フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

慟哭

2005年09月22日 23時41分25秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
チビハルナは8歳という短い生涯の最後の2年間を殆ど病院の中で過ごし、この世を去った。
オレは何も出来なかった。

そして、今もオレは、ただ立っているだけだった。

小雨が降る通夜の夜、チビが何度も「勉強を教えて!」と言ってオレにせがんでいた事を思い出していた。
オレは自分のことで精一杯だった。
だから、チビの言うことを「ウザイ」の一言で無視し続けた。

教えてやれば良かった。
あいつがもういいと言って根を上げるくらい、勉強を見てあげれば良かった……。

「バカのままだぞ、なんて言ってごめんなぁ……」

バカはオレだ。
オレは壁に頭を打ちつけ、生まれて初めて大声をあげて泣いた。




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チビの死

2005年09月22日 23時22分36秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
オレが病院に着いた時には取材の車が少しあったが、概ね撤退した後だった。
小児科は特別な病棟で、両親のような関係者以外は一切入れないようになっている。
そこで、矢部先生を訪ねたのだが、生憎出張中とのことだった。

チビハルナに何があったんだ。

……そうだ!

オレは踵を返してもう一度外へ飛び出した。


取材陣は既に機材を車に積み込んでいるところだった。
「すみません。ここで、何があったんですか?」

カメラを抱えているカメラマンらしき男を捕まえて尋ねた。

「いやぁ、オレも詳しくは知らないんだよ。急いで、病院の絵を撮って来いって指令が来ただけでね。カメラマンだからね」

男は肩を竦めた。
オレは軽く舌打ちすると、再び病院へと走った。

すると、オレが入院中世話になった外科の婦長が丁度病院から出てくるところだった。

「前原春奈に何があったんですか?!」
オレは息を切らせながら尋ねた。
「片岡君。気をしっかりね。・・・春奈ちゃんは、渡米先の病院で今朝亡くなったとの連絡があったの」


オレは、何が何だか分からなくなっていた。
突然、目眩がし、暗い谷底に叩き落されて行くような気がした。



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