時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

それは誤解です

2009年12月10日 | フィールドワークから
今日は観音寺市での調査。伊吹島から海を隔てて一番近いのに、細部でけっこう違うところがあってちょっと戸惑いましたが、まあなんとか終了。

調査ための調整をしてくださった人は市役所の職員ですが、考古学関連の仕事もしていて学者的な面もある方。隣接地域との関係についてさまざまなヒントをくださいました。さらに「博士論文が終わったら、一般の人にわかるような概要を作ってくれ」と言われました。とてもありがたいお勧めで、ぜひやらなければ。

それから、この地域についての「平安時代の言葉が残る」という誤解をどう解くか、ということが話題になりました。調査に行った先でそのような発言を聞くこともよくあるのですが、自分の地域に誇りを持てるなら・・・といつも曖昧な反応に終始してしまいます。でも、「明らかな誤解は・・・(解いたほうがいい)」とも言われました。それはそうかも。

ではどう伝えたものか。伊吹島方言だって独自の変遷の末に現在の状態に至っているわけで、平安京都と同じ数のアクセントによる区分の「枠」を概略同じ語群に保ってはいるけど、だからと言って「古い」わけではなく、現代京都、東京などと並ぶ「現代の一方言」。「枠」が平安京都と概略同じであることも、伊吹島方言のアクセントの具体的実現形が「古い(=平安の姿を残す)」ことは保証しない。言語学の分野では常識だと思うけど、誤解なしに伝えることは難しそう。

ずいぶん前の話。雑談で、人類のアフリカ起源説の話をしたら、ある知人はこれを受け入れ難いらしく「じゃあ、私たちもかつてはああいうふうに黒かったっていうの?」とちょとアブナイ疑問をぶつけてきました。「今アフリカにいる人の肌が黒いからと言って、かつていた共通の祖先が同じように黒かったとは限らないでしょ(黒かったと思うけど)」と、とりあえずかわしました(それでとりあえず引っ込むのも問題だけど。黒くなかったならいいのか?)。

これも伊吹島の平安ことば説と同じく、起源に近い特徴を持つものは古い(この場合、人類がアフリカ起源だとすればアフリカの人たちは他より古いということになる→だからかつての人類は黒い)、という理解に基づくと思われます。アフリカの人々の遺伝子の多様性は他の地域よりずっと大きく、彼らのHomo Sapiensへの進化後の経た時間の長さを物語るとか。それはついでに、現代アフリカ人はそれだけの時間を経て今に至った現代人であって、全く「古くない」ことも示す、と理解してるのですが。

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写真は観音寺駅の前、この町の「ゆるキャラ」銭形くんです。競輪のマスコットキャラクターらしい。「観音寺けいりん」という文字の下には、「夢がある!!」と書いてあります。

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