マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

白い馬の季節

2007年10月04日 | 映画
 「僕、競走馬です。 成績次第の厳しい世界で生きてます」

 草原に座り込んだ一頭のかわいい馬が、こうしゃべる「セゾンカード」のCMにびっくりした。多分、このCMを作った方はかなり競馬に精通した方なんではないだろうか?クレジットカードと競走馬をうまく結びつけていている。斬新な発想で見る人を引きつける。でも、実際に馬は地面に座ることは不可能だと思うけど。

 競走馬も厳しいが、モンゴルの馬も厳しい。

 モンゴルの草原はカンバツ続きで、急速に砂漠化が進み、遊牧民たちの家畜が次々に倒れている。これが、現在のモンゴルの実体であることを知って驚嘆した。そんな遊牧民と馬との強い絆を描いたのが、10月6日から公開される「白い馬の季節」である。

 遊牧民ウルゲン一家はカンバツのために、最愛の息子の学費が払えなくなる。家族の一員であった白い馬を売り、町で暮らそうと妻が言う。しかし、夫ウルゲンは根っからの遊牧民。頑として、それを認めない。

 このストーリーにかなり古い日本映画、山本嘉次郎監督、高峰秀子主演の「馬」をダブらせる往年の映画ファンもいるだろう。馬と農民の関係を描いた秀作であった。

 政府の命令で牧草地に柵が張られ、ついに、遊牧民として生きれれなくなったウルゲンは、泣き泣き白い馬を売り、町に出る。

 自然と共に生きる人々の、その大切な自然が目の前から奪われていく悲しさと寂しさが、画面いっぱいに広がる。

 ラストは馬と人が乾いたアスファルトの一本の道路で繋がる。哀感がほんのりと漂い、涙が誘われる見事なエンディングである。

 競走馬もモンゴルの白い馬も、厳しい世界で生きているのは変わりない。


公式サイト http://www.shiroiuma.jp/
監督・脚本・出演 : ニンツァイ
出演 : ナーレンホア 、 チャン・ランティエン
公開 10月6日 岩波ホール