[東京 2日 ロイター] 東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)の家庭向け料金値上げを審査している経済産業省の「電気料金審査専門委員会」は9回目の議論を行ったが、廃炉が決まっていない福島県内の原発関連の費用や事故対応費用を総原価に含めるべきかどうかなどをめぐって委員の意見が分かれ、結論は出なかった。
一方、人件費については「妥当」との判断を示した。安念潤司委員長(中央大学法科大学院教授)は「次回には委員会としての考えを示したい」と述べた。
東電は5月11日、家庭向け電気料金を現行より平均10.28%値上げすることを政府に申請。その妥当性について審査専門委が議論を重ねてきたが、結論は出ておらず、東電が希望した7月1日の値上げ実施は先送りとなっている。9回目の会合では各項目の原価算入の妥当性について委員2人1組で審査にあたり、その結果が公表された。ただ、委員全体の議論でいくつかの費用の扱いで意見が割れ、溝は埋まらなかった。
<福島原発の減価償却費算入は可能か>
意見が割れているの項目の1つが福島第1原発5、6号機と福島第2原発(計4基)の減価償却費。今回の値上げの対象期間(2012─14年度)で年間平均414億円を見込んでいるが、福島県側は、東電が廃炉を決めた第1原発1─4号機だけでなく県内の全10基の廃炉を求めるなど、同5、6号機と第2原発の再稼働は非常に困難な状況だ。
東電は5、6号機と第2原発について今後10年間は稼動するかどうか「未定」扱いとしているものの、永田高士委員(公認会計士)と山内弘隆委員(一橋大学大学院商学研究科教授)による査定は、同6基の減価償却費を認める見解を示した。これに対して、松村敏弘委員(東京大学社会科学研究所教授)は「5、6号機と第2原発は、原価算定期間内に最も稼動率が低い電源であることは間違いないので、減価償却費全額の原価算入を認める見解には賛成しかねる」と発言した。
第1原発1─4号機の安定化費用(487億円)と事故の賠償対応費用(278億円)の扱いは、委員査定(永田委員と山内弘隆委員=一橋大学大学院商学研究科教授)では、「本来は保険に加入すべきだが、制度が十分に整備されておらず、東電や株主が負担することは難しい」として、原則として原価算入は妥当とした。ただ、八田達夫委員(学習院大学特別客員教授)は「誰がこの費用を負担するかと言えば、明らかに株主と債権者。株主が負担できないなら税で広く薄く国民が負担するしかない」と異論を唱えた。
<人件費、1千人規模企業との比較で妥当>
社員1人当たりの年収は、4年前の前回原価算定に比べ151万円減の556万円。この水準について専門委の査定は、1000人以上以上の企業平均(551万円)との比較で妥当との見解を示した。一方、健康保険料の会社負担率は60%からの引き下げを促している。
(ロイターニュース、浜田健太郎)
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