フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

捻挫

2005年09月06日 23時38分47秒 | 第3章 恋愛パズルメント編~ハルナの章~
「ずるいぞ!トオル!!」
「ヒュー♪ヒュー♪」
「ハルナばっかりずるーい!!」

冷やかしややっかみなんか気にしないと言った感じで、トオル君は強引に私の手を引いていく。

トオル君に手を引かれて浜を突っ切っている最中に、最初の花火が上がった。
みんな歓声を上げて、花火に魅入っていた。

「トオル君、一体どこに行くの?待って」

トオル君は強引に手を引いて、歩を緩めない。

「待って!あっ!!」

私は浜から上がる階段に躓いて足をくじいてしまった。

「……痛いっ!」

トオル君は振り返ると、跪いた。
「ご、ごめん。挫いちゃったかな……」
「大丈夫。心配しないで」

私は少し痛む足でひょこひょこと歩き、立ち上がろうとした。
だけど、足がズキズキして、その場にしゃがみ込んでしまった。

トオル君は、屈むと、私の脇に手を通しヒョイと抱き上げた。

「え?!うそ。私、重いから下ろして!歩けるよ」
「とりあえず、別荘に行くしかないか。ちょっと我慢して」

トオル君は私の言葉に耳を貸さず、そのまま、平気な顔して歩いていった。

「あの……重くない?」
「うん。すんごく、重い!」
「え!降ろして!今すぐ降りるから!!」
「冗談。軽いよ」

大騒ぎする私を横目に、彼は柔らかく笑った。
そして、芝生のあるところまで来るとそっとその上に座らせてくれた。
海上には大きな枝垂れ柳の花火が満開の花を咲かせ、観客の歓声が一層大きくなっていた。
枝垂れ柳の先端がキラキラと星のように光りながら流れ落ちると、辺りからは拍手が沸き起こっていた。

トオル君は徐にパーカーのポケットに手を入れ、小さな箱を私に差し出すと、「開けてみて」と私に差し出した。

ドキドキしながら震える手で箱を開けてみると、中にはとても可愛いお星様のペンダントが入っていた。

「可愛い……」

私はペンダントを取り出すと、目の前に翳した。

「これ、私に?!」
「うん。僕が誤ってバッグで殴っちゃった分と、スナフキンのお詫びの分」

トオル君は頷いて、照れ臭そうに笑った。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS



脱走

2005年09月06日 01時29分52秒 | 第3章 恋愛パズルメント編~ハルナの章~
暫くすると、スズとトモがアイスを片手にコンビニから出てきた。
でも、トオル君を見るなり、二人共舐めていたアイスを背後に隠した。

「きゃぁ!ナマトオル君だ!!」

スズとトモは大興奮してその場でピョンピョン飛び跳ねた。

トオル君は、改まった感じで二人に恭しくお辞儀をした。
「初めまして。今日は遠かったでしょう?」
「そんなことありませ~ん!憧れのトオル君を間近に見て喋れるなんて、もう死んでもいい!!!!!」

二人はトオル君の両サイドに回り込み、腕を通したかと思うとしな垂れかかった。

トオル君は困惑しつつも、当り障りのない会話をしながら私達をエスコートしてくれた。


浜に着くとトオル君の友達4~5人が、大きなシートで場所取りをしていた。

「おーい!トオル!!」

私達と目が合うと、「あ。ども」と、友達の一人が照れくさそうに頭を下げた。

砂浜は海風のお陰もあってか思ったより涼しくて快適だった。
トモとスズはトオル君狙いだったので、シートの向こう側で彼にまとわりついてこっちに来ない。

私は一人、シートに腰を下ろし、潮風を心地良く感じながら海を眺めていた。


「ハールナちゃん。どうしたの?」
トオル君の友達の一人が話し掛けてきた。
さっき、「あ。ども」とか言って挨拶した人だ。
ええっとぉ、佐々原ナントカ君とか言ったっけ??

「君の友達、積極的だね。トオルのやつたじたじだ。」
佐々原君はニヤニヤ笑いながらトオル君を指差した。

私が振り向いた丁度その時、トオル君と目が合った。
彼はトモとスズに手を振ると、それでもしがみ付こうとする二人を振り切ってこちらの方に逃げて来た。


「参った。ハルナちゃんの友達は凄いね」
彼は、苦笑して頭を掻いた。

「そこまでさせてしまうトオル君が凄いんだよ」
私がクスクス笑っているとトモが立ち上がり、トオル君目掛けてズンズンと歩いて来た。

ギョッとしたトオル君は私の手首を掴むと、シートの近くに並べられた靴を引き寄せた。

「とりあえず、脱走しよう。一緒に来て」

彼は私が草履を履くなり、瞬く間に私を共犯者に仕立て上げ、浜から連れ出してしまったんだ。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS