ペパキャンのサバイバル日記

円形脱毛症で髪の毛がなくなりました。今はスキンヘッドライフ満喫です。
見た目問題当事者としての情報発信中!

台所にて

2007-07-22 00:00:00 | インポート
朝、台所で朝食の用意をしている時だった。グリルでは焼き魚がいい具合にパチパチとはぜていて、お味噌汁用のダシとご飯の炊ける湯気が混ざり合った香りが立ちこめている。冷蔵庫のぶうんというモーター音と、電子レンジが立てるピーピーという電子音。私は納豆用の葱をザクザク刻んでいる時だったと思う。

 急に気持ちがひゅうんと沈み込んでいくのがわかった。楽しかった東京での二日間が文字通り台風と共に去っていって、私には現実が戻ってきたんだと思った。吉本ばななの小説みたいだけれど、台所という場所は本当に特別な場所だ。私は既に人生の何分の一かをここで過ごし、これから先も過ごしていく。

 ただ単にお祭りが終わって悲しいとか、残念だとかいうそういう気持ちではなかった。そこには静かな安堵感があり、帰るべき場所に帰って来たという不思議な感覚があった。これまでそうしてきたように私はこの台所で、家族のために料理を作り、シンクを磨き、皿を洗う。そんな一連の行為を何故か無性に愛しいと思った。

 台所はそんな私のおかしな感情をよそにいつもの表情をしている。換気扇はそろそろフィルターを取り替えろよと警告を出しているし、食器棚のグラス類はもう少しピカピカに磨かれるのを望んでいる。冷蔵庫の青い野菜達は料理される瞬間を今か今かと待ち受けている。フワフワと浮いていた自分の足がゆっくりと地面に着地していくのがわかる。