ピアノ連弾 2台ピアノの世界

世界中のピアノ連弾、2台ピアノ作品を演奏しています!

ブルグミュラーと70年代日本での2台ピアノ事情

2010-08-09 13:43:36 | 日記
先日お話ししたブルグミュラーのアルフレッド・バトラー編曲の2台ピアノ版楽譜を編纂されたたなかすみこさんの言葉がすばらしく、ここにご紹介します。この言葉は今後も折に触れて繰り返しご紹介して行きたいと思います。

ブルグミュラー 曲集第I集巻末の言葉
(この文章はピティナでの「みんなのブルグミュラー」でも紹介されています。)
ブルグミュラーのこの曲集は、練習曲とは思えない程情緒豊かなので既に国内でも良く広められております。
この2台ピアノ用(アルフレッド・バトラー編曲)の譜面は1935年以来アメリカのボストン・ミュージック社により出版されておりましたが、惜しくも昨年末で絶版となりました。それでこの度、新興ミュージック社と両者の新契約成立のもとに、私が解説・編著出来ます事はまことにうれしく光栄に存じます。」(1973年4月付)

第II集巻末の言葉(原文通り)
あとがき
第I集は1973年4月10日に初版(翌年8月に再版)この第II集は2年余あとの’76年に出版となりました。
第I集の出版記念音楽会の想い出について
’73年の6月25日に虎ノ門ホール(1600人席)でのプログラムは、第IーII集からの組み合わせを工夫して2人で2曲ずつをピアノ二重奏で全曲約1時間かかりました。他に第IIピアノの代わりに電気オルガンを使用、或いはバトラーの意向によって下記のように変化したもので2曲。
1)No.14 シシリアのワルツは弦楽(ヴァイオリン、ヴィオラ、セロ)付。第IIピアノの中に取り扱われる楽句が当時親しまれたクライスラー作曲のテーマ(レコードには作曲者自身のヴァイオリン・ソロとゴドスキーのピアノ伴奏で吹込まれている)が出て来て、華麗な曲になっています。
2)No. 25 お姫様の乗馬は第IIピアノのメイン・テーマをトランペットで吹きますと更に活気に充ちたマーチの表現で変化がつけられました。
編集者や奏者のアイディアで編曲したものは次の3曲(演奏時間は以上の2曲と次の3曲で30分かかる)
3)No.13 さよなら、にフリュートの助奏を入れました。
4)No.19 アベマリアには聖句をつけてコーラス(女声3部で40人参加)で歌い、リリックソプラノのadribのソロも配したので聖歌にふさわしいまことに優雅な曲となりました。
5)No. 10 やさしい花は前奏と終わりの部分でウェーバーの自由射手(讃美歌=主よみてもて)のテーマをコーラスが合流しました。
第IIピアノにはそのメイン・テーマが美しく浮きぼりにされていて、心までがやさしく香りそうなこの曲をプログラムの終わりにして弦楽 管楽器 電子オルガン コーラス等で50人の協力による大合奏で飾りました。とにかくバトラーの編曲のすばらしさと、秀れた演奏の表現と相まって、当日の発表は第成功裡に終了しました。

美しい虹の かけはしで心のつながりを!
終わりに、御家族や、お友達同志、生徒と先生が心をあわせて二重奏をして、このやさしくて美しい音楽をおたのしみください。
                      1976年4月  たなか すみこ

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なんと素敵なコンサートだったことでしょう!このコンサートの現場に居合わせていたかったです。先日陶野郁雄さんにお話しを伺った陶野恭子さんのコンサートも70年代には毎年開催されていました。こうして、少なくとも二人の音楽家が現在でも見られないような充実した内容で連弾や2台ピアノのコンサートを開催されていたことがはっきりしました。
それは、もっと大勢の音楽家が連弾や2台ピアノにきちんと向き合って演奏活動をされていたことを容易に想像させてくれます。

私たちが演奏活動を始めた時でさえ「なぜピアノ2台なのですか?」との質問が多くされたことは以前にも書きました。来年で演奏活動を開始して10年を迎える現在でも「2台ピアノは珍しい」「あまり重要ではない」との文言が多くみられることに残念な気持ちを抱えていることも書きました。でも、陶野恭子さんのお話しや、このたなかすみこさんのお言葉はアンリエット・ピュイグ=ロジェ先生の残された言葉と全く同じで私たちの活動を支えてくださいます。逆に言うと、これらの素晴らしい演奏会の実績を調べたり、認識しないまま連弾ピアノや2台ピアノ作品に取り組んでる人も多いのでしょう。どのようないきさつでこのような素晴らしい言葉が広く伝えられずに来てしまったのかはわかりません。

でも、こうしてこのブログを通じて過去の素晴らしい演奏家の残された実績をご紹介することによって一人でも多くの人が正しい情報を入手し、きちんと過去の音楽家の優れた芸術を継承して行ってくれるようになれば嬉しく思います。

今、先日演奏したダンディの「追憶」を聴きながらこの文章を書いています。
こころに響く音楽を皆さんにご紹介出来たことを喜んでいます。
独りよがりな思い込みや、不遜な思いは排除して、虚心で音楽と向き合いたいと思います。