メルセデスベンツ E250 Mercedes-Benz E250です。通称W212と呼ばれるモデルです。ビッグマイナーを終えた、最新型となります。2015年の秋には、次期型がデビューするようですから、恐らくこれが最終型になると思われます。完全に熟成されたモデルですので、完成度も高いはずです。今回も、V350(W639)の車検整備の際に、YANASEから代車として出されたものです。
マイナーチェンジ前のモデルとは、フロントグリルのデザインを一新し、完全に別物に生まれ変わっています。以前も同様にYANASEの代車でS212に乗る機会があったのですが、その際とは、乗り味も含めて完全に印象が変わっていました。
この車両には、レーダーセーフティーパッケージが装着されています。ディストロニックプラスという、前の車両と一定の車間距離をキープするオートクルーズや、レーンキープアシストと言って、レーンをはみ出しそうになると、ステアリングを自動で切って、白線の中を走ろうとする機能なんかが付いています。もう車が勝手に走ってくれる感じですね。運転者は、いざと言う時のために、軽くハンドルを握っていれば良いのです。前方の車両にぶつかりそうになると、緊急停止もしてくれます。ナイト2000もびっくりの、完全に近未来の車です。
↑ フロントマスクです。グリルに付けられたスリーポインテッドスターが、スポーティーで精悍な印象を与えます。クーペやオープンカーのような格好良さです。まぁ、個人的には、保守的なグリルからピョコンと突き出たオーナメントのスリーポインテッドスターも好きでしたけどね。運転の際には車幅感覚を掴む良い目印にもなりましたし。とは言え、やはり、グリルインされたエンブレムはすっきりして格好良いです。
↑ リアビューです。こちらの方もすっきりと洗練されたデザインに変更されました。写真では見えにくいのですが、エキゾースト系がメッキで縁どられて、ド派手になっています。かなりスポーティーになりました。
↑ やや後方からのサイドビューです。流れるようなデザインが格好良いですね。空力もいかにも良さそうな感じです。
↑ インパネの全景です。3本スポークのステアリングに3連メータという絵に描いたようなスポーティーな演出です。以前のモデルに比べると、煌びやかさも抑えられ、個人的には好印象です。もう少しウッドを使って落ち着いた雰囲気にして欲しいと思いますが、まぁ、それは完全に個人の好みですので。
運転感覚ですが、素直でオーソドックスな、いかにもメルセデスらしい味付けでした。マイナー前のモデルよりも、若干ガッシリした味付けにされているように感じました。まぁ、それでも、W210に乗っていた身からすると、まだまだ軽い感じですが。もう少しどっしりした味付けが好みです。
しかし、先述のディストロニックプラス等の安全装備で固められた安心感には、メルセデスの哲学を感じます。信用し過ぎて故障が怖い気もしますが、それでも、運転の疲労をかなり軽減してくれることは間違いないです。
大き目のステアリングも健在です。太さも絶妙で、本当に疲れにくいです。
↑ 運転席の様子です。座面も広く、しっかりとした椅子は、メルセデスの伝統ですね。マイナー前のS212に乗った時には、何となく椅子の完成度が落ちたように感じましたが、今回のW212では、完全に払拭されていました。本当に座り心地の良いシートです。やはりメルセデスはこうでないといけません。
慣れない人は、一瞬硬いなぁと思うかもしれませんが、この適度な硬さが運転中も体圧を適度に分散してくれて、特定の場所に負担が掛からないようにしてくれます。そして、膝まで伸びる座面が、お尻への負担を軽減します。腰から背中に関しても、適度なホールディング加減で、多少体が動かせるようになっていますので、運転中も自然な姿勢で、適度に体を動かすことも出来、疲労が溜まり難くなっています。
そして、適切なドライビングポジションを取れるよう、シートやステアリングの調整幅が大きめに取られています。このことで、どんな体格の人も、適切なドライビングポジションを取ることが出来るのです。自然で快適な姿勢で運転できることは、結果的に集中力を高め、安全性に繋がります。それもメルセデスの考える安全性の一部なのです。
この辺りは、日本車が遠く及ばないところです。フカフカのシートは、最初に座った時には快適に感じますが、体が沈み込んでしまい、微妙に動かすことが困難です。その為に、特定の場所に負担が掛かり易くなり、結果として疲労に繋がります。短距離の運転ならば日本車のようなフカフカなシートの方が良いかもしれませんが、1時間くらい運転するのであれば、ドイツ車の固めのシートは威力を発揮します。腰痛持ちの方は是非お試しすることをお勧めいたします。
↑ 後部座席の様子です。Eクラスらしく、広々とした快適な空間に仕上げられています。座面も大きく、背もたれの角度も絶妙です。後席に乗る人も十分に快適に移動できるように設計されています。
↑ 助手席側の後部座席です。
↑ 助手席のドアです。シートの調整スイッチは、メルセデスの伝統的なデザインを踏襲しています。W210も同じデザインでした。直感的に操作できるインターフェイスもメルセデスの特徴です。初めて乗り込んでもすぐに操作出るというのも安心に繋がります。
