中学2年の冬。
オレと吉澤は付き合い始めた。
3回目のキスをした頃、オレは吉澤の家に誘われた。
大きな家だったが、誰もいない淋しい感じのする家だった。
「どうしたの?入って」
玄関でオレが躊躇していると、彼女に促された。
家には誰もいないことが直ぐに判った。
「やっぱ、帰るよ」
オレが帰ろうとすると、「帰んないで」と、吉澤は腕に巻きついて離そうとしなかった。
「だって、今、家に誰もいないんだろ?まずいよ」
「いいから上がって」
半ば強引に手を引っ張られ、オレは吉澤の家へあがった。
吉澤の部屋は、何にもない殺風景な部屋だった。
暫くの談笑の後、オレ達はキスを交わした。
「あのね。私、カズ君だったらいいよ……」
吉澤はオレに寄り掛かってきた。
オレは優しく吉澤の頭を撫でていた。
しかし、困ったことにバスケ三昧のオレは女の抱き方すら知らなかった。
この先、どーすりゃいいんだよぉと内心、冷や汗が出てきた。
「自分を大切にしろよ」
そう言ってその場は逃げるように家に帰った。
バスケの本の下に隠してそのテの本を必死で読み漁った。
実践経験は無くても、少しずつ自信をつけてきた頃、Hビデオの鑑賞をしてやるから来いと、当時、友達だった北尾から誘いを受けた。
想像以上にハードなビデオにオレは衝撃を受け、吐き気を催した。
「本当にこんなことするのか??」
オレは北尾に詰め寄った。
「まぁ、似たり寄ったり、こんなもんだな。で、誰とヤルのか白状しろよ」
北尾は煙草に火を点けながら笑った。
オレは正直に、「吉澤えり子」と答えた。
すると、北尾はさっと顔色が変わり、「あいつは止めとけ!」と、声を潜めた。
「なんでだよ」
自分のコイビトをこう言われてムカツかないやつなんていない。
「言いにくいんだけどさ。あいつ、昔、エンコーしてたって噂だぞ」
「エンコー??ってなんだよ」
「お前、ホント世情に疎過ぎ!ウリのことだよ」
「…………????」
「あーもー!!お前、マジでバスケ以外にも関心持てよ」
北尾は、呆れ顔で天を仰いだ。
「分かったよ。今度からそうするから。で、エンコーとかウリとかって何なんだよ」
オレは決して良い意味ではないことを察しながら尋ねた。
「つまり、どっかのオヤジに体売って金を貰うことだよ」
その言葉は、とてもショックだったように思う。
それが事実だとしたら、オレは彼女を許せないだろう……
オレはその夜、吉澤に電話した。
そして、直ぐに切り出した。
「お前さ、エンコーしてたって本当?」
「…………」
「単なる噂だよな」
「…………」
彼女の無言に堪えられずオレは電話口で叫んでいた。
「何とか言えよ!!」
それが精一杯だった。
「ごめんなさい……」
彼女は電話の向こうで泣きじゃくっていた。
オレは彼女の過去を許せるほど大人じゃなかった。
こうしてオレ達は終った。
風の便りに彼女がその後、進学した高校の同級生と同棲し、妊娠、出産したことを聞いた。
もう少しオレが大人だったら、もう少しオレが寛大だったら違う今があったのかもしれない。
時々、そう思うことがある。
楽しそうに笑いながらすれ違う親子を見る度に「淋しい」と良く言っていた吉澤を思い出す。
今は多分淋しくなんか無いだろう。
吉澤、幸せになれ!
人を……、ハルナを愛することを知った今だから、心からそう思える。
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オレと吉澤は付き合い始めた。
3回目のキスをした頃、オレは吉澤の家に誘われた。
大きな家だったが、誰もいない淋しい感じのする家だった。
「どうしたの?入って」
玄関でオレが躊躇していると、彼女に促された。
家には誰もいないことが直ぐに判った。
「やっぱ、帰るよ」
オレが帰ろうとすると、「帰んないで」と、吉澤は腕に巻きついて離そうとしなかった。
「だって、今、家に誰もいないんだろ?まずいよ」
「いいから上がって」
半ば強引に手を引っ張られ、オレは吉澤の家へあがった。
吉澤の部屋は、何にもない殺風景な部屋だった。
暫くの談笑の後、オレ達はキスを交わした。
「あのね。私、カズ君だったらいいよ……」
吉澤はオレに寄り掛かってきた。
オレは優しく吉澤の頭を撫でていた。
しかし、困ったことにバスケ三昧のオレは女の抱き方すら知らなかった。
この先、どーすりゃいいんだよぉと内心、冷や汗が出てきた。
「自分を大切にしろよ」
そう言ってその場は逃げるように家に帰った。
バスケの本の下に隠してそのテの本を必死で読み漁った。
実践経験は無くても、少しずつ自信をつけてきた頃、Hビデオの鑑賞をしてやるから来いと、当時、友達だった北尾から誘いを受けた。
想像以上にハードなビデオにオレは衝撃を受け、吐き気を催した。
「本当にこんなことするのか??」
オレは北尾に詰め寄った。
「まぁ、似たり寄ったり、こんなもんだな。で、誰とヤルのか白状しろよ」
北尾は煙草に火を点けながら笑った。
オレは正直に、「吉澤えり子」と答えた。
すると、北尾はさっと顔色が変わり、「あいつは止めとけ!」と、声を潜めた。
「なんでだよ」
自分のコイビトをこう言われてムカツかないやつなんていない。
「言いにくいんだけどさ。あいつ、昔、エンコーしてたって噂だぞ」
「エンコー??ってなんだよ」
「お前、ホント世情に疎過ぎ!ウリのことだよ」
「…………????」
「あーもー!!お前、マジでバスケ以外にも関心持てよ」
北尾は、呆れ顔で天を仰いだ。
「分かったよ。今度からそうするから。で、エンコーとかウリとかって何なんだよ」
オレは決して良い意味ではないことを察しながら尋ねた。
「つまり、どっかのオヤジに体売って金を貰うことだよ」
その言葉は、とてもショックだったように思う。
それが事実だとしたら、オレは彼女を許せないだろう……
オレはその夜、吉澤に電話した。
そして、直ぐに切り出した。
「お前さ、エンコーしてたって本当?」
「…………」
「単なる噂だよな」
「…………」
彼女の無言に堪えられずオレは電話口で叫んでいた。
「何とか言えよ!!」
それが精一杯だった。
「ごめんなさい……」
彼女は電話の向こうで泣きじゃくっていた。
オレは彼女の過去を許せるほど大人じゃなかった。
こうしてオレ達は終った。
風の便りに彼女がその後、進学した高校の同級生と同棲し、妊娠、出産したことを聞いた。
もう少しオレが大人だったら、もう少しオレが寛大だったら違う今があったのかもしれない。
時々、そう思うことがある。
楽しそうに笑いながらすれ違う親子を見る度に「淋しい」と良く言っていた吉澤を思い出す。
今は多分淋しくなんか無いだろう。
吉澤、幸せになれ!
人を……、ハルナを愛することを知った今だから、心からそう思える。
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