天才になる!, 荒木経惟, 講談社現代新書JEUNESSE 1371, 1997年
・"天才" 写真家「アラーキー」こと荒木経惟(のぶよし)と、インタビュアーである飯沢耕太郎とのやりとりをまとめて書籍化したもの。写真の技術的な話などはほとんど無く、自身の半生の回想が主な内容です。
・その名と風貌をチラッと見たことがあるだけで、その写真など詳しい予備知識は何もない状態で読みましたが、そうすると、ただの写真好きで、品のあまりよろしくないおじさんによる、感覚的な一人語りを延々と聞かされているような気分になってきてしまいます。少なくとも、写真集の一冊くらいは目を通して、著者が何者であるかをある程度理解した上で手をつけた方がよい本だと思います。
・「嘘をいっぱいしゃべってるからなあ。繰り返し話してると本当になっちゃうんだ。自分も思い込んじゃうからね。」p.25
・「オレは、性教育はまず剣玉で覚えたから。剣玉は性教育だからね。」p.27
・「だからやっぱりオレは応援演説のヤツなんじゃないかと思う。結局被写体の応援演説やってるんですよ。オレが撮る写真はみんな、いいとこ誇張してやってるだろう?」p.40
・「作家意識ってよくいうけど、下町ではそういう意識はないんだよ。芸術っていうよりは、芸能とか技能だね。」p.48
・「写真は記念写真がいちばん強いんだよ。何ていうんだろう。陳腐なことばだけど、一種のラブレターなんだよね。」p.53
・「だからよく見ると、下品な話、写真を見ただけで、その女の子とやってるかやってないかばれる。それを当てるのがうちの陽子はうまかったね。すぐばれちゃうんだよ。」p.54
・「そうだね、その気になればオレは一等賞になれるんだよ。こうやればいいってだいたいわかってるから。でも、一生懸命できないんだよ。トップはなかなかとれない。たいてい三等とか入選ぐらいしかならないの。」p.56
・「ダンディズムっていうよりは、本当の悲しい気持は見られたくないっていうようなことなんだよ。」p.64
・「どういうことかというと、テレビは画面が小さい、画面が小さかったら、クローズアップでなきゃいけない。」p.66
・「やっぱり映画って官能的なんだよね。写真って醒めてるじゃない。冷たいだろう。何でも官能が出ているのがいちばんだからね。もしかしたら、音とかいろんな要素が入っているからかもしれない。聴覚とか視覚とか触覚とか、五感に全部来られたら強いよ。写真一枚でひっぱたいたって負けちゃうよ(笑)。」p.72
・「要するに、テクニックは入ってから一ヶ月で覚えられるから、そんなもの試験では見ないっていう自身をもって、「オレはうまい!」って思ってやったの。」p.81
・「カメラっていうのは、ものすごく写真を決めるから。写真もカメラで決まるし。だからオレ、誰がいまどのカメラ使っているかでどの程度かわかるよ。」p.83
・「結局ね、オレには、いつもそういう応援団がいたんだよ。だからアタシは、「他力本願」っていつも言ってるんですよ。」p.88
・「結局、単純に言うと、実は違うのかもしれないけど、会社とか人さまの広告より自分の広告のほうが面白いってことだよ。自分のことのほうが面白いことに気がついたんだよ。」p.89
・「オレは大物じゃないけど、人間のスケールの大きさっていうか、魅力は見えるんだよ。美しさとか、器とかっていうのはわかる。 そういう勘がいいのは、写真家としてはもう絶対の財産なんだよ。」p.104
・「でも、最近になって、何かぱっと閃くと、あ、これは世界できっと同時に五人は閃いてるって思うようになった。」p.112
・「普通やっぱり、アートでもちょっぴり姿勢っぽいところを入れたいじゃない。でもオレの場合は天からとか神からくるから、そういうことは考えない。動物にならなくちゃ。知性じゃなくて痴性って感じでしょ?」p.140