↑ トランクルームです。十分な広さです。これで不満な人は少ないでしょう。そういう人はそもそもセダンは選ばないと思いますし。スポーティーなデザインですが、しっかりと開口部が広く確保されています。荷物の搭載も容易になります。こうした点はさすがですね。究極の実用車です。
↑ 3連メータは視認性も良く、白基調のライティングも見やすくて、目に優しい印象です。オーソドックスで面白みは無いですが、裏を返せば安心だと言えるでしょう。奇をてらわず、常に王道を行くメルセデスらしいデザインです。
↑ コンソールは、若干スイッチ類が多く、雑多なイメージがあります。オレンジの光で優しく演出はしていますが、もう少し洗練されると良いなぁと思います。こうスイッチが多いと、昔のメルセデスのようなブラインド操作は難しいでしょうね。なんだかスイッチ類もチープな印象です。もう少しアナログな感じが欲しいですね。スイッチ類もしっかりした作りのものに変更して欲しいです。次期モデルでの改善を期待したいところですね。
↑ 時計はアナログになりました。これは好印象です。メーカー側も、コンソールのガチャガチャ感には問題意識があるのかもしれません。せめて時計はアナログにして、落ち着きを演出しようということでしょうかね。もうひと頑張りお願いしたいところです。
↑ コマンドシステムと呼ばれるスイッチです。ナビ画面で、各種設定等を簡単に行えるとの謳い文句ですが、正直慣れが必要ですね。少し使ってみましたが、慣れてしまえば、快適に操作できると思います。このシステムがあるなら、コンソールのスイッチ類は大分整理できるように思うのですが、今はまだ過渡期なのでしょうかね。今後に期待です。
↑ 運転席のドアのスイッチ類です。パワーウィンドウのスイッチもここに配置されるようになりました。以前は、ATのスフとレバー脇に整然と配置されていたのですが、こちらに配置されるようになって久しいですね。
まぁ、ほとんどのメーカーがドアに配置しているので、そういう意味では、どんな車から乗り換えても違和感は無いのでしょうが、個人的にはシフトレバー横が使い易かったです。今でもウィンドウを開けようとして、時々そこを探ってしまうことがあります。まぁ、慣れの問題なのでしょうが。
↑ メインパネルの全景です。ナビが上の方に配置され、視認性も良いですね。
総評です。やはり、最終型だけあって、かなり熟成された完成度の高いモデルに仕上げられています。乗り味も剛性感が増し、ディストロニックプラス等の安全装備も充実しました。実用車として求められることには可能な限り応じた感じですね。さすがはワールドスタンダードです。
最善か無かの時代に比べると、若干ヤワな印象は拭えませんが、その辺りの評価もかなり意識しているように感じます。新型SクラスのTVコマーシャルでは、Best or notingの文字が遠慮がちではありますが画面に映し出されていました。メーカーの意識に変化があったのでしょうか?それとも日本のディーラーの勝手な意向でしょうか?その辺りは分かりませんが、昔からのメルセデスオーナーとしては期待してしまいます。
不器用なくらい実直な実用車で良いんですよ、メルセデスは。そんなに万人受けする車に仕上げなくても、自動車を発明したメーカーという絶対的なブランド力と伝統に裏打ちされた物造りの哲学は、ちゃんと分かる人には分かると思います。
まぁ、それは置いといて、軽くインプレッションを書いておきましょう。先述の通り、非常に革新的な近未来の車という印象ですが、車自体の作りも手を抜いていません。一時期軽視していた、ガッシリとしたドイツ車らしい乗り味を取り戻した印象です。単純なセッティングの問題ではなく、根本的なボディー剛性やステアリングの精度から来るガッシリ感だろうと思わせるのが、さすがです。
特に印象的なのが、ディストロニックプラスの出来の良さです。ギクシャクした感じではなく、自然に運転をアシストしてくれる印象です。かなり練り込まれたシステムだと感じました。信用し過ぎて故障した際に大事故に繋がるのが怖いのですが、その辺りはどうなのでしょうか?まぁ、故障には警告がちゃんとされるとは思いますが、基本的には、運転する側が、あくまでもサポートシステムとして過信しないことが必要なんだろうと思います。
アクセルレスポンスですが、これは以前とあまり変わらず、S212と同様に、若干出足は遅いです。ターボだからどうしてもタイムラグがあるのだと思います。ある程度スピードが出てしまえば、十分な出力だと思うのですが、どうしても低排気量のエンジンで、過給機付きですから、出足だけは苦手のようです。まぁ、その分燃費は抜群で、カタログ値ではリッター15.5㎞も走るそうです。メルセデスは、カタログ値にほとんど偽りが無いので、恐らく13~15㎞くらい走ると思います。使用燃料がハイオクであることを考えても、十分な燃費だと思います。この経済性は凄いですね。
シートの座り心地も良くなっていましたし、非常に魅力的な車に仕上がっていると感じました。正直、かなり欲しいです、コレ。まだV350の買い替えには早いので、このモデルを買うことになる可能性は低いのですが、ちょっと考えさせられました。かなりの好印象です。