『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

打ち合わせ 旧東京音楽学校奏楽堂

2024-08-30 23:18:43 | 音楽・フルート
水曜日は東京でレッスンの日ですが、その前に上野の旧東京音楽学校奏楽堂へ12月28日のコンサートの打ち合わせに行きました。

この日は幸いお天気で、暑さは残ってはいるものの、吹いて来る風はもう秋の気配。

台風の影響も少ない、ラッキーな一日でした。

曲目と所要時間などを記入した紙とチラシをお渡しし、後は、所定の決められた事項を読み合わせて、確認。

「ラメなどのついた衣装や化粧は禁止です。」と担当者。

ここで、「あ、そういうのは着ないので大丈夫です。でも実は・・」と切り出す。

毎回、初めての会場ではドキドキしつつ必ずやらなくてはならない交渉です。

「あの、実は、これを履いて演奏しているのですが、大丈夫でしょうか?」

と実物を差し出す。

「え?これでですか?いやあ、初めて見ました・・」としばし絶句されたのはとても親切に対応してくださっていた初老のスタッフの方。

「すみません。お客様にはロングドレスなので、見えませんし、裏にゴムも張ってあるので、ヘタなハイヒールよりもよほど、床には優しいです。王子ホールでも許可していただきました。」

「ちょっとお待ちくださいね。」と片方の下駄を持って奥に引っ込まれ、何やら上司と話している模様。

ドキドキしつつ待っていたら、

「重要文化財なので、床を傷めるようなものは禁止ですが、そうでなければ、何を履いても大丈夫です!」

との回答に安堵。

「それにしても、そんなに音が違うものなのですか?」と興味津々で聞かれ

「ええ、まあ。私にとっては、もう雲泥の差と言っても良いですね。」

その後、控室、用具置き場、アナウンスとベルの場所、照明の場所など案内していただき、最後にホールの舞台に。

使用状況などによっては不可能な日もあるけれど、今日は大丈夫です、ということで、まあ事前にそういう日をうかがってから選んだのだけれど、10分だけ音出しが可能ということで吹かせていただきました。

100年前の木がそのまま使われていて、多くの日本の音楽界の先達が踏んだ舞台は思っていたよりも広く最初は少し怖気づきましたが、一音目を吹いた時から、この会場が、ようこそ、と迎えてくれたような気がしました。

響かなくて、手ごわいよ、と何人もの信頼する耳を持つ、調律師の方、録音技師の方、そしてフルート仲間からも聞いていたけれど、残響ももちろん王子ホールという訳にはいかずとも、むしろ程よく、ちゃんと素顔が見えるといった音色と響き。

もちろん、お客様が入ると、またより響かなくなる可能性はあるけれど、150歳のロットとの相性はとても良い、と感じました。

担当の方も、ずっと聴いてくださっていて、ちょっと驚かれたように

「よく響いていますよ。一番後ろでもよく聞こえます。」とのこと。

\(^o^)/

更には吹きながら下駄で歩きまわって、響く場所を探してりもしていたのだけれど、

「本当に足音が全くしませんね!?」とこれまた驚かれたご様子。

「ま、技ですね。」と小さく呟きながら頷く。

 \(^o^)/  \(^o^)/


昔の建物なので、使い勝手も決して良いとは言えず、注意事項も多い。

でも今回のステマネはフルート仲間のI君で、何度かここでも演奏しているし、裏方も経験済みなので、一安心。

レッスンまでに小一時間ほどあったので、文化会館にあるオープンエアのカフェ響きに入ってソフトクリームを食べ、先ほど頂いた注意事項等の書類を再度読みながらゆっくり過ごしました。

エアコンがなくても、日陰であれば涼しい風が吹いて、とても気持ちの良い時間を過ごすことが出来ました。

夏休みの最後ということで、家族連れや、外国の方々も沢山で賑わっていました。









(告知・12月28日のコンサート)








