フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

夏祭り

2005年09月10日 17時27分51秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
オレが小学5年。ハルナが小学1年の時だった。
近所の神社で祭りがあった。
オレとタケシとノボルの3人で思う存分祭りを楽しもうと画策していた。

けど、オレが祭りに行こうとすると、「ハルナも行きたい!」と、ハルナは駄々をこねた。
正直、ウザかった。
オレにだって、「男の世界」がある。
でもおふくろの命令は絶対だ。

「ハルナちゃんを連れて行かなきゃ、飯抜きだからね!」

…………くそばばぁ!

案の定、タケシもノボルもあからさまに「また、ハルナを連れてきたのかよ~」と不満をぶちまけた。

「しょうがないだろ!」
オレもさすがにおふくろの横暴とハルナの甘ったれぶりが頭に来ていた。

「巻いちまおうぜ」
タケシとノボルが言った。

そんなことをしたらどんな事態になるか当時のオレの脳ミソでも判っていた。
でもオレは友達とどうしてもハルナを気にせずに、思う存分遊びたかった。

「ハルナ!来いよ!」
オレはハルナを呼ぶと、チョコバナナを持たせた。

「10分だけいい。オレ達だけで遊ばせてくれ。お前はここで大人しくチョコバナナ食べてろよ。いいか?!ここでだぞ!必ず戻ってくるからな」

ハルナを置いてオレ達は、くじ引き、金魚掬い、花札……思う存分遊びまくった。
気付くと1時間は経っていたと思う。

慌ててハルナを待たせていた場所に戻るとヤツはその場所にはいなかった。

オレは焦った。
つい最近、知らないおじさんに連れて行かれた女の子が殺されたと言う事件があったばかりだったことを思い出したからだ。
犯人は確かまだ捕まっていなかった。
殺された女の子とハルナがダブった。

「ハルナー!!!どこだ!!ハルナーーー!!!」
オレは声を限りにあちこち探し回った。

ハルナを守ると言っておきながら、オレは自分の欲求を優先させてしまったことを死ぬほど後悔した。
無事でいてくれハルナ。
それだけを願って必死に探した。

その時、聞きなれた声が交番の方から聞こえてきた。
「かずにぃちゃ、迷子になっちゃったの。探して!!」
ハルナは、泣きながらお巡りさんに訴えていた。

「ハルナ!」
オレが近寄るとハルナのヤツは、オレにしがみついて泣き出した。

「かずにぃちゃ!大丈夫だった?!恐くなかった?」
「ばっかやろぉ。それ、オレのセリフだ。……独りにしてごめんな」

オレは力の限りハルナを抱きしめた。

祭りからの帰り道。
泣き疲れたハルナはオレがおんぶする背中で眠ってしまった。
家に帰るとおふくろとおばさん(ハルナの母親)が、玄関先で立ち話していた。

「でも、ホント、淋しくなるわ。あなた達がいなくなったら。ハルナちゃんもあんなにかずに懐いてくれているのに……」
深刻な顔した二人の会話が聞こえてきた。

「あら、かず、お帰り。まぁ、ハルナちゃん眠っちゃったの?」
おふくろは慌てて取り繕うような作り笑いをした。

「ハルナがいなくなるって、何?」
オレはギッとおふくろを睨み付けると単刀直入に尋ねた。



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ケンカ

2005年09月10日 14時35分18秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
オレは当時、家から園バスで20分のひまわり幼稚園に通っていた。
ハルナは、その幼稚園に週に1日だけある「ひよこクラス」に母親と通園していた。

ここでもハルナはオレの悩みの種だった。
ハルナはオレの姿を見かけると、覚束ない足取りで、おしりをあひるみたいに不恰好に振りながら、くっついて来た。
それを邪魔だと言う奴等もいて、ある時、ハルナに泥を投げつけ始めた。
かっとしたオレは馬乗りになって奴等を叩きのめした。

