先週末、25~26日(土・日)は日本医科大学の講堂にいました。
日本医療マネジメント学会の「医療福祉連携講習会」の第4クールです。
学会認定の「医療福祉連携士」資格取得のために、全国から受講生が集まっています。
この第4クールは、社会福祉関連科目の講義です。
福祉出身の現場のソーシャルワーカーは、受講を免除されているはずなのですが、
実際には、看護や事務職に混じって、多くのMSWも自ら受講していました。
僕は、今回3科目、お話しさせてもらいました。
「精神保健福祉論」では、精神障害者処遇の歴史から精神保健福祉関連法制までを。
「福祉施設論」では、高齢者介護に止まらない、児童・障害・生保施設等の現状を。
「地域移行支援論」では、精神科長期在院患者の地域移行・地域定着支援の現在を。
ほとんどの受講生は、一般科の方が多く、精神科領域のことを知りません。
でも、皆さん、高齢者の居宅支援場面等で、精神障害者と呼ばれる方には出会っています。
昼休み後の講義でも、寝る人もなく、真剣な眼差しで僕の話しを聴いてくれていました。
今回の講習会を通じて、僕の中で、ハッキリしてきたことが、いくつかあります。
☆
1.
一般の医療機関に比べると、精神科領域は、やはり周回遅れのランナーであること。
今さらですけど、一般科の機能分化と再編統合は、すごい勢いで進んでいます。
エリア内医療機関の相互病床機能活用、病診連携、電子カルテ共有は、もはや当たり前。
診療報酬の誘導もあり、限られた医療資源の有効活用が、システムとして機能しています。
精神科だけが、良しくも悪しくも、古い枠組みの中にあることを、改めて実感しました。
2.
地域医療連携は、空文句でなく、徐々に血の通ったものに成長しているということ。
国の進める医療再編は、医療費抑制を前提とした経営効率優先の中におかれています。
ともすれば、診療報酬に依拠した病院側の都合での「連携」が語られてきたのは事実です。
でも、現場のスタッフは患者中心の医療連携を強く意識するようになってきています。
決して、たらい回しではない、QOL中心の在宅支援が目指されてきています。
3.
一方で、それでもなお、医療現場のスタッフは、医療中心の目線から脱していないこと。
在宅療養支援や訪問看護を通じて、随分、医療の視野は広がりつつあると思います。
患者や家族を、生活の主体として考え支援するという発想も共有されてきています。
でも、病院臨床の枠組みで発想しがちな、専門職ゆえの視野の狭さは、やはりあります。
精神科ほどではないにしても、病院と地域の間にあるバリアは、やはり高いようです。
4.
そんな中で、残念ながら、福祉領域の認知度は著しく低いということ。
受講生の多くが、多くの国民と同様に「福祉=介護」という認識しかありません。
それは、この資格化プロジェクトの委員たちも、学会総体のレベルでも同様です。
医療福祉連携士と言いながら、医療と介護の連携しか、視野に入っていないようです。
「福祉現場実習」の対象は、地域密着型居宅介護サービス現場に限定されましたし…(唖然)
5.
一般医療の世界も、医者中心では、もはや舞台が回らなくなってきているということ。
診療現場で、チームリーダーとしての医師の位置は、現在も法的には変わりません。
でも、今日の医療は、一医療機関の中だけでは完結していません。
機能分化と居宅支援が進む中で、医師のできることは、むしろ限られてきています。
地域資源を有効活用し、ケアコーディネートする司令塔は、医者にはできません。
6.
ソーシャルワーカーの立ち位置が、厳しく問われるようになってきていること。
福祉も、生活も、人権も、連携も、調整も、もはやSWの専売特許ではありません。
多くの病院で、医療福祉相談室は、地域連携室に包摂されつつあります。
看護等の他職種による領域侵犯と、被害的に捉えていては、未来はありません。
多職種・多機関との連携協働の核になれるのか、存在意義が問われてきています。
☆
医療福祉連携士は、あくまでも一学会の民間認定資格に過ぎません。
カリキュラムもプログラムも未成熟で、まだまだこれからという印象です。
でも、わが国の今後の医療のあり方を先取りしたものであることは、確かです。
第1期の受講生たちが、各地域や現場で、医療福祉連携のあり方を体現していくでしょう。
もし、この認定資格が今後急速に普及していくとすると、MSWとは何者でしょう?
今、現場のMSWは、職種のアイデンティティを問われてきていると言えます。
よろしければ、それぞれの立場から、現場のSWとしての率直な意見をお寄せ下さい。
プロジェクト委員会の唯一のSWとして、僕なりに現場の声は伝えていきたいと思います。
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