思いつくまま

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久米一正著『人を束ねる  名古屋グランパスの常勝マネジメント』(幻冬舎新書)を読む。

2012年10月19日 23時50分30秒 | 読書
今年の3月末に出たグランパスGM久米さんの書いた本。

この人はもともとは日立の人で、柏レイソル&清水エスパルスを経て、2008年にグランパスにピクシー監督と共に(たまたま一緒の年に)やってきた。当時のグラ・福島専務と小椋強化部長が静岡まで頭を下げに行って連れてきた。
この人のことは、この本を読むまでほとんど知らなかった。今年本を出して少し話題になっていたなぁという程度だった。
しかし、選手の茶髪や髭を禁止したのがこの人で、トゥーリオ&金崎ム~&ダニルソン&藤本ジュンゴ&千代反田&ダニエル&スピードスターの永井わさおを引っ張ってきたのもこの人、グラの年俸査定制度をコンピュータ化し確立したのもこの人ということがわかった。
2001年に岐阜長良川競技場でグランパスVSレイソル戦を見た時に、「無能な西野をクビにしろ!」というアウェイ側の横断幕を見た時にはビックリしたものだが、その事情もよくわかった。
ということで、書いてあることで気に留まったことをピックアップ。

・ふにゃシャチをビシッとしたキレのいいシャチにする。イワシをナマズと一緒の水槽に入れると、イワシは食われまいとしてピリピリする。そのために自らはナマズになる。(自分も職場ではそん(損)な存在だなぁ。)
・50人近いクラブのスタッフから、「私はストイコビッチ監督を決して裏切りません。最後まで監督を支えます。すべてを捧げます。」という血判を押した血判状を出させた。
・読めば誰でも同じ仕事ができるマニュアルを作成し、たとえば外国人選手が移籍してきても、受け入れや当地での日常生活に困ることがないくらいにしている。
・日立製作所時代の「逆判」、上司が気に入らない企画書には逆さまにハンコを押された。
・5位以内に3年ほど定着しているチームでないと優勝は難しい。グランパスは、2008年に3位、2009年に2位、そして2010年に念願の初優勝、2011年は2位(この年に優勝した柏レイソルは異例中の異例)と常勝チームになった。
・それでも1995年から1年半監督だったアーセン・ベンゲルさんの時が一番輝いていた。95年3位、天皇杯優勝、96年(途中からカルロスQェイロス監督で)2位、ピクシーもベンゲルさんの下で再び輝きを取り戻した。グランパスは、今はこのベンゲル監督時代の「魅力的で華麗なモダンフットボール」を目指している。
・名古屋と豊田に分かれていた事務所を、豊田のクラブハウスのところに一体化した。4千万円でクラブハウスに厨房を作り、特にユース・ジュニアユースが練習後にラーメン屋やコンビニにたむろすることがなくなった。
・Jリーグ王者に贈られるシャーレ(皿)の制作にこの人が関わった。
・韓国選手は上下関係が厳しく、2001年の柏にファンソンホン&ホンミョンボ&ユサンチョルという元韓国代表3選手がいたが、ユサンチョルが上の2人に遠慮してうまくいかなかった。
・柏で西野監督の時に、清水からぺリマンコーチを引っ張ってきてうまくいかず、それが西野解任論につながった。
(西野監督はその直後にガンバ大阪の監督として大成した。)エスパルスで守備的なアントニーニョ監督と前からプレスの石崎コーチがかみ合わず、ガタガタの14位になった。(その後長谷川ケンタを監督にして立て直した。)
・トゥーリオ&藤本&永井との交渉時には、カリスマ監督・ピクシーを同席させた。
・選手に不信感を抱かせない、ごね得は許さない、データ化により公平な査定をする。玉田に「タマちゃん、年俸、これくらいでいいでしょ」なんて言葉遣いは間違ってもしない。
・できれば、日本人選手(コーチも)に関するジュニアユース、ユース時代からのデータベースを作り、Jリーグ全体で共有したい。
・多くのグランパスの選手は、監督やコーチが大事な話をしているというのにメモをとらない。 トゥーリオや藤本は取る。書かないと頭に残らないし、考えも整理できない。
・コーチやGMは教育者、新聞を読め、地元の歴史に精通しろ、コーチが教えるのはサッカーの技術だけではない。人生の先輩として子供たちを育てなければならない。
・グランパスの赤いユニフォームに袖を通した「赤い人間」を大切にしろ。(レッズやアントラーズも赤)、柏なら黄色、ヴェルディなら、ガンバなら、だからユニフォームの色をころころ変えてはいけない。
・イビチャ・オシムは中村直志に、「おまえはミュージシャンか?、髪の毛を切れ、切ったらプレーがもっと良くなるぞ」と忠告した。おかしなことをしていれば、すぐに耳に入ってくる。規律を守れない選手には去ってもらう。
・選手には闘争心(真摯な姿勢)・積極性フェアプレー精神力(90分間の集中)を求める。フェアプレーとは、ただのきれい事ではなく、自分とチームの商品価値を高める重要なもの、ビジネス上の大切な商品である。審判は石だと思って文句を言うな。
・マスコミの意味を理解しろ、マスコミの背後にはファンとなりうる読者・視聴者がいる。取材を受けないのは、重要な宣伝機会を放棄することでもある。
・グランパスは過去の監督経験者を相談役として、重要度を評価している。ベンゲルはS、カルロスQェイロスやフェルフォーセンはAランクとしている。

この人は、ピクシー監督のことを、最初はアクが強く、エキセントリックで、選手への注文が多く、自分の思うとおりにプレーさせ、フロントにもガンガン要求してくるタイプの人間だと思っていたらしい。本当は如才なく、非常に細かい気配りもできる、親日家(納豆や川魚のアユも好んで食べ、京都や白川郷にも何度も出かけている)で、異文化を受け止める柔軟性も持ち合わせていることにすぐに気がついた。
ピクシーが現役時代にJリーグで主審に暴言を吐き何度もレッドカードをもらったのは、日本人DFが汚い手を使って彼のプレーを止めていた(秋田なんか審判の見ていないところで、後ろから頭突きを食らわせていた)、そうしないと止められなかった、でも、それを審判が見逃しているから怒っていたからなのに、なかなかそうは思ってもらえなかった。
ちょっと考えれば、ピクシーがアーセン・べンゲル監督やイビチャ・オシム監督といった世界的な名将の下で輝いていたわけだから、その時に学んだものは計り知れないものがあり、監督経験などなくても十分やっていけることは想像できるはずだ。将来は日本代表監督にもなってもらいたい。

停滞期に入っているJリーグへの提言として
「秋春に移行する。」、これは自分としては大反対。冬の時期に誰が寒い思いをしてまで見に行くのか。「施設をもっと充実させよう」、簡単に言うけど、屋根をつけ、風を遮り、ヒーターを入れるのは大変だよ。豊田スタジアムだって値段の高い席しかヒーターはついていないじゃん。ついでに、陸上競技場をサッカー専用スタジアムにするのはもともと無理がある。
「若手を鍛えるリーグを作る。」、Jリーグのサテライトリーグがなくなっているのを知らなかった。試合に出られない選手は練習試合さえなかなか無いというのは本当に辛い。
GMを養成する。サッカーしかやってこなかった人ではなかなかむずかしい。
「フロントも移籍しよう」だとさ。

久米さんのこと、今後いろいろな場面で注目して見てみようと思った次第である。

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