ヘン顔

2024-08-26 20:52:57 | ピピ
息子がピピの写真を送ってきました。

ヘソ天で猫じゃらしで遊んでいる時の様子です。
牙が見えて、前脚は小さく畳んでいるのも可愛い。

普段はとってもシュっとしたイケメン猫なのに、ちょっとヘン顔に・・・

・・・マヌル猫っぽいかも・・・







イケメン顔の写真も・・・



 




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(12/28  コンサート告知)







(告知)川崎優フルート作品の調べ 12月28日(土)13:30開演 旧東京音楽学校奏楽堂

2024-08-21 23:11:02 | 音楽・フルート
去年の秋に企画し、じっくりと準備を進めてきたコンサートです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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川崎優フルート作品の調べ

12月28日(土)13:30開演(13:00開場)
旧東京音楽学校奏楽堂(重要文化財)
東京都台東区上野公園8-43
全席自由 4000円   未就学児不可

フルート:白川真理   ピアノ:砂原 悟


《プログラム》

1. 通りゃんせ (『フルートで奏でるわらべうた』より)1975年        
2.ずいずいずっころばし (『フルートで奏でるわらべうた』より)1975年       
3.うた      UTA-Vocalize Japanesque 1985年
4.うさぎ うさぎ (『フルートで奏でるわらべうた』より)1975年                         
5.忘れな草 Forget me not 2003年                                            
6.ゆうやけ (『フルートで奏でるわらべうた』より) 1975年                               
7.君を慕いて Love you Dearly  2006年                                 
8.かり (『フルートで奏でるわらべうた』より) 1975年                                        
9.夢想 Reverie 2004年   
                                       
・・・・・・・・・休憩・・・・・・・・・・

10.フルートの為の二章  Fl.Solo 1973年
    アンダンティーノ  Andantino /  レント Lento                          
11.祈りの曲 第4「祈り」 la preghiera   Fl. Solo   2005年    
12.ほたるこい (『フルートで奏でるわらべうた』より  1975年                                 
13.かごめ かごめ (『フルートで奏でるわらべうた』より)1975年                           
14.3つの抒情的小品  1995年                                       
    ララバイ Lullaby / アリア Aria / セレナーデ Serenade


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(告知・ご挨拶)

川崎優先生(1924-2018)の作品のみのプログラムを上野の旧東京音楽学校奏楽堂で演奏いたします。

コロナ禍は落ち着いたとはいえ、より混迷を極めている世界情勢と多発する自然災害。このような中で改めて音楽をやっていく意味を考え続けた数年間でした。

広島の爆心地から1.5キロの地点で被爆したにも関わらず、奇跡的に一命を取り留められた川崎先生の作品は、そのどれもが鎮魂と平和への願いに溢れています。

川崎作品は、この混迷の時代に最も必要な音楽の一つではないかと、今回のプログラムを編みました。

先生により新たな魅力と命が吹き込まれた『フルートで奏でるわらべうた』からは懐かしい様々なわらべうたを、そして歌心溢れるオリジナル作品の数々を、交互に配しました。

川崎先生とのご縁は今から約40年前、「茅笛の会ヨーロッパ演奏旅行」に参加させていただいた時から始まりました。

その後「アンサンブル・ムジカ・フィオーレ」、初めてのCD「SERENADE~flow~」のプロデュース、委嘱作品「夢想」、専門誌「ザ・フルート」(アルソ出版社)での連載(「古武術に学ぶフルート」)のご提案紹介と、大変お世話になりました。

また2000年から20年間、毎月レッスンに通わせていただいた恩師・植村泰一先生(1934-2022)は川崎先生の一番弟子であり多くの川崎先生の作品をレッスンしていただきました。

昨年、前期高齢者となり改めて第二の人生を考えた時、武術研究者・甲野善紀先生の
「今在る自分をどう直視できるか」という教えが頭をよぎりました。
第二のフルート人生は、川崎先生と植村先生への追悼と感謝を込めた、このコンサートでスタートしたいと思います。

