的恋愛感、バイオレンスが込められていて、これがスコセッシのたたきなのだと納得した。この作品の後に、軒並みに『アリスの恋』や『タクシードライバー』という大傑作が生まれた。

デビュー作にこそ監督の原点や描きたかったテーマがあり、必ずヒントが隠されているのかもしれない。

最近では、レオナルド・ディカプリオとペアリングを組み、『ディパーテッド)』(2006)
『アビエイター(2004)』『ギャング・オブ・ニューヨーク(2002)』などの、巨大な制作費を注ぎ込んだ大作を撮っている。

スコセッシ監督は多分、ディカプリオにオスカーを与えたいのだろう。この3作はともに良作で一点非の打ち所がないのだが、魂を揺り動かされるほどの大きな感動はなかった。

さて、『シャッターアイランド』に話しを戻すことにしよう。

今回のスコセッシ監督は今までにないほど異常な異臭を放っていた。ジャンル的に見れば、サイコサスペンス、サイコホラーになるだろう。

宣伝文句が、「4月9日謎解きに参加せよ」である。確かにオープニングからエンディングまでハラハラドキドキで目が離せないというストーリーだということだけを書いておくことにしよう。

書いてしまうと見る楽しみがないからである。

驚嘆すべきは、今回のスコセッシ監督とディカプリオのタッグは、今までの作品とは一線も二線を画した素晴らしい作品(これでは説得力がない表現か)に仕上がっていた。

スコセッシ監督とディカプリオの埋もれていた異様さや新しい面が、続々とスクリーンを駆け巡る。

ストーリーテリングに満ち溢れているだけでなく、心に傷を持った人間の深淵にも迫り、人間の弱さと脆さを露見させようとする強い哲学をも主張している。

見終えた後、私は大尊敬するスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』を見た時と同じような感想が心をよぎった。

ということは、『シャッターアイランド』も、わが人生で心に残る作品の一作になること間違いなしである。


4月9日から全国公開

【監督】 マーティン・スコセッシ
 
【出演】 レオナルド・ディカプリオ 、 マーク・ラファロ 、 ベン・キンズレー