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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

9月23日・ブルース・スプリングスティーンの火薬

2013-09-23 | 音楽
9月23日・ブルース・スプリングスティーンの火薬

9月23日は、音楽ユニット「B'z」のボーカル、稲葉浩志が生まれた日(1964年)だが、米国のシンガーソングライター、ブルース・スプリングスティーンの誕生日でもある。
自分がスプリングスティーンをはじめて聴いたのは学生のころで、すぐれているといううわさを耳にして、LPレコードの「明日なき暴走」を視聴もせず、いきなり買ってきて、聴いてみたのだった。すぐれていた。良心に訴えてくる音楽だと思った。

ブルース・フレデリック・ジョゼフ ・スプリングスティーンは、1949年、米国ニュージャージー州のロングブランチで生まれた。おとなしくて内向的な子どもだったという彼は、7歳でエルヴィス・プレスリーを聴き、ロック・ミュージックに目覚め、13歳のとき、ギターを弾きだし、16歳のころからバンドを組み、ライブ活動をはじめた。
レコード会社のオーディションを受け、23歳のときにファースト・アルバム「アズベリーパークからの挨拶」でデビュー。25歳の終わりに発表したサード・アルバム「明日なき暴走(Born to Run)」が大ヒットし、彼の人気は決定的なものとなった。
34歳のときに発表した7枚目のアルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.(Born in the U.S.A.)」は世界中で大ヒットを記録し、スプリングスティーンは米国のみならず、世界を代表するロック・スターとなった。以後、活発に音楽活動を続け、アフリカの飢餓救済を目的とした「USA for AFRICA」の楽曲「ウィ・アー・ザ・ワールド」や、「アパルトヘイトに反対するアーティストたち」の楽曲「サン・シティ」に参加した。

スプリングスティーンは、こうコメントしている。
「俺は元来、孤独を好む傾向がある。金とか住む場所とか暮らし方とは関係なく、心理的な問題だ。親父もそうだった。(中略)ビールの6本入りパックとテレビさえあれば、他人と孤立できる人間はいくらでもいるさ。俺は、もともとその手の人間だったんだ。
 そんなとき音楽と出合い、自分のそういう性格を克服するために音楽にしがみついた。」(ヤン・S・ウェナー他編『「ローリング・ストーン」インタビュー選集』TOブックス)
こういう、本来陰にあるべき孤独な人間性を、無理やり前面に押しだしたアーティスト、それがスプリングスティーンなのだと思う。自分はそこにひかれる。

スプリングスティーンの歌詞は、米国の労働者階級の若者の心を刺激する、ことばの道具だてがみごとにそろっているという気がする。
たとえば「明日なき暴走」では、「アメリカン・ドリーム」「豪邸」「ハイウェイ」「孤独なライダー」「自殺マシーン」「きみの夢を守りたい」「愛」「ワイルド」「おれたちは走るために生まれた」。
いわば火薬のようなことばで、スプリングスティーンはこれを集め、調合するのが上手なのだと思う。でも、スプリングスティーンのすごいところは、そうしたことばを力をふりしぼり、心の底から誠実に歌いあげるところで、それによって歌に魂が吹き込まれる。自分などはその誠実な姿勢に打たれるのだと思う。
いまスプリングスティーンが37歳の年に出した「ザ・ライブ」(レコード5枚組、CDで3枚組)を聴きながら書いているのだけれど、やはり自分の良心は彼の手にわしづかみにされ、はげしく揺さぶられる。
(2013年9月23日)




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