今回、アンコールで初披露したオリジナル作品 『浮雲』の反響が大きい。
会場では万葉集と柿本人麻呂の話はしたものの、肝心の和歌を詠むのを忘れてしまったので、ここに。
あの、有名な歌です。
『天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠れ見ゆ』
フルート関係者からも、、一般の、お客様からも、こんなに反響があるとは想定していなかった。
様々な美術作品への造詣が深く、ご自身、名カメラマンでもある先達からの、
「日本の精神文化の縦糸の一本に光が当たり輝くものを感じました。」
とのお葉書が嬉しかった。
和歌の説明はなくても、その情景やスピリットがちゃんと伝わった、ということが嬉しい。
もちろん、それは、共演のピアニスト砂原悟さんと、チェロの山本徹さんの演奏のお陰でもある。
チェロのアドリブ部分は、全て山本さんの創作。
「琵琶法師みたいな感じも入れて・・・」と希望は出したものの、全てお任せ。
練習のたびに、毎回、違うことをやってくださるのも楽しかった。
流石「バッハ・コレギウム・ジャパン」で活躍されているバロックの名手であり、「アヴァンギャルド」の主宰者だ。
本当は、砂原さんも様々な特殊奏法など駆使して色々とやりたかったらしいのだけれど、会場のピアノでの特殊奏法は厳禁なので、今回は我慢していただいた。
ピアノの特殊奏法が可能な機会があれば、今度は砂原さんのアドリブも聞いてみたい。
元々は、85歳でギターを始められた岩城正夫先生(89歳)とセッションしたくて作った曲。
夏の暑い日、法螺貝修復のご相談を兼ねた訪問の折、初合わせでも上手くいって、とても楽しかった。
先生も「こうやって合わせる、というのは人生初です!」と喜んでくださった。
だから、伴奏は、ずっとギターの開放弦の1コード。
ミラレソシミの連なりは、本当に美しい。
そんな感覚を持つようになったのも、ギター小僧のWAYAZメンバーと蓼科合宿などで、まったりと音出しして遊んでいた経験があればこそだろう。
ワインを飲みつつ、適当につまびくギターに合わせてハミングしたり、キーボードでアドリブ入れたりして遊んでいた日々。
フルートの音は通るので、深夜の別荘地では厳禁だったのが若干不満だったけれど、まあ致し方ない・・
ヴィラロボスの作品に既にその開放弦だけの伴奏の発想はあるけれど、それとは別の日本人ならではの作品にしてみようと思った。
宇高靖人さんのギターとこの『浮雲』の演奏を録音した時も、録音技師の若い方が、とてもこの曲を気に入ってくださった・・
・・宇高さんのアドリブも、まさに「雲の波立ち」という感じで圧巻だった・・
必死で作ろうとした訳ではなく、ふと降りてきた旋律を書き留めた、ほぼ趣味の俳句と同じ様に、自然に生まれた作品。
フルートアドリブ部分の「星の林」に棲む小鳥の囀りには、カラートリルというモダン奏法を取り入れた。
これは、昔、トロワ・パルファンのオリジナル作品を作っていただいた折、次世代フルート奏者の旗手・天才・多久潤一朗さんから教えていただいたもの。
一年くらいの経験があれば、多分誰でもすぐに楽しめる易しい小品、ということも心掛けた。
でも、アドリブ部分では、個々の感性・経験・技量に応じた様々な工夫も楽しめる。
でも、アドリブ部分では、個々の感性・経験・技量に応じた様々な工夫も楽しめる。
ギターでも、ピアノでもミラレソシミさえ弾ければ伴奏が可能なので、こちらもまた誰でもすぐに楽しめる。
定まった、究極のオスティナートバスは、運命、宇宙の摂理でもあるけれど、
「開放」は「解放」にも通じる。
「定め」があればこその「自由」を思う存分満喫していただきたい小品です。
来年春に宇高さんとの共演でのCD付き楽譜が出る予定ではあるけれど・・
今回のトリオのCDの件が落着しないと難しいかもしれないなあ・・?
でも、まあ、これも成り行きで。