そんな感じで、何回かオレは登園停止処分を食らった。
お陰でケンカに強くなったけど、おふくろはますます、「ハルナちゃんのような可愛らしい女の子が私の子供だったらいいのに……」と愚痴を零し、次第に「女の子が欲しい」から、「ハルナが欲しい」と言い出すようになった。

オレはハルナを大切にしたいと思う反面、こういうおふくろの言葉を聞く度にハルナを苛めたくもなった。
矛盾してるなぁと我ながら思う。

だけど、どんなにオレがハルナに冷たくしても、ヤツはいつも一生懸命、オレの事を「かずにぃちゃ」と呼びながら追いかけてきた。


ある日、また幼稚園で、ハルナを苛める奴等をぼこった事件がおふくろの耳に入ったことがあった。
オレは何の言い訳もしなかった。
ただ、相手がシャレになんない怪我をしたこともあり、おふくろは幼稚園に着くなりオレを怒り、手を上げようとした。
その時、ハルナが泣きながら、オレにしがみついて、「ペンペン、めっ!かずにぃちゃ、いい子!いい子!!」とオレをかばったことがあった。

「泣くなよ、ハルナ。泣くなよ」
二人で抱き締めあってボロボロ泣いた。

それ以来、オレは絶対ハルナを苛めることは止めようと誓った。
守ってやると思った。


それは今も変わらないのに……。



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ムカツク

2005年09月10日 12時20分58秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
オレは片岡家の長男として生まれた。
結局のところ、下が生まれなかったから一人っ子ってやつだ。

おふくろは以前から女の子が欲しかったから、オレが男と判って至極落胆したらしい。
しかも、オレはガキ大将で生傷が絶えなかったもんだから(まぁ、家の中の家財道具もかなり破壊したしね)、おふくろはことある毎に「女の子の方が良かったわ」
なんて、溜息を吐いていた。

そんな時、スープの冷めない距離に住んでいたおふくろの幼馴染の園田夫妻にハルナが生まれた。
おふくろはそれはそれは羨ましがって、たまに遊びに来る園田夫妻に「ハルナちゃんは、私が見ているから、あなた達たまにはデートしてきたら?」と言ってはハルナを預かっていた。

そんな感じで、ハルナは当たり前のように、ちゃっかりとおふくろの愛情と、オレの妹分の座を勝ち取っていった。

ある日、おふくろがハルナのミルクを作るからオレにハルナを見ていろといった。

冗談じゃない!
ぎゃぁぎゃぁ泣くだけの赤ん坊を見るより、オレは近所のタケシと秘密基地を一刻も早く作りたかった。
砂場で、トンネルを掘ってそれをタケシと壊すのがオレの楽しみだった。

でも、おふくろの命令は絶対だ。
聞かなかった場合は、当時大好きだったマルボーロのおやつ抜きの刑が待ち受けている。

仕方なく、ハルナを見ていた。
…………うごめいてる。

「お前、鼻低いな」
高くしてやろうと鼻を摘んだら、顔を真っ赤にして泣き出した。

やべぇ……

おふくろが飛んできて「カズト!!!!!!なんてことすんのよ!あんたは!!」な~んて怒鳴られてゲンコツでボコボコにされた。

実の息子の方をいとおしめよ……

当時、もし、ボキャブラリーが豊富だったら、それくらいのクレームはつけていたはずだ。
いかんせん、4歳のガキだったことが惜しまれる。

それから、ハルナは満身の力を込めてコロンと寝返りをうった。
それを見ていたおふくろは「まぁまぁまぁ~~!ハルナちゃん、凄いわ!!」
と、言ってヤツを抱き上げてキスをし始めた。

……どこがすげぇんだよ!!!
ただ転がっただけじゃねぇかよ!!
なんかコイツ、ムカツク!!

まぁ、とにかく4歳だったからな。
そんなもんだろ。



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