フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

疑惑

2005年09月03日 22時56分38秒 | 第3章 恋愛パズルメント編~ハルナの章~
かずにぃの椅子を立つ音に、私は一瞬、ビクっと身じろいだ。
かずにぃは、鍵束とタバコを無造作にGパンの後ろのズボンに押し込むと、「行くぞ。ハルナ!」と、私に背を向けながら言った。

訝しげな目で私達を見つめているリョーコさんの目と、私の目が一瞬合った。

「あ。お、お邪魔しました」
慌ててお辞儀をすると、足早に出て行くかずにぃの後を追った。

そんなに早く歩かないで。
やっぱり気のせいじゃない。
ちょっと……お腹の下辺りが痛い。

かずにぃが無表情で私の方を振り向いた時、私はお腹を押さえて少し前屈みになっていた。

かずにぃはぎょっとした顔で「どうした?ハルナ」と走り寄って来てくれた。

「ちょっと、お腹の下が痛い……みたい」
「え?嘘だろ?!だって、ちょっと指を挿れただけ……」

そう言うとかずにぃは手で口を押さえて、こめかみを押さえた。

「そっか。ごめん。お前、初めてだもんな」
「ど、どうして初めてって」
「分かるさ」
動揺する私に、かずにぃはようやく優しい顔で答えた。

かずにぃは車に乗るとナビに向かって「自宅」と言った。
すると、カーナビは瞬時に自宅へのルートを設定していた。

「凄いね。話し掛けるだけでいいなんて」

私が感心していると、ヤレヤレと言った感じでかずにぃは肩を竦めた。

「『自宅』ぐらいだったら聞き取ってくれるんだけどな。だけど、ちょっとでも複雑な場所を行ったら、とんでもないところに連れて行かれちまう」


自宅までの車中、私達は殆ど言葉を交わさなかった。
でも、部屋を出てからのあの重苦しい雰囲気が無くなってほっとしていた。
今はただ何も思い出したくない。
考えたくない。
そんな気持ちだった。

家まで後100m位のところで急にかずにぃは車を止めた。

「今度、旅行にでも行くか?」

かずにぃの言葉に突然現実に引き戻された。

「勿論、二人だけで」

私はまたあのベッドでのかずにぃを思い出して、身体が強張るのを感じていた。
怖々顔を上げた私の目をかずにぃは見つめ返した。

「今度こそ、本当に抱く」

かずにぃの唇が、私の返事を許さないと言っているように荒々しく私の唇を塞いだ。
少しずつ、唇を動かしながら、激しく私の唇を奪っていく……。
そして、ハンドルに置かれた手が再び私の左の胸まで伸び、強い力で鷲掴みにした。

「かずにぃ。苦しい!い、た……い」

私は喘ぎながらかずにぃの身体を離そうと抵抗した。

「この、胸の中には誰が住んでいるんだ?」

かずにぃは、私の頬を両手で挟んで、鋭い目を向けながら詰問した。

「……トオルって、誰だ?」



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正視

2005年09月03日 09時14分15秒 | 第3章 恋愛パズルメント編~ハルナの章~
かずにぃの部屋から出ようとして、机の上にある鏡に映る自分の顔を見てぎょっとした。

「目、真っ赤だ」

鏡に映る私の目は、明らかに泣きはらした後だった。
二人にこんな顔見せられない。
でも、このまま、この部屋に引きこもる訳にもいかないし……。

ふと伏せた目線の先に乱れたベッドが目に入り、さっきまでここでしていたことを思い出し、顔から火が出そうだった。
私はまるで証拠を隠す犯人のように、シーツを伸ばして、何とかキレイにベッドを整えた。

意を決して、扉を開けると、かずにぃとリョーコさんはダイニングテーブルに腰掛けて話をしているところだった。

リョーコさんは私が部屋から出てきたことに気付き、目を見開いて驚きの声を挙げた。
「あれ!ハルナちゃん、来てたの?」

かずにぃは……、かずにぃは丁度向こう側を向いて座っているから表情が読めない。

コクンと私が頷くと、リョーコさんはその視線をかずにぃに移し、上目遣いにかずにぃを見た。

「じゃぁ、もしかして。お邪魔しちゃった???」
「うん。マジで、すんげー邪魔されたかも、なっ?!ハルナ!」

かずにぃは笑顔を作りながら、椅子に肘を掛け、私の方を振り向いた。
でも、目が合うなりその笑顔もすっと引いていた。

私に、話を振らないで……
私は益々、真っ赤になって俯いてしまった。
そんな様子を、かずにぃは肘杖をつきながら、じっと冷静に見つめている。


しばしの沈黙があった後、かずにぃはガタンと乱暴に音を立てながら椅子から立ち上がると、テーブルの上の鍵束とタバコに手を伸ばした。

「リョーコ、夕飯サンキューな。でも、もう遅いから、オレ、こいつ送ってくよ」



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