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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

大きな痛みの中で

2006-05-22 | テネシーワルツ ~江利チエミ物語~
 『テネシー・ワルツ~江利チエミ物語~』では、当時のきらびやかなステージと共に江利チエミさんの一人の女性としての足取りも描き出されます。結婚し、大スターでありながら愛する人の妻としての暮らしを大切にして生きる彼女に子どもが出来るのですが、妊娠中毒症のため中絶せざるをえなくなります。
 この作品や、ファンサイトを通じて知る、チエミさんの精一杯の人生に「あのとき、ああでなかったら」と思う瞬間があるとすれば、この一件だったような気がします。作品中にも母親代わりであった清川虹子さん(弓恵子さん)がそう語るくだりがあったと思います(記憶違いでしたらすみません)。
 個人的な事でステージ上の人を語るのはあまり好きではないのですが、わが子として生まれてくるはずの命が、努力の及ばないところで自分の手をすり抜ける、またその決断を自ら下す辛さは言葉には表しきれないものだったろうと思います。異父姉の裏切りや愛する夫との別れを経ても、ますます多くの人々に夢を描いて魅せたチエミさんの強靭さは、何よりも辛い想いをした心が稀有の才能と結びついて生んだものかもしれません。
 
 いま産婦人科を志望する医学生が少ない事がマスコミでよく取上げられていますが、ただ「勤務が時間的にハードだから」ということだけではなく、生か死か、という判断を下さなくてはならない現場に、年若いインターン生が精神的に参ってしまうのだそうです。
 昨年の『テネシー・ワルツ』では、青山さんがその判断を下し、告げる医師の役を演じておられました。優しい声質で、でも命を預かる者として決然としていなければならない、短いけれど、この物語の分岐点となるような大切なシーンでしたね。そのとき、「芸能界で生きていく」という形としても、精神的な意味でも、21世紀にも愛され語り継がれる歌手が、大きな痛みの中で生まれたような気がします。
 
 
 昨日、so-net時代からの閲覧数が90000pvを超えました。また、幾つかの登録制検索サイトなどにどなたか登録・推薦していただき、本当に有難うございます。この場を借りて心よりお礼申し上げます。青山航士さんという新しい時代にふさわしい表現者を皆さんに知ってもらいたい、という想いに共感していただいて、とても嬉しいです。これからもどうぞ宜しくお願いします。