1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

3月22日・マルセル・マルソーの示すもの

2014-03-22 | 芸術
3月22日は、政治学者、丸山眞男が生まれた日(1914年)だが、パントマイムのマルセル・マルソーの誕生日でもある。
自分は、マルセル・マルソーの名前は子どものころから、なぜか知っていた。ことばの壁など関係なく、世界共通、一目瞭然の魅力で、マルソーはすでに世界的に知られる人だった。

マルセル・マルソーは、1923年、仏国ストラスブールで生まれた。本名は、マルセル・マンジェル。両親はユダヤ人で、肉屋をしていた。
5歳のとき、マルセルは母親に連れられて、チャーリー・チャップリンの映画を観にいき、映画を観て感激し、マイムの世界へ進みたいと思うようになった。
第二次世界大戦がはじまると、マルセルが16歳のとき、一家はフランス中西部の街リモージュへ逃れた。戦中、マルセルはユダヤ人であることを隠すため、マルセルという苗字を名乗り、弟とともにレジスタンス運動に従事した。
彼が21歳のとき、父親がドイツのゲシュタポに捕らえられ、アウシュビッツ強制収容所に送られ、殺害された。
戦後、マルセルは23歳のとき、サラ・ベルナール劇場の演劇学校に入学。同校の同級生に、ジャン=ルイ・バローがいて、その後、マルセルが舞台劇へ進んだのに対し、バローは映画へ進み、映画『天井桟敷の人々』に主人公バチスト役で出演し、初期のムーンウォークを披露した。
マルセルは肉体の動きだけで表現する無言劇をはじめ、24歳のときには、彼のトレードマークとなる「ビップ」というキャラクターを創造。くたびれたシルクハットに、白く塗った顔、胸に横縞の入ったシャツに白いズボンといういでたちでパントマイムを演じ、パントマイム専門の劇団を立ち上げ、公演を開始した。
32歳のころからは世界各国を公演してまわるようになり、日本にも来日した。
44歳のとき、ジェーン・フォンダ主演の映画「バーバレラ」に出演するなど、映画出演をし、絵本を出版した後、 2007年9月、心臓発作のため、フランス中南部の街カオールで没した。84歳だった。
マイムの可能性を広げ、マイムを世界に広めたパントマイムの第一人者だった。

自分は、マルセル・マルソーの公演は観たことはないが、彼の弟子である英国のパントマイマー、リンゼイ・ケンプの来日公演を観たことがある。たしか、シェイクスピアの「春の夜の夢」のパントマイム版で、とてもよかった。
そのリンゼイ・ケンプにマイムを教わったのがデヴィッド・ボウイで、ボウイは1970年代前半のグラム・ロック時代の初期には、マーク・ボランの前座として、パントマイムを演じていた。だから、ボウイは、マルセル・マルソーの孫弟子にあたると思う。

人間は、しゃべることもできるし、歌うこともできる。ドラムを叩いたり、笛を吹いたりもできる。でも、あえて音を出すことを排除して、からだの動きだけで表現することで、表れてくるものがある。マルソーが追求した無言劇、パントマイムの道はその行き方だった。
いろいろできることをあえて禁じ、やることを限定することで、かえって表現が豊かになる。マルソーの行った道は、とても大事なことを教えてくれているという気がする。(2014年3月22日)



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