フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

衝動

2005年09月18日 20時12分30秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
「2週間?!何で?」

オレは慌てて聞き返した。

「隣りのおうちが完成するまでよ。ハルナちゃんだけ、学校の都合で先に来たのよ」
「って、オレ何も聞いてないんだけど!」
「あんたはちぃぃぃっとも家に居着かなかったじゃないの。まともに帰ってきたことある?」

オフクロは呆れ顔で、オレの素行の悪さを非難した。

確かに、ここ1年位は女から女の家を泊まり歩いて、家に帰ったことは無かった。
オレとオフクロのやりとりを聞きながら、ハルナが不安そうな顔をしていた。

「……分かったよ。ハルナ、そんな顔すんなよ。ただ……、驚いただけだから。ハルナだったら、大歓迎だよ」

オレの言葉にハルナはほっとしたようだった。

帰りのタクシーの中で、オフクロはハルナと楽しそうに話していた。
オレは助手席に座りながら、全神経がハルナの一言一言に向かっているのを感じた。

鈴のように響く心地良い声。
優しく語り掛けるような話し方にオレは心が安らぐのを感じていた。

キレイになったなぁ……

口を突いて出そうになった言葉を慌てて飲み込んだ。

家に着くとオフクロとハルナは台所に一緒に立って、楽しそうにオレの退院祝いの食事の支度をしていた。
女の子がいるというだけで、家の中がまるで花が咲いたように明るい雰囲気に包まれていた。

オレは、そーっと二階に上がり、ベッドに転がっていた。
いつの間に眠ってしまったのだろうか。

「かずにぃ、起きて。ご飯、食べよ」

さらさらとしたハルナ髪がオレの顔に掛かり飛び起きた。

「勝手に部屋に入んなよ!!」

オレはそう叫ぶと、咄嗟にハルナの手を跳ね除けた。

ハルナはひどく驚いて、「ごめん」とだけ言うと部屋から出て行った。

オレはひどく後悔した。

オレは両親が留守の時、これ幸いにとこの部屋で何人も女を抱いていた。
このベッドで。

その部屋にハルナを入れたくなかった。

オレは慌ててハルナを探した。

ハルナはキッチンでスープを混ぜながら泣いていた。
オレに気付くと、「勝手に入ってごめんね」と、泣きながら謝った。

謝るなよ、ハルナ。
オレが悪いんだ。

「あの部屋は汚れてるんだ。だから……、その……、見られるのが恥ずかしかったんだ。今度、掃除しとくから」

ハルナはかろうじて笑顔を返してくれた。
オレはその笑顔を見つめながら、彼女を抱きしめたい衝動を必死で堪えた。




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再会

2005年09月18日 01時16分02秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
オレの足が大分治りかけてきた高二の初夏。
足の骨を固定していた金具を取る手術をするために、オレは再び、病院に入院した。

そーいや、チビハルナはどうしただろう。
結局オレは「先生になって」と言うヤツの希望をシカトして、そのまま退院してしまった。

自分のことで精一杯だった。

「退院したら、見舞いにでも行くか」

それよりも、明日の手術のことで頭はいっぱいだった。

手術はあっけないくらい無事に終った。
オレの長かった治療生活もこれで終った。

手術が終って、家に帰る日がきた。
オフクロが「ハルナちゃんが来てくれたわよ」と、笑いながら病室に入ってきた。

「お!チビハルナ?」

オフクロに続いて入ってきた女の子を見てオレは目を疑った。

オフクロと同じ位の背丈。
腰まで伸びた栗色のさらさらの髪。
白いノースリーブのワンピースに白い手足がすんなりと伸びた肢体。

キレイと言うよりはむしろ可愛らしい感じのする女の子が遠慮がちにオフクロと一緒に病室に入ってきた。


まさか……。
オレは言葉を失った。

「かずにぃ……」

聞き覚えのある声に、はっとなった。

「お久し振りです。あの、……大丈夫?」
「…………」
「ほら!かず!!聞かれてるでしょう。何、黙ってるの?」

オレは、このオフクロの言葉に気付かないくらい、目線がハルナに釘付けになってしまっていた。


オフクロは退院の身支度をしながら、オレを軽く睨み付けた。
「ハルナちゃんね。2週間程、うちで預かることにしたから、仲良くするのよ」




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