ピアノは植村先生からの信頼も厚かった名手・砂原悟氏です。
会場となる旧東京音楽学校奏楽堂(重要文化財)は、日本で最初に出来た伝統と趣のある音楽ホールで、若き日の川崎先生も立たれたであろう舞台です。
チラシの背景は今年の瀬戸内海の初日の出で、母校・香川県立高松高等学校の後輩・太田秀幸氏によるものです。
レイアウトはフルーティスト・中田裕文氏によるものです。
川崎先生のお写真は2004年に委嘱作品に添えて贈ってくださったもので、ご遺族の承諾を得て掲載させていただきました。

師走の慌ただしい時期での開催となりますが、お聴きいただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
               2024年  夏     白川真理

お問い合わせ・お申し込み karadatoongaku@gmail.com








寄稿 『風の先、風の跡』Vol308  夜間飛行

2024-08-19 22:46:41 | 音楽家講座・甲野善紀先生を迎えて
本日、出版社・夜間飛行より甲野善紀先生のメールマガジン『風の先、風の跡』Vol308が発売されました。

この7月2日にあった口腔内の変化とそれに伴う気付きを先生からの依頼で寄稿させていただきました。

フルート演奏でのビフォーアフターを聴く前から、ご報告した時点で、大変驚いてくださり、音楽家講座開始前に演奏を聴いて、急遽、講座でも発表することを提案してくださり、以下の登壇となりました。

「今回、白川さんに大きな気付きがあったので、これは紹介した方が良いと思いました。メールをいただいてすぐに、白川さんとご縁が出来て以来、一番の気付きだと感じました。カイロプラクティックの創始者であるD.D.パーマーの子息であるB.J.パーマーは、『頸椎の1番と2番さえ整えれば、後は身体全体が自然に整う』と言っていたようですが、それとも関連していると思いました。」とご紹介をいただき登壇。

フルートのみならず、歌、ピアノ、全ての楽器演奏にも大きな効果と変化のある方法ですし、甲野先生がおっしゃったように、実際、心身のコンディションもとてもよくなりました。

ねじれや力みが中々とれなかった生徒さんが、これで瞬時に激変したのも驚きでした。
大前提条件として肩を落としておく、力まない、というのはありますが、上手くいけば、誰にでもすぐに手に入れられる健康法になるのではないか?と思います。

ここに至った経緯、日頃考えていることなど、根本的なところからわかっていただきたいと書いていたら13225文字にもなってしまいましたが、それをそのまま全文掲載してくださり感謝しております。

2004年に発刊された新潮社の『身体から革命を起こす』(甲野善紀・田中聡 共著)
で取り上げてくださってから20年経って、と時間はかかりましたが、本当に革命としか言いようのない大きな変化と進展が起きたことに感無量です。

こうした出会い、廻り合わせに改めて感謝し、より謙虚に更に歩んでいきたいと思いを新たにしております。

ご購読いただけると嬉しいです。

https://yakan-hiko.com/kono.html

https://yakan-hiko.com/BN13844


タイムマシン?イタコ?

2024-08-18 23:18:36 | 音楽・フルート
都内某所にて、素晴らしい体験をしてまいりました。

それは蓄音機のロールスロイス、とも称されることのある約100年前の名器・クレデンザで聞くSP鑑賞会。

そもそも蓄音機が電気でなくねじを巻いたバネ仕掛けで動くということも初めて知ったくらいですし、実際に音を聴いたのも初めて。

最初のサムクックによるサマータイムがかかった途端、会場の空気の粒子が細かく振動して皮膚から身体深部に伝わってきて、驚きました。

とても気持ちよく、目の前に、サムクックが立って気持ちよさそうに揺れながら歌っている様子が見えるような気がしました。

再生音を聴いてここまで感動したのは生まれて初めてです。

SP盤というのは、いわば、その音楽が録音された時の時空をそのまま版画のように転写する装置、との説明にも深く納得。

クローバーズのブルーベルベットは本当にベルベットの肌触りの歌声でとろけてしまいそう。なによりサックスが本来の原始の木管楽器の響きを奏でている。
これもまた、目の前に演奏者がいる。

