いろんな人生があるんだ…いろんな決断が。
「いろんな」の背景には、国、環境、民族等々の問題が関わることも…
なんて、偉そうに大きく書いちゃいました。
R君というモーリタニア青年がいます。
英語を武器に今の職場に採用され、半年が経とうとしてる彼にチャンスが訪れました。
とある奨学金の試験にパスして2年間アメリカに留学できることになったんです!
本人も待ち望んでいた結果だったにも関わらず、彼はここから深く悩むことになります。
留学するとなると、大きな問題が…
留学=今の仕事を辞める→家族の収入がなくなる。
まだ20代で独身ですが、両親だけでなく周囲の親戚を含めて彼の収入で生活している人たちがいるんです。
それでも、その奨学金制度に合格するのはかなりすごいこと、誰でも得られるチャンスではないので、
この半年間仕事があったのはラッキーだったと思って、絶対に行くべきだ!
自分一人じゃなくて兄弟だってがんばるべきなんだから、と説得したのだけど…
1ヵ月悩んだ結果、
彼の決断は、モーリタニアで今の仕事を続けることでした。
「後悔しないの?、海外で仕事するチャンスだって得られるかもしれないんだよ」って念押しも、
「悩んだ末の決断だから、もし将来後悔してもそれは自分の責任」だって。
ただでさえ安定した仕事を得るのが難しいこの国(特に月給をもらえる仕事)、留学することで将来の可能性を開けるとわかっていても、
それは単なる可能性、仕事が約束されるわけではない…その不安も大きかったよう。
彼はアラブ系のモール人ではなくアフリカ系の黒人です。
モーリタニアでコネのないアフリカ系の人がちゃんとした職に就くことはまだ難しい状況があります。
だからこそ、自分の能力だけを見て採用してくれた今の職場には、半年とはいえ思い入れもあり、家庭の事情だけでなく、
そういう意味でも悩んだそうです。
私はモーリタニアだけにこだわることはないと思ったんだけど、
彼は「まだまだ発展途上にあるこの国、でも自分の国だから、ここで働いていくことが僕の一番の希望」とも言っていました。
もちろん、本人が決めたことなので尊重します。
「自分だけ悲劇のヒーローみたいになってないで行くべきなのに」とR君を評する人もいるけれど、
「行かない」という決意をしたR君の潔さに心撃たれたり…
同時になんだかやるせなさも残ります。
日本の友達から届いた夜桜。
見上げる空は一緒で嬉しくなります。