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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

2月22日・ショーペンハウエルの偏屈

2016-02-22 | 思想
2月22日は、映画監督、ルイス・ブニュエルが生まれた日(1900年)だが、哲学者のショーペンハウエルの誕生日でもある。

アルトゥール・ショーペンハウエルは、1788年、ドイツのダンツィヒで生まれた。ドイツ貴族の家系で、父親は裕福な商人で、母親は作家だった。
アルトゥールが5歳のとき、一家はハンブルクへ引っ越した。
17歳のとき、父親が(おそらく自殺で)没し、 母親はヴァイマールへ越していった。アルトゥールはハンブルクに残って商人の修行を続けていたが、1年でそれをやめ、母親のもとに身を寄せた。
21歳のとき、大学に入学。最初は医学を専攻したが、後に哲学科へ転じた。
30歳のとき、主著『意志と表象としての世界』を完成し、翌年に出版。
32歳でベルリン大学の講師となった。そのころ、同大学では、ショーペンハウエルが大嫌いなヘーゲルが講義をしていたが、そちらに学生をとられて、ショーペンハウエルの講義にはたった5人の学生しか集まらなかった。怒った彼は、すぐに大学を辞めてしまった。
43歳のころ、ベルリンにコレラが流行し、ショーペンハウエルはそれを避けてフランクフルトへ越し、そこで生涯を過ごした。1860年9月、猫といっしょに長椅子にすわっているとき、心不全を起こし、没した。72歳だった。

ショーペンハウエルは若いころに読んだ。『自殺について』『読書について』などなつかしい。

ショーペンハウエルは、世界の根本は「盲目的な存在意志」だとして、厭世哲学を説いた。この世の中がもともと生命を求める意志で動く本能的で衝動的なものなので、この世はどうしても対立と闘争の絶えない世界となる。それを調整するために、人は国家や法律を作るけれど、それでも個人的エゴイズムが集団的エゴイズムに代わるのがせいぜいで、根本的な解決にはならない。解決方法は、意志の否定しかない。具体的には、禁欲、清貧、粗食による解脱、聖者の生活である。と、彼の思想はペシミズムで、仏教に近い。

ショーペンハウエル本人も悲観的で心配性だったそうだ。いつも、だまされないかとか、盗まれないかとか、いつも神経をとがらせていて、夜寝るときはピストルと剣をいつもそばにおいていたらしい。そうかと思うと、かんしゃくもちで、自分の本など読む人はいない、と母親に言われると、こう言い返した。
「わたしの本はあんたが書いたくずのような本が消えてなくなったころに、長く読み継がれる本なのだ」
彼の『意志と表象としての世界』は、出版後1年半で百部も売れなかったという。

「女性は、個体としてよりも、種族としてより多く生きている」
「孤独は、すぐれた精神の持ち主の運命である」
そう言ったショーペンハウエルは、熱烈な恋に落ちたこともあったらしいが、
「結婚するとは、男の権利を半分にして、義務を二倍にすることである」
として生涯独身を通した。偏屈な変わり者だったが、自分など共感する部分も多い。
(2016年2月22日)



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