臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

山本かね子作「遙かになりぬ戦も友も」(角川『短歌』六月号より)

2013年10月07日 | 結社誌から
        戦ありき

〇  生涯に悔しき戦あしこと戦始めし人ありしこと

〇  灰色の歳月なりき銃剣に人を突けよと教へられたり

〇  殺し合ひせし歴史消すすべあらず暗き歳月の跡ひび割れて

〇  いま聞いてもあの音なりき空を航く爆音は防空壕に聞きて恐れき

〇  いまに知るまこと切なき真相の特攻隊員若き死五千

〇  同時代を生きて残りしをみなわれ祈らんための手も老いにける

〇  空行くと乗りて機上の人となる戦はぬ乗物なれば乗るなり


        禎子逝きて十一年

〇  どの辺りにゐるか眠りは足らへるか空腹に悩むことなどなきか

〇  見えぬものを詠めよと禎子言ひをりき新しくあれと常言ひをりき

〇  常凡を排し個性を尊びたり新しくあれと座を緊めて言ふ

〇  類型と平凡を難と断じては狭き道行けり孤影厳しく

〇  近代短歌といふそれだけで容れざりき強かりしなり自説曲げずに  


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