SP盤はシェラックに木炭など混ぜて作るいわば天然素材。
最初は素晴らしい歌い手がいるのを記録するのに使っていたけれど、それが時代が進むに連れてプラスチックなども混ぜて、耐久性は悪くなったけれど、廉価で大量に販売されるようになり、産業になった。
記録から産業に・・

弦楽器のニスもそうだが、私のビンテージフルート、ルイ・ロットのタンポもシュラックを使って貼り付けられている。カイガラムシ、ありがとう。

針によって溝を削られながら、つまり身を削られながら音を出してくれている訳で、ながら聴きなどとてもできない。

ものにもよるけれど、100回再生するくらいで、もうだめになってしまうものだそう。

その後は日本のものもということで会津サンバ、アイレ可愛や(笠木静子)、ゴンドラの歌(松井須磨子)などが続き、サマータイム(ジェイミーズ)。

音量は太い針だと大きく、細い針だと小さくなり、盤によってあれこれと替えていた。

講談やエンタツアチャコの漫才という珍しいものもあったが、圧巻だったのが北原白秋自身による和歌の朗読。

第一声を聴いた瞬間に涙が溢れてきた。

この経験をしたのは、師・植村泰一先生のコンサートの折以来だ。
もう10年以上前だったか・・・
チューニングのラの音一音で滂沱の涙となったのは今も不思議だけれど、それと全く同じことが起きた。

和歌の内容は全くわからなかったのだけれど、とにかくずっと涙が止まらなくなった。
あれはなんだったのか?
終わって、次の西條八十自身の詩の朗読になった時にはピタっと止まった。
こちらの方は、母を想う息子の詩で、内容もよくわかったというのに、今一響かない。
どちらかというと、脳、頭で作り上げられた世界という気がしてしまった。

でも北原白秋の語り口は、ただただ泣いてしまう。
ひとつだけわかったのは、微塵も「うまくやろう」としていないこと。
本人がどのような人間だったのかはわからないけれど、北原白秋の芸術は物凄いものだ、と認識。これから色々と読んでみようと思った。

トミー・マクレナンのブルースではタンニン多めの赤が飲みたくなった。
そしてマディー・ウォーターズのローリングストーンのエネルギーの深さに圧倒される。

更には、なんとビートルズのSPもあるとのことで、拝聴。
インドで制作されたものだそうで、高品質なのだそう。

目の前に4人が仲良く(まだヨーコが登場する前の)ワチャワチャ、やんちゃに集って楽しそうに歌っている様子が目に浮かぶ。というか、そこに居る!?

抱きしめたい、ディスボーイ、ラブミードゥー、PSアイラブユー、アンドアイラブハー・・
キター、ドラム、そしてコーラスのハモリの響きがふっさりと伝わってくる。

その後はブルーマンデー、そして、最後はエルビス・プレスリーのラブミーテンダー。

やはり、目の前で、私のためだけに歌ってくれているみたいだった。

こんなに名曲だったのか?甘やかだけれど、清々しいのが意外と言えば意外だった。
魂奪われそうな歌に、改めてその物凄さを知った。

そういえば、どれもに共通していたのは「清々しさ」。

それはこの蓄音機・グレデンザがもたらしたものかもしれないし、名作というものには、みな、この清々しさが含まれているものなのかもしれない。


マホガニーに控えめな彫刻が施されたその大きな箱はまるでタイムマシン。

もしくは、イタコ?

時空を超えて聴き手をその楽曲が演奏された場所に瞬時に連れていってくれる。
もしくは現世に、私の前に演奏者たちを連れてきてくれる。

音、音楽だけでなく、魂を伝えてくれるのが、この蓄音機とSP盤ということなのかもしれません。

こんなに贅沢で素晴らしいものが、かつてはあった、ということ、そしてそれらが世の中一般から失われてしまったということが、なんとも残念でなりません。