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京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間

2011-06-27 22:12:33 | 日記

グッチ。
電池交換の依頼でした。
裏蓋のネジが開かない。
固すぎる。接着剤で固定されている。不安です。

時々起きるトラブルだ。
出荷時、時計の裏蓋のネジに接着剤を着けているのだ。

空気に触れていると固定しない、水のような液体の接着剤だ。
着けすぎるのが難点。

普通ロレックス・カルチェなど、ベルト用の固定用だ。
時計の裏蓋ネジには普通使用しない。

理由。
①時計の裏蓋ネジはは使用途中、緩まない。
②裏蓋を接着する場合、再度ネジを開ける時に大変だ。

グッチの時計には時々あるトラブルだ。
裏蓋についているネジ4本が接着剤で固定されているのだ。

ベルトについているのなら、接着剤をアルコールランプの高温で溶かしながらの作業が可能だ。
本体に直接、ランプの高熱にさらしたら、一発でクオーツ基板が溶ける。

今回は、ドライヤーを使用する。
送風温度を、強めながら本体に気を使う。
自分の指を当てて火傷をしそうになったら離す。繰り返し。

トルクドライバーを使う。
その都度ネジを緩めながらの慎重な作業です。
当然、1つのネジで試しながらの作業だ。

ネジの頭が変形するのが怖い。
ねじ山がつぶれる前に緩むのを期待する。ぎりぎりの加減だ。
「回った!」
これで、OK!

ドライヤーの作業は終了。時計ケースが暖かいうちにネジをすべてほどく。
ネジをすべてほどいて電池交換作業に集中出来る。

最後に、傷ついたネジの山をエメリー布(サンドペーパー)で磨き上げてドライバーの痕跡をなくす。
一時間ほどの後にお客様にお渡しできました。

時計師、初心者の皆様へ。

4本のネジ中、1本でも失敗したら時計の裏蓋は開きません。

4本のネジの中、1本でもねじ山を潰したら仲間に笑われます。
2度と、グッチを触らせてもらえない。

時計の悪口は禁句だ。
ネジに接着剤をつけられても、怒ってはいけません。
ニコニコと、ドライヤーを取り出して暖め始めたらいいだけの事だ。
時計への悪口は自分の不勉強をさらけ出す事。

「綺麗なオネーさんは好きですか?」のパナソニックのドライヤーが工房にあるのだ。

「なぜ?パステーオヤジにドライヤーがいるの?
親父さんはほとんどツルツル坊主だ!」

工房は見学が自由。
時々、即答できない質問もあります。



裏蓋が閉まらないエルメス。
革工芸のズッカ。革がやわらかいのが特徴。丁寧に扱うのです。

私が仕入れたモデルで電池交換できないモデルは絶対に無い!
山が高いほど裾野も広い。

年間数十億円の時計仕入れをやっていた頃は気持ちよかった。
気持ちがいい事の後には責任がー!

今では電池交換だけでも難易度の高い修理が殺到するのだ。

今日は、これでもか!シリーズでした。

裏蓋が閉まらないエルメス。

革がやわらかく切れやすい、湿気の強い今日のような日。なぜ、あなたはやってきたの?
ズッカー!

私の性格が悪くても、貧乏でも、時計修理の仕事はやってきます。

「仕事を人質にする!」業界用語。

パスティシュオヤジめ!
嫌なやつなのだが、こいつしか出来ない仕事なのでこんな田舎までやってきたのだ。

きちんとしたスーツ姿の人たちが蚊に悩まされながら待っています。
パスティシュオヤジは意外と性格が悪いようだ。

「水は冷蔵庫の中!だよー!」
冷蔵庫の中は水と麦茶だけ!薬品と間違えないようにねー!

冷蔵庫の中をのぞく人はいません。

「仕事を人質に出来るまで、悔しかったらなってみろー!」
今日は性格が悪い。ムーミン谷のミーのような一日。

明日も楽しい。
山は高いほうが、楽しい人生が送れると思う。
京都の時間は、仕返しが怖いのだ。

















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