・「極端なことを言うと、空間より時間を撮らないと写真って面白くない。」p.155
・「改めて聞くのもあれなんですけども、アートっていったい何だと思いますか。 アートねえ。それはね、女のコに淫らなポーズさせるとき、「アートだからね」って言い訳に使うもの。そのぐらいのことにしか、アートって思ってないもん。芸術も同じで「芸術だから大丈夫」って言うんだよ。何が大丈夫なんだか(笑)。でも、女の子には効くんだ。芸術とか、アートとか、文学とかいう言葉は効くんだよ。(中略)芸術だからとか、最初に定義しちゃうのはダメなんだ、間違ってる。芸術をやろうって思ってやるんじゃなくて、何だか知らないけど、無意識に何か出ちゃってハッと気づかされるものなんだよ。」p.166
・「写真家は川ですよ。三途の川かもしれないね。それがどれだけ幅の大きい川か、アマゾンみたいな大河か、作家によって違うんだよ。オレは隅田川。だから向こうまで、声が聞こえるの、オーイって。でも、声が聞こえるぐらいのところにいたいね。オレはさみしがりだから。」p.168
・「だから写真も水がなくちゃいけない。デジタルが何ですか(笑)。いまのデジタルは、水をなくそう、埋め立てをしようとしているような作業だよ。インターネットなんて砂漠ですよ。」p.170
・「いちばんの強敵は空ですよ。空を物に撮れたらね。だからオレ、よく空撮るでしょう。なかなか物にならないけど。空はブツにならない。」p.185
・「でも、小説は物語とははっきり違う。小説は物語の、その先にあるものなんだよね。」p.188
・「だから決して写真は抽象にしちゃいけない。絶対具象っていうか絶対絵画の線じゃないと。何だかわかんないようにしちゃだめだよ。」p.192
・「でも写真は絶対にからだ張らないとだめだよ。 文学だとY・Eになるのが、写真だとはっきり山田詠美だからさ。」p.193
・「オレは趣味と仕事が同じだしさ。(中略)写真のほかには何もないの、貧乏性って奴だなあ。写真とったらまずいよ、何にもないんだ、実を言うと。」p.195
・「男の子ってのは、昔から本質論じゃない。だから本質を写さなくちゃって思っちゃう。女の子は、もう一つの現実を作っちゃうんだから。本質じゃなく、異質を。」p.197
・「もうこれからは「写真」の時代じゃないんだ。あの頃は時代も「写真」の時代だったんだね。だからいい写真が多いんですよ。」p.200
・「だから、もっとおおざっぱに言えば、デジタルが出てきて、写真が、逆に「写・真」になってはっきり見えてくるわけだよ。 19世紀に写真ができたことによって、絵画は「絵・画」になったでしょう。絵画の本質が確認できたっていうことだよね。それまでの、よりきれいに描こうとか、そっくりに描こうとかいう部分を消してあげたの。(そっくりに描くのは)写真にかなわないからっていうところから、絵の本質っていうのは違うんだな、絵は心に写ったもの描くんだってね。だから今度はデジタルが来ると、「写真て何かな?」ってことになる。」p.202
・「天才っていうのは、青二才のうちにカッコよくなくちゃ天才と言わないんですよ。」p.204
・「天才は誰でも持ってるんだよ。天から才能はもらってるんだ。それを自分だけじゃ引っ張りだせないから、誰かが引っ張りだしてくれる。(中略)実はいちばん自分が好きな、惚れた女が引っ張りだすものなんだよ。好きな女に引っ張りだしてもらったものがいちばん強い。」p.210
・「篠山紀信…(1940~)荒木と同年に東京・新宿区柏木町の真言宗の寺、円照寺で生まれる。1963年、日本大学芸術学部写真科卒業。荒木の最大にして最強のライバル。」p.223
・"天才" 写真家「アラーキー」こと荒木経惟(のぶよし)と、インタビュアーである飯沢耕太郎とのやりとりをまとめて書籍化したもの。写真の技術的な話などはほとんど無く、自身の半生の回想が主な内容です。
