臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

結社誌「かりん」10月号より(馬場欄抜粋)

2016年11月25日 | 結社誌から
○ 目と鼻と口あたふれば棄てられてゐし木片もみほとけと化す (横浜)高尾文子

○ 十字架の木は何ならむ風説に花水木といふレバノン杉といふ

○ 悪夢のごとくスーパーマリオが似合ふ首相リオにあらはれわれは萎えたり (つくばみらい)米川千嘉子

○ 待ちかねし友のメールをあけたれば友は逝きぬとその子が書けり (東京)草田照子

○ しだれ桜がくらくかぶさる引き戸開け入ればすずし黒谷西翁院 (京都)中津昌子

○ 飛鳥なる誕生釈迦仏立像のふたつのちくびくすぐりたきを (東京)大井 学

○ 朝仕事にもいだ枝豆売り終えてあとは何もせぬ日と決める (新発田)島津エミ

○ ほのぼのと煙草くゆらす仕草など暮れゆく海に向かひて思ふ (草加)平林静代

 2014年10月25日死没の歌人・雨宮雅子(享年・85歳)に対する追悼歌と思われる。
 作中の「海」とは相模湾。
 雨宮雅子の歌集『昼顔の譜』に「北緯三五度東経二二九度相模湾沖きみが奥つ城」という、亡きご夫君・竹田善四郎氏を相模湾で海洋葬で弔ったと思われる一首が残されている。

○ 溺死者や胎児の屍流れ着く潮溜リもつマンションの脚 (東京)寺戸和子

○ 案内図天地まはしてわれも見る をみなの基点は常に自にある (東京)石井照子

 



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