時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

読書録2 ”Statistics in Language Studies”

2010年02月27日 | フィールドワークから
始めてみた読書録ですが、さっそく教科書。なにしろ、留学以降、楽しみのための読書は諦めてしまったので。

これは、2005年秋、アメリカに来て最初の学期、John Paolillo先生の授業の前半に使用。まだ最初の学期で、他の授業と平行してこれを読むだけでもきつかったことを覚えてます。今思えば、短いし、読みやすくて、やさしい。出たのはもうずいぶん前(1985年)だけど、効果サイズや信頼区間の重要性なんかにも触れてあって、古すぎてダメ、という気はしない。

本を見直してみると、長さの割りにかなり盛りだくさんという印象。確率論とか統計的推定の考え方という基本からスタートするけど、分散分析のランダム要因とか、細かいところまでちゃんとカバーしてある。後半にはすこし多変量データ分析(主成分分析とか多次元尺度構成法とか)まで紹介してあって、「こういうものがあるんだ」という入り口を作ってくれるのもいい。どっちかというとパラメトリック統計が中心で、ノンパラはカイ二乗+ちょっとというかんじ。音声学のような、ふつうの測定をする分野を専攻する学生にむいてるんじゃないかと。逆に、シンタックスの人なんかは、ここでは自分の研究に利用できることが見出せないかもしれない。

ところで、こういう教科書についていつも思うのですが、例は別に言語の研究じゃなくてもいいんじゃないかと。というか、身近な、自分が実際に利用するような題材は、むしろ理解の妨げになるのではという気さえする。他の分野の例を通して学ぶほうが、数式や手法のもつ意味そのものの理解が促進されるんじゃないか。で、それを自分の問題にどうやって適応するか、と考えるほうが生産的だし、楽しいような。でも、それは統計を自分の研究にすでに使っている人の言いぐさで、統計が研究にどう使えるか皆目見当がつかないという人には、この方がいいのかな。そういうことはむしろ研究論文そのものを読んだほうがいい気もするんだけど。

本に戻ると、やっぱり盛りだくさん過ぎて一つ一つの説明は手短になりがちなので、これ一冊読めば完璧、というものではない。英語で勉強する必要があるというのでなければ、主に心理学関連で、日本語で書かれた良質の統計の教科書があるので、そっち読んだほうがいいんじゃないかと。例えば南風原朝和『心理統計学の基礎―統合的理解のために』(有斐閣)読んだけど、とってもいい本だと思いました。カバーしてる範囲は"Statistics in ..."より狭いんだけど、やっぱり統計って一つの本だけでOKってことはないから。読んで、実際に利用して、またその段階に適したもうちょっと進んだのを読んで、って勉強し続けなきゃいけないものだと、思います。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