PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

精神保健医療福祉改革セミナーの開催

2010年07月09日 11時59分14秒 | イベント告知
かつて、精神保健医療福祉分野では「改革」というと、急進左翼的イメージがありました。
人権擁護や病棟の開放化など言えば、それだけで「改革派」や「人権派」と呼ばれたものです。
でも今や、任意入院や開放病棟、人権擁護や社会参加も、当たり前のことになりました。

かつて「改革」という過激なイメージの事柄も、時を経れば当たり前のことに変わります。
今でいう退院促進・地域移行支援も、2~30年前なら超過激な言辞と受け取られたでしょう。
PSWにとっては、早期に退院させて地域で支えていくことは、昔から当たり前のことでしたけど。

今でも古い病院経営者は、退院促進を「病院をつぶすつもりか?」と被害的に受け取るでしょうが。
日本精神科病院協会も、今や院長達の世代交代の中で、新しい時代の経営を模索しています。
世界に類を見ない多くの精神科病床をただ温存させ続けることに、もう未来がないことは、若い院長達もわかっています。

今、かつて改革派が掲げたスローガンとは全く別の、新しい「改革」の流れが生まれつつあります。
これまで精神科の外野の立場にあった、一般医療の立場からのものです。

昔々、日本医師会会長だった武見太郎さんは、精神病院をさして「牧畜業者だ」と評しました。
入れっぱなしで治療もなく、ベッドを埋めておけば経営は安泰という精神科を揶揄したものです。
一般科から見れば、あれは医療じゃない、収容所だというイメージはやはりあったと思います。

医療福祉連携士の資格化も出される中で、医療経営者団体の中でも精神科は浮いてきています。
精神科の中からではなく、精神科の外から「改革」が迫られるようになってきています。
医療制度改革が進む中で、精神医療だけが蚊帳の外という訳にはいかなくなってきています。

そんな視点での「改革」を進めていこうとするセミナーが、この夏、東京であります。
100名程度の小さなセミナーですが、ひとつの大きな起爆剤になるかも知れません。
厚生労働行政に対しても、今後の改革の方途を迫る動きのひとつになるでしょう。

一般医療では当たり前の「クリティカルパス」が、精神科に馴染むのか、議論はあるところです。
患者の個別性が無視されることになるという批判も、もちろんあるでしょう。
でも、ひとつの契機としては、検討する価値はある手法だと、僕は思っています。

武藤正樹さんと下村裕見子さんの仕掛けたこの取り組みは、どのような成果を生むでしょう?
精神医療の外からの「改革」の圧力は、どの程度に可能でしょうか?
武藤さんの主張する「バザーリア的改革」は、スローガンに止まることなく、どのように具体化できるのでしょうか?

いささかの危惧と戸惑いはありますが、おふたりの誘いに乗って参加してみようと思いました。
どのように精神科連携パスを「改革」の中心に据えようとしているのか、興味ありますし。プログラム最後の「特別発言」って誰なのか、未だに聞いてはいないのですが。
「PSWの役割と挑戦」という与えられたタイトルで、僕なりの想いは届けていきたいと思います。

僕の「改革」の基準は、それが本当に当事者(患者・家族)の利益になるかどうかだけです。
クリティカルパスを、それこそ当事者がどう思うか、どう評価するか、聞いてみたいですね。
今後の試金石ともなりますので、精神保健医療福祉関係者の多数の参加を期待したいです。

下記の「精神保健医療福祉改革セミナー」に、ぜひ、エントリーしてみて下さい。
この国の医療全体の外圧の中での、精神科医療の今後を一緒に考えてみて下さい。
専門職大学院の僕のゼミ員達も、こぞって参加します(させます?笑)。

ちなみに、画像は今年4月15日、赤坂の「燈火」というお店での「合コン」のあとの写真。
武藤正樹さんのブログによると、これが「新バザーリア党結党大会」だったとのこと。
知っている人が見れば、どんな面々での宴であったか、わかると思います(^_^)


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国際医療福祉大学 国際医療福祉総合研究所主催 総研フォーラム

「精神保健医療福祉改革セミナー〜精神科連携パスの展望〜」

国際医療福祉大学の付属研究所である国際医療福祉総合研究所では、その時々の医療トピックスを取り上げて皆様方と一緒に考える「総研フォーラム」を開催しています。
今回は、精神保健医療福祉改革の一環として、精神科領域における地域連携クリティカルパスを取り上げました。
1991年の約35万人弱あった精神科入院患者数は、近年わずかですが減少の兆しがみられます。
これは「入院医療中心から地域生活中心へ」という精神保健福祉施策の転換と様々な地域での先駆的な取り組みがあったからだと思われます。
脳卒中、がん、糖尿病、心筋梗塞の4疾病が医療計画にそって、医療連携が地域連携クリティカルパスツールを使い推進されてきたように、患者の視点にたった地域で継ぎ目のない質の高い医療の提供と療養生活を支援する体制を、精神疾患の分野でもすすめていきましょう。
精神救急体制の充実と統合失調症をはじめとする長期入院患者の退院支援促進、がん等に精神疾患が併存した患者への医療提供体制の在り方、医療に限らず福祉介護、就労などの課題を共有しながら、みなさまと精神科連携パスについて議論していきます。
多くの医療福祉分野の方々のご参加をお待ちしております。
国際医療福祉総合研究所長 武藤正樹

[日 時]2010年8月21日(土)13:30〜17:30
[場 所]国際医療福祉大学東京事務所「アミティ乃木坂」地下2Fホール
 〒107-0062 東京都港区青山1-24-1
 地下鉄千代田線乃木坂駅下車、3番出口すぐ

[内 容]
座長:武藤正樹(国際医療福祉総合研究所、所長)
   下村裕見子(東京女子医科大学病院地域連携室・クリニカルパス推進室)
13:00     開会 あいさつ
13:10-13:40 基調講演1:精神医療の機能分担と連携~精神科連携パスの展望~   
              伊藤弘人(国立精神・神経医療研究センター社会精神保健部長)
13:40-14:10 基調講演2:精神科病院における取り組み
              佐久間啓(あさかホスピタル、理事長)
14:10-14:30 行政トーク:精神保健行政の課題と展望
              福田祐典(厚生労働省社会援護局精神・障害保健課長)
14:30-15:10 事例報告1:総合病院精神科の実践と課題
   佐藤茂樹(成田赤十字病院精神神経科部長)
15:10-15:30 事例報告2:錦糸町モデル 
              窪田 彰(クボタクリニック、院長)
15:30-15:50 事例報告3:PSWの役割と挑戦
             古屋龍太(日本社会事業大学大学院、准教授) 
16:10-17:00 パネルディスカッション
17:00-17:10 指定発言  広田和子(精神医療ユーザー&サバイバー)
17:10-17:30 特別発言
17:30      閉会

[対 象]医療関係者、介護福祉職、調剤薬局、等   100名
[費 用]3,000円、当日お支払いください
[申込み]申込書にてFAXでお申し込みください。8月14日(土)必着
[問い合わせ]東京女子医科大学病院 地域連携室:下村(電話:03-5269-7160)
[詳細・参加申込書]
→ http://www.hci21.org/index.php?option=com_news&Itemid=58&mode=info&newsId=44