いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

「お父さんはいつもお母さんを殴っていました」①~受刑者が紡いだ詩の向こう側~

2019-06-08 19:40:33 | 


りょう・みちこ
東京生まれ。2005年の泉鏡花文学賞受賞を機に翌年、奈良に転居。2007年から奈良少年刑務所で、夫の松永洋介とともに授業をする。

……

上述の小説家の感動的な話がある。
長いので、6回に分けて、紹介する。

……

人生、何が起こるかわからない。一生の中でまさか自分が、刑務所にいる殺人犯や放火犯と深く関わるとは夢にも思わなかった。
そして、彼らによって人間観のみならず世界間まで大きく変わり、自分自身さえ深く癒されるとは……

ことの始まりは、2005年の長編小説で泉鏡花文学賞をもらったことだった。
これを機に、わたしの夢だった「地方都市暮らし」を実行、
デザイナーの夫ともに、親類もいない奈良に引っ越した。

まるで毎日が修学旅行のようで、あちこち見て歩いているうちに
「奈良には明治の名煉瓦建築がある」と聞いた。
それが「奈良少年刑務所だった。」

立派で風格があるのに、威圧感がない。まるでお伽の国の愛らしくて、
初めて見たとき、息を呑んだ。

奈良少年刑務所は、明治政府が西洋社会に肩を並べたくて国の威信をかけて造った「明治五代監獄」の一つ。
中を見たかったが入れず「矯正展」という一般公開日があると聞いて、
心待ちにして訪れた。
それが運命の分かれ道だった。

驚かされたのは、建物の美しさばかりでなく、
展示されていた受刑者たちの絵や詩に目を奪われた。
あまりにも繊細で、あまりにも切ない。
想像とはまるで違うものが目の前にあり、驚いている私に、
刑務所の警官が語り掛けてくれた。
「みなさん、ここには獰猛で手に負えない少年や、
何を考えているかわからないモンスターが来ているとお考えですが、違うんです。
ここに来ているのは、むしろ引っ込み思案でおとなしい子や、礼儀正しい子がほとんどなんですよ。」

(続く)


























































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