1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

9月21日・H・G・ウェルズの視覚イメージ

2013-09-21 | 文学
9月21日は、ロックバンド「オアシス」のリアム・ギャラガーが生まれた日(1972年)だが、やはり英国のSF作家、H・G・ウェルズの誕生日でもある。『タイム・マシン』『透明人間』などを書き、「SFの父」と呼ばれた人である。
自分は小学生のころ、SF小説を読み、ウェルズにも親しんだ。近年では『宇宙戦争』をスティーヴン・スピルバーグ監督がトム・クルーズ主演で映画化していて、ウェルズはいまもって新しい作家だが、自分にとっては、とてもなつかしい。

ハーバート・ジョージ・ウェルズは、1866年、英国イングランドのブロムリーで生まれた。父親は庭師をした後に、陶器やスポーツ用品を売る店を経営しだし、地元のクリケットチームでプレイもしていた。ハーバートは、4人きょうだいの末っ子だった。
8歳のとき、足の骨を骨折して寝たきりになったとき、ハーバートは本を読むようになり、それが彼を空想好きの少年にし、書くことへ興味を向けさせた。
奨学金を得て、ロンドンの学校で生物学を修め、ロンドン大学で動物学の学位を取得した後、23歳のころ、私立学校の教師となった。
結核になり、英国南東部の保養地フォークストンで療養した後、ロンドンへもどったウェルズは、「サタデー・レビュー」誌の編集長と知り合い、それが縁で科学ライターとして原稿を書くようになった。雑誌に寄稿しながら、SF小説を書いた。
29歳のとき出版した『タイム・マシン』がベストセラーとなり、ウェルズは一躍売れっ子作家となった。以後、『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』『月世界最初の人間』など、だいたい1年に1作ペースでSF小説を発表していき、仏国のジュール・ヴェルヌと並び称されるSF小説のパイオニアとなった。
36歳のとき、社会主義団体のフェビアン協会に入会。そのころから『アン・ヴェロニカの冒険』『トーノ・バンゲイ』『ポーリー氏の生涯』といった社会問題を扱った風俗小説を書くようになった。
1946年8月、ロンドンで没した。79歳だった。

ウェルズの名作『タイム・マシン』を、自分は『名作英語の名文句』で取り上げた。『タイム・マシン』の冒頭の、科学について紳士たちが議論する風景もいいが、『透明人間』の書きだしも、自分はなつかしい。寒い日、吹雪のなかを、宿屋にひとりの男性客がやってくる。帽子を深くかぶり、サングラスをかけ、顔をマフラーでおおった男は金貨を出して、部屋に案内される。部屋の暖炉に火がともり、暖かくなっても、その男はなかなか帽子も外套も脱ごうとしない。あるとき宿の女将が盗み見ると、帽子をとった男は、頭のてっぺんまで包帯を巻いていた。
透明人間と聞けば、誰もが思い描く、このイメージは、ウェルズが創造したものだった。斬新、かつ、後世に長く読み継がれる古典の視覚イメージは、かくも強烈なものかと感心する。偉大なクリエイターだったと思う。
(2013年9月21日)



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