臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

結社誌「かりん」11月号より(岩田欄より抜粋)

2016年12月15日 | 結社誌から
○ ケアセンターの老女おしやべり老女むつちやくちや・傍若無人・唯我独尊 (川崎)岩田正

 岩田先生のお気持ちの程は、かく申す私にも、よく解ります。
 なにしろ、件の「老女」たちの多くは、お金持ちのくせして暇を持て余しているのですから、「ケアセンター」での「おしゃべり」が、人生最後の唯一の楽しみなのですからね。
 しかも、その「おしゃべり」の内容ったら、孫自慢のご亭主自慢と相場が決まっていますからね!


○ 小さな墓地購ひたりし後子のあらぬ二人の時間深まるごとし (市川)日高堯子

 そういう事ってよくありますよ!
 私・鳥羽省三の場合は、男子二人の子持ちではありますが、「小さな墓地購ひたりし後」の「(夫婦)二人の時間」は、それ以前とは比較にならない程にも「深ま」りました。


○ 書き掛けの手紙が二通それぞれに微妙にちがふ余白が残る (千葉)川野里子

 「二通それぞれに微妙にちがふ余白が残る」とありますが、「それぞれの余白」には、どんな違いがあったのか、評者の私としては是が非でも知りたいものである。


○ 七月のレッドドラゴンかくまでも甘きものとは思ひもよらず (台湾)日置俊次

 本作の作者の日置俊次さんは、只今、台湾に滞在中である。
 彼は「七月のレッドドラゴン」を食して「かくまでも甘きものとは思ひもよらず」などと能天気な事を仰っているのであるが、私に言わせれば、彼が「かくまでも甘きものとは思ひもよらず」と言って食したものが「七月のレッドドラゴン」だから良かったものの、それがまかり間違って豊満を以て知られる台湾娘だったりしたら、一体全体、どうなったでありましょうか?


○ 強さとはすさまじさだとひまわりの畢り見上げてきみ通院す (横浜)池谷しげみ

 大地にでんと根を張って夏の日を浴びて咲き、秋ともなれば沢山の実をならせる「ひまわり」は、見る者に「すさまじさ」をかんじさせるほどにも強い植物である。
 その「ひまわりの畢り」を「見上げて」、作中の「きみ」なる存在は「通院す」るのでありましょうが、彼が通院しなければならないのは、既に末期状態に達している癌細胞の故でありましょうか?


○ 「人見絹枝以来」といふ声流れ来てモノクロ画面の太ももの見ゆ (沖縄)松村由利子

 「人見絹枝」選手が陸上競技の女子・800米で銀メダルを獲得したのは、1928年に行われたアムステルダムオリンピックに於いてであった。
 それから64年後の1992年に行われた、バロセロナオリンピックに於いて、有森裕子選手は女子マラソンで銀メダルを獲得して、「人見絹枝以来」の快事として騒がれた。
 従って、「『人見絹枝以来』といふ声流れ来てモノクロ画面の太ももの見ゆ」という、本作中の「太もも」の持ち主は、あの有森裕子選手でありましょう。  


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