高濃度の放射性物質を含むごみ焼却灰の一時保管場所の選定問題で、千葉県の森田健作知事が18日に手賀沼終末処理場(我孫子市、印西市)での保管施設建設を決断した。しかし、いまだ反対の声は強く建設まで曲折が予想される。一方で、灰は増え続けており、いずれ新しい保管場所が必要になる。緊急を要する迷惑施設を整備していくという難しい課題をいかに解決するか、森田知事の手腕が問われている。(福田涼太郎)
強い反発…温度差も
「自治体の意思を無視した県の暴挙は許されない」。我孫子市議会は20日、森田知事の決定に反対する決議を全会一致で採択した。昨年12月、今年3月に続く3度目の反対決議だ。星野順一郎市長も「あまりに唐突で容認できない」と同調している。
印西市の山崎山洋市長も「最終処分場の確保が不透明であり、容認することはできない」と反発するが、同市議会は「県に丁寧な説明を求める」との決議を採択した。決議文には、森田知事が一時保管場所選定で訴えてきた「共助」について「十分理解できる」とするなど、我孫子市議会とは温度差がある。
設置の“アリバイ”
印西市議会の示した「理解」の背景には、自ら県に一時保管場所確保を依頼したという経緯がある。
流山、松戸、柏、我孫子の4市と印西地区環境整備事業組合(印西市、白井市、栄町)では、各焼却施設内で保管していた汚染焼却灰が施設稼働に影響するほど増えたため昨年8月、県に一時保管場所の確保を要望した。これを受け県は、同10月手賀沼終末処理場を提案した。
我孫子、印西両市からは反発の声が上がり、県は両市議会向け、周辺住民向け説明会を計画。しかし、森田知事の決断までの約8カ月の間に実施できたのは、印西市議会向けと周辺住民向けで各1回に過ぎない。
我孫子市議会の川村義雄議長は「手賀沼ありきで他の選択肢もない」と指摘した上で、県の説明会開催を「アリバイ作り」と切って捨てる。印西市議会も「たった1回だけの説明では納得いかない」(松本多一郎市議)と鉾を収めたわけではない。
「理解しているはず」
こうした中、森田知事は“外堀”を埋めにかかった。今月14日、細野豪志環境相に会い、手賀沼終末処理場が恒久的な保管場所にならないよう、国が責任を持って最終処分場を設置するとの言質を得た。
一方で、「共助」の精神を訴え続けた。定例県議会では、知事の判断を支持する声も上がり始めた。柏市など周辺市は「厳しい決断に感謝する」と謝意を示し、一部からは「地元側から保管場所の設置を要請したのに」と、反対派を非難する声さえ上がった。
森田知事の暴挙か、地元エゴか-。地元選出の県議は、「みんな根底では協力しなくてはならないことは理解しているはず。悪者になるのを嫌がって、受け身の立場で事が進められている印象にしたいのだろう」と、リーダーシップの欠如を指摘する。
県は7月に手賀沼終末処理場内で保管施設建設に着手し、10月稼働を目指すとしているが、反対派の理解を得られるかは不透明だ。しかも今回の施設は1年分の灰で満杯になるといい、県が再度、一時保管場所探しを迫られるのは必至だ。今後、「十分手を尽くした」と評価される段取りを踏むことができるか、森田知事は難しいかじ取りを迫られる