『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

着物

2021-01-31 16:51:40 | 着物
洋服であれば、5分あれば身支度できるし、冬は特に、もう部屋着の上からコートを羽織ってしまえば、大丈夫なこともあるので、手間いらずです。

着物は自己流でサクサクと着るけれど、それでも事前の準備が色々あって、最低でも30分、失敗した時のやり直しにも備えて1時間は身支度の時間を組みます。

今回、直前までどうしようかなあ・・ととても悩んだ。

だって、洋服であれば、その分、ピピと遊べる時間が増えるから。

一昨年は、フルートを吹きたくて、着物を着なくなっていたのですが、今は猫・・・

でも、やはり、せっかくの「音楽家講座」なので、ヨイショっと重い腰(ああ、本当に重くなってる・・)を上げ支度をしました。

淡いグレー地の梅柄の小紋は、気負い過ぎず、でも華やかな着物で重宝していて、いつもお正月の集まりに着ることが多かったものです。

これも母のものなので、もう50年以上経っているのにとても状態が良い。



ものによっては、裏地が酷いことになってしまって、使えないものもあるのに、これは、とても奇麗。何が違うのかな??と思う程です。

帯は自分でエイッと20年程前に購入した川島の吉野間道。


小紋をググっと格上げしてくれる優れものですし、何より締めやすい。

葉裏色の帯揚げも最初に自分で買ったものですが、好きな色と質感なので、ついついこればかり使ってしまいます。

帯締めは同じ色見のものと迷ったのですが、明るいクリーム色に。



いざ着てしまえば、やはり気分も華やぎ、気持ちもシャンとする。
着物は暖かく、底冷えのする日本の冬には最適。

家を出たらすぐに、通りがかりの見知らぬ初老の男性が帽子をとってにっこりと挨拶してくださいました。こんなことも、洋服ではあり得ない。

いつもはリビングに居る夫が2階でピピと遊んでいたので、部屋の前で写してもらいました。



・・・

大学時代の恩師、青木明先生のコンサートもこのいで立ちでうかがうつもりだったのですが、先生から「・・中止になっちゃったんだよ・・」とがっかりされたご様子のお電話が。

私も、しょんぼりしてしまいましたが、この状況下では致し方ありません。
でも、いつか必ず「水月・浮雲」を演奏してくださる、との嬉しいお約束を。

その折には、この小紋でうかがいたいと思います。


第102回 音楽家講座~甲野善紀先生を迎えて~ in鶴見 1月29日(金)

2021-01-30 00:09:45 | 音楽家講座・甲野善紀先生を迎えて
緊急事態宣言を受けての時間短縮の開催。

やはり、短い!とは思いましたが、その分、より煮詰まった凝縮された時間となりました。

「浮きをかける」

に関しての甲野先生の新たな展開には、もう何が何やら、です。

出会った頃、2003年から「浮き」に関しては仰っていて、「仕事は宙でする」はとても印象に残っています。

「楽器演奏にしても、他のことにしても、みなそこに集中して行っているつもりでも、実は身体が一番集中して行っていることは立つということ」

など、含蓄のある言葉が続きます。

上腕骨を後ろに引かれるようにし、肩甲骨が寄った時に肘を落とす、という説明。

これらの大きな変化はこの20日くらいから始まったとのこと。

立っているところを後ろから押されると、バランスを崩してよろめいて着地するのが普通ですが、この状態で立つと、ピョン、と楽しそうに、飛ぶ。

後ろから見ていると、そのままの形状を保ったまま飛んでいるようにも見えました。

不思議な世界・・

「ね、こちらだと、楽しそうでしょう?」

「はい」、と背中を押したOさん。

普通の状態では、もちろん「楽しくない」。

肥田春充のことにも触れ、丹田の話も。

丹田に関してはよく様々なシーンで「丹田が大事」とか「丹田に力を込めて」ということが言われているけれど、そういうなんとなくわかったつもり的なイメージの話ではなく、より具体的な話。

