ポン助の迷走日記

30歳目前・無職から、まあ何とかなるでしょうという日々を綴ったブログ。実際、何とかなりかけている。

<簿記バカ一代 第二話 簿記って何だ?>

2004年12月30日 | 簿記バカ一代
<簿記バカ一代>
<第二話 簿記って何だ?>

バカ夫は今日から高校に通う。
母が買ってくれた980円の電卓を持って。

通学途中、バカ夫は近道である裏道に入った。
しばらく進むと、細い道の真ん中で
ガタイのいい男がこちらに背を向けて立っていた。

バカ夫は邪魔だと思ったのでその男を蹴り倒した。

「うおっ!」
「ぎゃあ!」

突然蹴られて倒れこんだ男の叫び声に加えて
もうひとつ甲高い叫び声が聞こえた。

メガネをかけたひ弱そうな高校生が
でかい男に潰されてのびていた。
どうやらカツアゲをされていたらしい。
2人ともバカ夫と同じ高校の制服を着ていた。

「何をさらすか、コラァ!」

でかい男がバカ夫に向かって叫んだ。
身長は2m、体重は100kgを下るまい。

「邪魔なんだよ」
「ああん?ずいぶんなめた口を聞く新入生じゃのう。
 ワシを簿記四天王の1人と知ってもそんな態度がとれるんかのう?」

バカ夫ははっとした。この男は「簿記」と言った。
四天王はどうでもいい。

「おい」
「どうじゃ、びびったか」
「簿記って何だ?」

時が止まった。
バカ夫はこの期に及んで、簿記が何か知らなかったのである。

「どうやらワシとタイマン張りたいらしいのう・・・・・・」

でかい男は馬鹿にされたと思ったようだ。
至極当然の反応である。

男は懐から四角いものを取り出した。
それは2つの巨大な電卓だった。

「ワシは簿記四天王の1人、『100キロ電卓の政』じゃ。
 この鉄製の電卓は1つ50キロ。
 これで貴様のドタマかち割ってやるけえのう・・・・・・」

「そんな事、聞いてんじゃねえ!
 簿記って何だ!教えろ!」

「とことん馬鹿にしくさりおって!
 ワシに勝ったら教えちゃるわ!!」

政は電卓で殴りかかってきた。
バカ夫は身をかがめて攻撃をかわした。
政の電卓は空を切り、近くにあった電柱にひびを入れた。

「よし、約束だぞ!」

バカ夫は高く飛び上がると、政の顔面に蹴りを放った。
政はそれに気付くと、とっさに電卓で受け止める。
ガァンという低い音が響き、液晶画面に「6」と表示された。
2人は間合いを取ってにらみ合う。

「なかなかいい蹴りを持っちょる。動きもいいのう」
「今ならやめてやってもいいんだぜ?」

政はにやりと笑うと、おもむろに電卓を投げつけてきた。
不意をつかれたバカ夫は体勢を崩した。

「もらったあああ!!」

政はその隙を逃さずバカ夫につかみかかり、
そのままバカ夫を組み伏せてしまった。

巨漢の政に上に乗られてしまってはなす術もない。
転がった電卓があざ笑うかのように
「2.44948974・・・・・・・」と表示している。

「ガハハハ、ざまあないのう。
 まあ、苦しまんように一発で決めちゃるわ」

政はもうひとつの電卓を振り上げた。

「お待ちなさい!」

鋭い声に政の動きが止まった。
バカ夫はその瞬間、政を跳ね飛ばし距離を取った。
政は舌打ちをして、声の主を睨んだ。

「ちぃ!よくも邪魔をしてくれたのう、3級の帝よ」
「新入生に対して大人気ないですよ、政。
 簿記四天王として、もう少し余裕を持ちなさい」

3級の帝と呼ばれた男は、長髪の金持ちそうな男だった。
どことなく気障ったらしい。

「命拾いしたのう、新入生。
 これに懲りてあんまりおいたをせん事だな」

政は電卓を拾い、学校へ向かおうとした。

「ああ、そうそう」

3級の帝が思い出したように政を呼び止めた。

「なんじゃい?」
「今度、『3級』の帝と言ったら殺しますよ」

3級の帝の目は本気だった。

「・・・・・・わ、悪かったのう、帝よ」
「わかればよいのです」

政はそそくさとその場を去っていった。

「大丈夫ですか、新入生君?」

3級の帝はバカ夫ににっこりと笑いかけた。


次々とバカ夫の前に現れる男達。
そして、謎のキーワード「簿記四天王」。

バカ夫を待ち受ける運命やいかに?

<次回予告>
政との死闘で母の電卓は無残にも壊れてしまった。
母の思いがこもった電卓にバカ夫が起こす奇跡とは?

ワルで有名なバカ夫は意外ともてる。
バカ夫に近づくヤンキー姉ちゃん、
場違いにも程があるお嬢様。

そして忘れ去られたかのようなメガネの男の正体は?

運命の糸は複雑に絡み合い宿命を紡ぎ出す。

次回、簿記バカ一代、第3話「赤薔薇、白薔薇、錬金術」

<つづく>