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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

「時よとまれ、お前は美しい」・・・スローモーションなら尚更に

2006-03-23 | 表現者 青山航士
 3月16日付けの「フジTV『劇団演技者。』で特番!」へ、あゆあゆさんから青山さんが「決勝戦のシーン」でまるでスロー再生しているような動きをしていたというコメントを頂きました。DVDプレイヤーを買った日からスロー再生ばかりしている私には猫にマタタビな話題です。
 
 WBCでも大活躍だったイチロー選手、うろ覚えの話で申し訳ないのですが、スピードを出して通過する自動車のナンバーを読み、2桁ずつ足し算をするのを繰り返していた時期があるのだそうです。動体視力がいいからそんなことで遊べるのか、それともその繰り返しの末に動体視力が向上したのかはわかりません。ただ、この動体視力にはかなりの個人差があるそうです。
 瞬時にすりぬける車のナンバーを次々と読み取り脳で処理する、それが普通の動体視力では困難なように、ダンサーの一瞬の動きを、少なくとも私の眼は完全には捉えていないらしく、スロー再生するとそのダイナミックさ、繊細さにびっくりする事が多いのです。その美しさは決して写真では味わえない、時間の流れの中でしか捉えられないものですし、実際の時間の流れでは一瞬しか保つことの出来ないバランスの妙を堪能できたりもして、つい長々と見入ってしまうのです。

 それを舞台という実際の時間の中で見せる、そのアイディアは他でも見られるかもしれませんが、あゆあゆさんがスロー再生ではないかと眼を疑うような動き、それを可能にしているのはやはり青山さんの強靭な身体と「血」なのだと思います。
 西洋のダンサーが日本舞踊の何に眼を引かれるかというと、そのスローモーションのような、ゆっくりとした澱みのない動きだといいます。重心のすえ方、膝の使い方に大きな違いがあり、西洋的には最高の技術を持っている彼らであっても、あんなにゆっくりと腰をおとしたりあげたりしたら転んでしまう、というのです。
 青山さんも西洋の技術を身につけた方ですが、例えば「三忍者Ⅵ」後半、森川さんとのからみに入る青山さんの右側面からのショット、ものすごく腰を深く落としながら上体を激しく動かす部分があります。とても危ういバランスなのに、足がまるで床に吸い付くように安定していて、日本舞踊に通じる重心の低さ、膝の強さが見て取れます。西洋のダンサーにはない、青山さんのこの特徴は『森羅』を見たとき以来、ずっと注目してきたところなので、それがスロー再生ではなく『ビューティフルゲーム』舞台上で見られるのなら、とても嬉しいです。もう今日はオタクモード全開。
 青山航士が舞台上で、フットボールの激しい動きを、時間と身体を支配するようにスローで見せる、これはもうブロードウェイでもウェストエンドでも見られないユニークな「日本版」になるに違いありません。いい春になりそうです。