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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

3月13日・ローウェルの模範的人生

2014-03-13 | 科学
3月13日は、彫刻家・詩人の高村光太郎が生まれた日(1883年)だが、天文学者、ローウェルの誕生日でもある。
自分は天文学にはうといのだけれど、ずっと昔、西洋占星術をすこしかじったことがあり、その関係から、冥王星(プルトー)の発見に貢献したローウェルの名前を知っていた。

パーシヴァル・ローウェルは、1855年、米国マサチューセッツ州のケンブリッジで生まれた。彼の家は、同州ボストンの富豪ローウェル一族で、パーシヴァルには弟と妹がいた。
数学が優秀だった彼は、21歳でハーヴァード大学を卒業後、綿工場を経営した。
ローウェルは20代後半になると、極東アジアに渡り、韓国や日本ですごした。
28歳のとき、韓国政府の米国派遣使節団の顧問・秘書官となった。
彼は日本にも滞在し、日本の宗教、文化に関する著述を残した。
33歳のとき『極東の魂(The Soul of the Far East)』、
36歳で『日本の未調査分野(An Unexplored Corner of Japan)』を発表した。
37歳のとき、アメリカの学術科学学会のフェローに選ばれたローウェルは、38歳になると米国へもどった。帰国後は天文学に力を注ぎだし、天文観測に適する土地を選び、アリゾナ州フラッグスタッフに白羽の矢を立てた。39歳のとき、そこに私財を投じてローウェル天文台を作った。海抜2200メートルの高地にあるローウェル天文台には、口径が4メートル、1.1メートル、0.6メートルなど数種類の反射望遠鏡が設置され、火星の研究や小惑星アリゾナや冥王星の発見など、天文学上の数々の業績に寄与した。
同じく39歳のとき、彼は著書『日本の神秘、または神の道(Occult Japan, or the Way of the Gods)』を発表した。
平和主義者だったローウェルは、第一次世界大戦の勃発に心を痛め、体調をくずしていった。そうして大戦中、計算により未知の惑星「X」の存在を予測した後、1916年11月、フラッグスタッフの地で脳卒中のため、没した。61歳だった。

ローウェルの没後14年たってから、彼の予測にしたがって観測を続けていたクライド・トンボーにより、冥王星が発見された。冥王星の名「プルトー(Pluto)」は、ギリシア・ローマ神話の冥界の神の名によるが、ローウェルのイニシャル「P.L」もこめられているという。

ローウェルは、まったく模範的な人生を生きた人だと思う。裕福な環境に生まれ育ち、優秀な頭脳をもった者が、どう生きるか? 日々生活のためにはいずりまわっている自分のような者には、想像しづらいけれど、これは案外難問かもしれない。世の中には人生に目的を見出せず、ギャンブルに注ぎ込んで財産を失ったり、放蕩の末に事故死してしまったりする大金持ちの子息もすくなくない。でも、ローウェルは、自分の興味の向く方向へ自分の力を注ぎ込み、国際親善、人文科学、自然科学の進歩に尽くした。人間、こうありたいという見本だった。こんなできた人はなかなかいない。

ローウェルは言っている。
「想像力は、知識や正確さが前提として不可欠であるのと同じくらい、科学の進歩にとって生命線的に重要である。(Imagination is as vital to any advance in science as learning and precision are essential for starting points.)」(Brainy Quote; http://www.brainyquote.com/)
(2014年3月13日)


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