・その名と風貌をチラッと見たことがあるだけで、その写真など詳しい予備知識は何もない状態で読みましたが、そうすると、ただの写真好きで、品のあまりよろしくないおじさんによる、感覚的な一人語りを延々と聞かされているような気分になってきてしまいます。少なくとも、写真集の一冊くらいは目を通して、著者が何者であるかをある程度理解した上で手をつけた方がよい本だと思います。
・「嘘をいっぱいしゃべってるからなあ。繰り返し話してると本当になっちゃうんだ。自分も思い込んじゃうからね。」p.25
・「オレは、性教育はまず剣玉で覚えたから。剣玉は性教育だからね。」p.27
・「だからやっぱりオレは応援演説のヤツなんじゃないかと思う。結局被写体の応援演説やってるんですよ。オレが撮る写真はみんな、いいとこ誇張してやってるだろう?」p.40
・「作家意識ってよくいうけど、下町ではそういう意識はないんだよ。芸術っていうよりは、芸能とか技能だね。」p.48
・「写真は記念写真がいちばん強いんだよ。何ていうんだろう。陳腐なことばだけど、一種のラブレターなんだよね。」p.53
・「だからよく見ると、下品な話、写真を見ただけで、その女の子とやってるかやってないかばれる。それを当てるのがうちの陽子はうまかったね。すぐばれちゃうんだよ。」p.54
・「そうだね、その気になればオレは一等賞になれるんだよ。こうやればいいってだいたいわかってるから。でも、一生懸命できないんだよ。トップはなかなかとれない。たいてい三等とか入選ぐらいしかならないの。」p.56
・「ダンディズムっていうよりは、本当の悲しい気持は見られたくないっていうようなことなんだよ。」p.64
・「どういうことかというと、テレビは画面が小さい、画面が小さかったら、クローズアップでなきゃいけない。」p.66
・「やっぱり映画って官能的なんだよね。写真って醒めてるじゃない。冷たいだろう。何でも官能が出ているのがいちばんだからね。もしかしたら、音とかいろんな要素が入っているからかもしれない。聴覚とか視覚とか触覚とか、五感に全部来られたら強いよ。写真一枚でひっぱたいたって負けちゃうよ(笑)。」p.72
・「要するに、テクニックは入ってから一ヶ月で覚えられるから、そんなもの試験では見ないっていう自身をもって、「オレはうまい!」って思ってやったの。」p.81
・「カメラっていうのは、ものすごく写真を決めるから。写真もカメラで決まるし。だからオレ、誰がいまどのカメラ使っているかでどの程度かわかるよ。」p.83
・「結局ね、オレには、いつもそういう応援団がいたんだよ。だからアタシは、「他力本願」っていつも言ってるんですよ。」p.88
・「結局、単純に言うと、実は違うのかもしれないけど、会社とか人さまの広告より自分の広告のほうが面白いってことだよ。自分のことのほうが面白いことに気がついたんだよ。」p.89
・「オレは大物じゃないけど、人間のスケールの大きさっていうか、魅力は見えるんだよ。美しさとか、器とかっていうのはわかる。 そういう勘がいいのは、写真家としてはもう絶対の財産なんだよ。」p.104
・「でも、最近になって、何かぱっと閃くと、あ、これは世界できっと同時に五人は閃いてるって思うようになった。」p.112
・「普通やっぱり、アートでもちょっぴり姿勢っぽいところを入れたいじゃない。でもオレの場合は天からとか神からくるから、そういうことは考えない。動物にならなくちゃ。知性じゃなくて痴性って感じでしょ?」p.140
・「極端なことを言うと、空間より時間を撮らないと写真って面白くない。」p.155