さりとて、それが誰にでもできるようなことかといえば、もちろんそうではないのだけれど。

丹田に関して、先生がここまで詳しく語ったのは、この講座が始まって以来、初めてではないかと思いますが、それだけ、その世界に近付かれたということなのでしょう。

ますます先が楽しみです。

さらには腸の話。

内臓、特に腸に関しては前回の講座でも話されていたのですが、それがより具体的なものに。

腰を落としても筋肉がつかないのが、身体の上手い使い方であって、筋トレなどで、筋肉を付けることに関しては疑問を呈しておいででした。

換気休息を経て、後半は個別指導。

初参加のピアニストには指紐。

あまりの変化の大きさにびっくり。
講座開始以来ではないか?と思えるほどで、音の粒立ちやきらめきが増しました。

津軽三味線の御二人は、男性は鎖紐による四方襷、女性は指紐で。

どちらも、最初のピアノの方と同様、目を見張る変化。

それにしても、津軽三味線の持つ力というのは、何かしら別格なものがあるなあ、と改めて感じ入りました。

特に、紐装着後の演奏では、会場の音楽ホールが隅々まで共振して、喜んでいるように聞こえました。

甲野先生も後で私に、「いやあ、身体が動き出そうとするのを堪えるのが大変でしたよ。」と仰るので、

「先生、堪えないで、舞ってしまってください。次回は是非!」

津軽三味線と先生の舞の共演、ぜひ観て見たいものです。

さらにピアニストには紐以外でも、ということで、小刀による祓い。

これでも変化しましたが、驚いたのは次。

先生の最新の気付きの上腕骨、肩甲骨の操作によって、びっくりするくらいの変化。

全ての音がキラキラと光っているみたいな素敵なラヴェルに。

先生の様にすぐにできる訳ではないにしても、これはまた新たな世界の扉となることは確か。

明日、色々と試してみようと、今からワクワクです。

能管の方には、やはり四方襷で。これも、より深いところからの響きに。

ペットロスが辛い、というお悩みには「般若心経」を。

「般若心経」には力があるそうなので、それを読めるようにするなり、写経するなりすると良い、ということでした。

毎日ピピに「長生きしてね」と言っているけれど、いつか、その悲しい日はやってくる。
よいことをうかがいました。
そういえば、末期がんで自宅療養していた母は、痛みの少ない日には、ずっとベッドの中で、般若心経を写経していたことを思い出しました。

ペットに限らず、いつか必ず愛する家族、友人知人との別れの日は来る。いつもはあまり考えないことですが、コロナ禍の現在、こうしたことは常に念頭に浮かぶようになってしまいました。


終了後、控室で、

「今までも、ビフォーアフターの変化は大きかったですが、今回は、過去最高にみなさま、大きく変化されましたね。現在のひっ迫した状況のせいなのでしょうか・・?」

と申し上げたら、

「いや、私が変わったからですよ。」

とすかさず先生。

・・・失礼しました・・

でも、やはり、受講された方の受信状態も、ぐんと精度があがっているようにも思えます。


次回は2月26日(金)、同会場です。
時刻については、従来通りか、今回の様に短縮か、はたまた中止となるか・・
とにかく先の読めない状況ではありますが、要請がでない限りは開催予定でおります。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

写真はピアニストの指紐


津軽三味線奏者の指紐


そして・・・

最後に、お願いして、控室にて今回の新たな気付きによる先生の御背中、撮らせていただきました。

・・肩甲骨が・・!!?


帰り道、荷物を担ぎながら、

「困ったのは、何度も、荷物がずり落ちるようになってしまったことなんですよ。」

元々、なで肩の先生。
今回の進展で、さらに、肩が落ちてきたのだそうです。

そういえば佇まいも、なんだか変化されたような・・


本日の音楽家講座・鶴見 1月29日(金)

2021-01-29 11:26:38 | 音楽家講座・甲野善紀先生を迎えて
本日の『音楽家講座~甲野善紀先生を迎えて~』のタイムテーブルです。
今回入口付近の受付テーブルは設置しませんので、18時より直接ホール内にお入りください。
参加費3000円は私が客席を周り徴収しますので、なるべくお釣りのないようご用意い下さい。
 
18:00~18:15ホール内にて参加費徴収(15分)
18:15~18:55 先生のお話、技の紹介(40分)
18:55~19:05 換気休息、参加費徴収(10分)
19:05~19:45 個別指導(40分)
 
個別指導は、今回は時間がないので、事前にお申し込みいただいた方のみとなります。講座は事前申し込みがなくても、当日参加可能ですので、ご縁のある方は、どうぞお気軽にお越しください。
 
また講座終了後は、会場スタッフの皆様の消毒作業などもありますので、
すみやかに会場からの御退出をお願いいたします。
 
色々とご不便をおかけすることとなり申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
 
また講座当日午後4時以降からは家を出るため、メールの返信等の対応ができませんが、どうぞ御容赦ください。         白川真理
 
 

食パン?

