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時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

渡辺明 『頭脳勝負』

2011年12月28日 | 読書録
日本に帰って2ヶ月ちょっと、目が回るほど忙しく、ばたばたしているうちに年末になってしまいました。その間、高知、香川、京都、石川(白峰)と研究している方言が話されている地域に行けたのは、幸いでした。

英語を教えることになったこともあり、英語を読み、聴く量はあまり減らしていませんが、日本に帰ってきたので、住むことになった小さな市の図書館にときどき通って、日本語の本も読むようになりました。いちばん最近読んだものがこれ。

渡辺明 『頭脳勝負 ―将棋の世界―』 筑摩新書

印象的だったのは、渡辺竜王本人が書いたに違いないということこと。たまに(ほんの二三箇所)分かりにくい表現があって、逆にゴーストライターによるのでないことを確信します。でも、ほとんどの箇所、文章は非常に明晰。将棋ファンならご存知のとおり、彼は、将棋の解説も明快・流麗。本当に頭脳明晰なのでしょう。

竜王は、ふだんの生活や、研究や、戦略等をかなりあけすけに話してくれる方のようで、奥さんのブログ(嫁さんはこっちのほうが好き)もふくめて、棋士としての勝負の「裏側」をかなり明らかにしてくれています。この本も同様に、渡辺竜王の人物がかなり端的に反映されているように見えます。

前半は、棋士としての生活はどんなものか、対局という勝負をどのようにとらえて日々や一年のシーズンを送っているか等が書かれており、後半は、具体的なタイトル戦などの解説になってます。著者ご本人は後半に苦労して、結果上手く書けたと思っているようですが、私はむしろ前半の方が楽しめました。とくに面白いのが、彼の棋士としての人生設計みたいなものを書いた箇所。システマティックな面も、適度に力が抜けた面もある。深淵で求道者的な羽生善治さんの発言に比べて、人間っぽくて、若々しい。後半も、終盤の秒読みぎりぎりで手が浮かんだ場面の心理(というか彼自身の認知過程みたいなもの)を披瀝してくれたところ等、読み応えあり。

この本が書かれたのは4年ほど前。その後、竜王戦3連敗4連勝もやり、現在8連覇。将棋界の中心となろうとしつつある彼が、このようにプロとしてのサービス精神を発揮して、かなりありのまま内情を見せてくれる(と見えるのですが)というのは、よいことだと思います。

ここ一年ほど、将棋を主にインターネットで観るようになりました(「+ニコニコ生放送」がいちばん好き)。将棋自体の技量はまるで低いわれわれ夫婦にとって、将棋観戦を楽しむ軸は竜王(夫婦)。彼がいなければ、われわれの興味も今ほどにはならなかったことはまちがいありません。竜王本人としても、「棋力が高くなくても将棋は楽しめるということを伝える」というのが執筆の一つの目的だったとのことで、そのことにはかなり成功しているのではないでしょうか。勝負の邪魔になってはいけないとは思うのですが、(将棋戦術の)研究書だけでなく、こういうのもまた書いてくれると、うれしい。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (カニ)
2012-12-02 16:18:02
 参考になると思うのですが。

 http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/44bbd9d2b8da953ec0f6aa96b5ad7646(渡辺明先生ご自身のブログです)。
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Unknown (管理人)
2012-12-05 12:37:47
ありがとうございました。記事に行ってみました。書いてあることは明確だったのですが、本は借りて読んだので、さて、あの新書が本人の文章だったか、は、確認できません。「書いている」とあるのだから、本人なのかな...

竜王のブログは、この1~2年読んでるのですが、古い記事まで目が届いていませんでした(本になった『明日対局。』も買ってない)。
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