・「改めて聞くのもあれなんですけども、アートっていったい何だと思いますか。 アートねえ。それはね、女のコに淫らなポーズさせるとき、「アートだからね」って言い訳に使うもの。そのぐらいのことにしか、アートって思ってないもん。芸術も同じで「芸術だから大丈夫」って言うんだよ。何が大丈夫なんだか(笑)。でも、女の子には効くんだ。芸術とか、アートとか、文学とかいう言葉は効くんだよ。(中略)芸術だからとか、最初に定義しちゃうのはダメなんだ、間違ってる。芸術をやろうって思ってやるんじゃなくて、何だか知らないけど、無意識に何か出ちゃってハッと気づかされるものなんだよ。」p.166
・「写真家は川ですよ。三途の川かもしれないね。それがどれだけ幅の大きい川か、アマゾンみたいな大河か、作家によって違うんだよ。オレは隅田川。だから向こうまで、声が聞こえるの、オーイって。でも、声が聞こえるぐらいのところにいたいね。オレはさみしがりだから。」p.168
・「だから写真も水がなくちゃいけない。デジタルが何ですか(笑)。いまのデジタルは、水をなくそう、埋め立てをしようとしているような作業だよ。インターネットなんて砂漠ですよ。」p.170
・「いちばんの強敵は空ですよ。空を物に撮れたらね。だからオレ、よく空撮るでしょう。なかなか物にならないけど。空はブツにならない。」p.185
・「でも、小説は物語とははっきり違う。小説は物語の、その先にあるものなんだよね。」p.188
・「だから決して写真は抽象にしちゃいけない。絶対具象っていうか絶対絵画の線じゃないと。何だかわかんないようにしちゃだめだよ。」p.192
・「でも写真は絶対にからだ張らないとだめだよ。 文学だとY・Eになるのが、写真だとはっきり山田詠美だからさ。」p.193
・「オレは趣味と仕事が同じだしさ。(中略)写真のほかには何もないの、貧乏性って奴だなあ。写真とったらまずいよ、何にもないんだ、実を言うと。」p.195
・「男の子ってのは、昔から本質論じゃない。だから本質を写さなくちゃって思っちゃう。女の子は、もう一つの現実を作っちゃうんだから。本質じゃなく、異質を。」p.197
・「もうこれからは「写真」の時代じゃないんだ。あの頃は時代も「写真」の時代だったんだね。だからいい写真が多いんですよ。」p.200
・「だから、もっとおおざっぱに言えば、デジタルが出てきて、写真が、逆に「写・真」になってはっきり見えてくるわけだよ。 19世紀に写真ができたことによって、絵画は「絵・画」になったでしょう。絵画の本質が確認できたっていうことだよね。それまでの、よりきれいに描こうとか、そっくりに描こうとかいう部分を消してあげたの。(そっくりに描くのは)写真にかなわないからっていうところから、絵の本質っていうのは違うんだな、絵は心に写ったもの描くんだってね。だから今度はデジタルが来ると、「写真て何かな?」ってことになる。」p.202
・「天才っていうのは、青二才のうちにカッコよくなくちゃ天才と言わないんですよ。」p.204
・「天才は誰でも持ってるんだよ。天から才能はもらってるんだ。それを自分だけじゃ引っ張りだせないから、誰かが引っ張りだしてくれる。(中略)実はいちばん自分が好きな、惚れた女が引っ張りだすものなんだよ。好きな女に引っ張りだしてもらったものがいちばん強い。」p.210
・「篠山紀信…(1940~)荒木と同年に東京・新宿区柏木町の真言宗の寺、円照寺で生まれる。1963年、日本大学芸術学部写真科卒業。荒木の最大にして最強のライバル。」p.223
後になって、主に女性を写す写真家アラーキーと判明。
でも、その後奥さんは亡くなるのですが、写真集の中で、猫のチロと奥さんをとても愛している、ちょっと女々しいくらいの切ないアラーキーを知ることが出来ますよ!
写真集の最後、奥さんが一時的に退院します。(その後まもなく亡くなってしまうのですが。)
「11/23 チロの誕生日。ヨーコ退院。ばんにゃ~い!!
よかったニャア、 チロ。 ニャ~ァ。」
そんな言葉と、背中を舐めるチロの写真が私にはグッとくるんですよね・・。
あっ、ちなみに他の写真集は見たことが無いですが。
そういえば『ネコマンガ』も写真集といえば写真集!?