2021-01-28 17:40:12 | ピピ
「ピピがお母さんの部屋でこんなことになってたよ。」

と息子がリビングにやってきました。

そこには、籠にぴったりとおさまったピピ。

この籠は普段はファイテンのヘッドマッサージ器を入れてベッド横に置いてあるのですが、そのマッサージ器は息子も気に入って使う様になっていたので、息子の部屋に。

空っぽになった籠の中に、いつの間にかピピが入り込んでいたという訳でした。

猫は本当に、箱や籠が大好きです。

それにしても、この形状の籠にピピが収まった姿は、なんだか、美味しそう。

何かに似ている。

「・・・食パン・・・?」

ちょっと焦げすぎではありますが、美味しそうです。

「只今、焼き立て、出来ましたよ~」という感じ。

それにしても、これまたジャストサイズ。
やや窮屈そうではありますが。







コンサート

2021-01-26 01:12:21 | 音楽・フルート
コロナ禍となって早一年。

自粛期間などはあったものの、幸いなことに、音楽教室での感染はなかった。

これは一重に、お店のスタッフの皆様が最新の注意を払って対応策を講じてくださっているからだと思う。

さらに感染者数、そして変異したウイルスが増えている昨今、安心はできないものの、さらに注意して、リアルレッスンが続けられるように、こちらも配慮していきたいです。

また、かつてはその殆どが中止となってしまったコンサートも、再開の兆しが。

とはいえ、こちらも、新たな感染拡大を受けて、合唱などは、さらに中止となってしまっているものもある。

でも、フルート、それも少人数のものは、今回は中止となることもなく予定されていた殆どのものが開催予定だ。

主要オーケストラなどもそれは同様で。

やはり、この一年感染対策を徹底してきて、ある程度コントロールをしつつ、開催する、という方向が定着してきたのではないか、と思う。

とはいえ、客席はまばらな様子で、寂しい限りではあるけれど。

それでも、全てが禁止されてしまったドイツに比べれば、まだ、今のところではあるけれど、日本には「日常」がある。

私自身は、まだ自主企画のコンサートを開催することに逡巡がある。

というのも、「コロナ」をいつも感じながらの本番、というのが自分で想像つかないから。

実際ステージに上がってしまえば音楽に集中して演奏できるのかもしれない。

でも、まばらな客席、マスク姿の聴衆、奏者同士のディスタンス、換気休息、などなど、コロナを思い出さずにその場で過すことは難しい。

昨年自粛期間開けの音楽家講座が始まる前に甲野先生にフルートを聴いていただいた。

曲はシリンクスだったか。

私としては、自粛期間中に変化、進化したあれやこれやの成果披露というつもりもあったのだけれど、先生は

「・・ああ、相当怖がってますねえ・・」

と想定外の感想。

その演奏の中に、今よりも得体が知れず、よくわかっていなかった新型コロナへの恐怖がありありと刻まれていたようなのでした。

「?え??」

「・・まあ、そうした心の内が伝わる演奏が出来るようになってきたということでもありますが・・」

と続いたけれど、シランクス吹いて「コロナ怖い」が伝わってしまったのではしょうがないな、と思ったのでした。

その後、講座の中ではオーストリア大使館で友人の受賞記念のパーティーで演奏するはずだった、フレーダーマウスのアデーレのアリアを吹いたけれど、多分、あのコーミッシュなアリアも「コロナ怖い」と甲野先生には聴こえていたのではないかなあ、と思う。
自分の中でもかなり無理があったのは否めない。

で、正直、今もコロナはとても怖い。

誰かに感染させてしまうこと、自分や家族が感染してしまうこと・・

やはり、よくわかっていないということに変わりはないし、誰がいつどこで罹患してもおかしくない程の状況下。


・・・・・・

そんな中、2つのフルートコンサートのご案内をいただいた。

今の状況を認識しつつも、その中で演奏をしていく矜持を持つことに、自分がまだ出来ないだけに憧れと尊敬の念を抱きます。

一つは太田嘉子さんの5年ぶりのリサイタル。3月16日(火)銀座・王子ホール。
本当は昨年開催するはずだったものが延期となり、ようやく今回開催の運びに。

もちろん、すぐに伺う旨の返信を。
この結論に至るまで、どれほどの心労、逡巡を重ねたかは、舞台に立つ人間であれば、誰もが感じられると思う。

「延期した分、作品に向き合う時間が多くできました。」
という前向きなメッセージに、こちらも元気になりました。



そしてもう一つはお電話でのお知らせ。

「あ、あのね、一応連絡しとこうと思ってさ」

といつもの気さくな調子で、大学時代の恩師・青木明先生。

「僕がずっとやっている小さいコンサートなんだけど、今度は164回目でさ。コロナのせいで、ここんとこずっとできなかったけど、もうやることにした。いつもやってる9人のアンサンブルは小さい会場なのでやめて、かわりに送ってもらったあなたの作品を吹かせてもらうことにしたよ!」

きゃ~~!?

生徒さんが吹いてくださったのをこのあいだレッスンで初めて聞いて感動していたのですが、自分以外の方の演奏による自分の作品が聴ける歓び、というのは格別でした。

それが、恩師の演奏で聴けるとは??

こんな幸せなことはありません。

もちろん、うかがうお約束をしました。


・・・・・・・・


高松の受験校で、勉強についていけず、恰好つけられそうな音大受験を急遽決め、高校2年で、初めて習ったフルート。

それまではブラバンで自己流で吹いていただけでした。

高校3年からは、月に一度、東京の青木先生の御宅にレッスンにうかがうように。

「まあ、一浪は覚悟しなさい。武蔵野音大は難しいよ。他のところも油断大敵だよ。」

まだ瀬戸大橋はない昔。

連絡船に乗り、在来線を乗り継いで新幹線で東京に。

元々、母は東京出身で、叔母の家が洗足にあり、そこでお世話になっていました。

・・で、そこには一歳年上の従姉もいて、レッスンの後は成城学園に通う彼女といつも遊ぶのが楽しみでした。

原宿のキディランド、アンとアンディーのお店(ランチボックスを買った!)、そして成城学園前の喫茶店で、当時はやり始めたコーヒーゼリーを初めて食べた時の感激は今もありありと浮かぶ。
確か「ハニーコーヒー」という名前だったと思う。

ま、ともあれ、何しに行っていたんだ?という感じで。

小澤征爾指揮の新日フィルのリハーサルも成城学園在住の方、学園関係者には無料開放されていて、それを聴きにいったことも。

レッスンよりも、「月に一度、東京で従姉と遊ぶ」というのがメインの受験生活でした。

今は知らないけれど、私立音大の学科は当時は中学生レベルで充分対応できるくらいではないかと思う。

なので、なんというか、本当にフルートさえ吹いていればよかったという夢の様な日々だった。高3なのに。

とはいえフルートも、当時はそれほど好きという訳でもなく、今よりも何も知らず、ただただ受験曲と足りない基礎練習の突貫工事。

こんな不真面目な子供に声を荒げることもなく、よくご指導いただけたと思います。

それでもタファネル・ゴーベールの日課練習の4番がちゃんと吹けなかったときは、さすがにあきれられ、

「はいはい。じゃあ、出来るようになるまで、この部屋から出てきちゃだめだからね。」

と別室に通された・・

武蔵野音大も、他の音大も現役合格できたのは、青木先生のお陰である。

その後、先輩後輩の青木門下生に、別室に閉じ込められたことはなかったか?と話を聞いたけれど、誰もそんなことはなく、どうも私が唯一の閉じ込められた生徒・・って自慢してどうする・・

その後私は播博先生の紹介でドイツに行き、植村泰一先生のロットと出会い、甲野先生と出会い古武術奏法という異端?に足を踏み入れ、と勝手し放題なのを、いつも笑顔で見守ってくださった。

そんな、ある意味、青木門下の外れ者の曲を吹いてくださる、というのだ。

ギターは後輩の鈴木大介。

バークレー音大でジャズフルートに磨きをかけ、さらにギターの腕も半端ないらしい。

恩師と後輩による自作品の演奏が聴ける日が来るなんて・・

daisukeが最初はギタリストとして登壇し青木先生と「水月・浮雲」を演奏し、その後フルートに持ち替えて、というのも面白そうです。

こちらは、2月19日(金)18時開演・新宿ドルチェ楽器・アーティストサロンです。


嘉子さんのリサイタルも、青木先生のコンサートも、華やかな春の着物と帯で伺おうと思います。



・・・・
嬉しいお知らせが続いたのと、今日はお天気も良かったのとで、生徒さんが帰った後、久々にシューベルトの楽譜を手に取りました。

最後の歌詞を思い出したので。

昔も吹いたけれど、ここまで共感できたのは、この状況下からこそだろう。
今の気持ちに一番しっくりとする曲。

中身はとても暗くてヘビーな「しぼめる花変奏曲」。
失恋した若者は川に身を投げて自死してしまうのだから。

でも、このミュラーの詞の最後には「希望」がある。

10年前のリサイタルで吹きましたが、今から思えば酷いものだっだ。
技も中身も。

いつか、8回目となるリサイタルを開催することが出来たら、この曲をやりたいなと思います。

フリッツ・ヴンダリッヒのCDを久しぶりにかけました。


Dann, Blümlein alle,Heraus, heraus!
Der Mai ist kommen,Der Winter ist aus.

そうしたら、花たち、みんな出ておいで!
五月が来て、冬は去ったのだ。