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入笠山晩秋

2019年11月18日 | essay

 11月17日日曜、今シーズン最後の山を入笠山(にゅうがさやま)に定め、出立。

 行きがけに「女鳥羽(めとば)の泉」という名の湧水に立ち寄り、ステンレス製ボトル800㏄二本分の水を汲む。山行きの朝の恒例行事となっている。神社で柏手を打つわけではないが、安全な登山の願掛けのようなものである。もちろん、湧水で沸かす湯がまろやかで美味しいのは確かである。

 山を選ぶ際は、古本屋で買い求めた『信州日帰りで行く山歩き(しなのき書房)』二巻本を頼りにしている。登山ルートを精緻な鳥瞰図で示しており、大変わかり易い。立ち寄り湯の案内までついている。その本には、入笠山については往復七十分ほどの短距離コースが紹介されていたが、現地に行ってみると、ずっと下の駐車場で、登山客が車を停めている。そこからだと倍の所要時間になるが、それでも大した距離ではない。予定を変更し、そこに車を停めて歩き始める。

 途中、とてもよく整備された湿地帯に出る。11月なので何も咲いてなかったが、春夏は綺麗であろう。白樺がところどころに生えるだだっ広い湿地を眺めるだけでも気持ちよい。それにしてもいやに整備されていると思ったら、カゴメが管理していた。大資本が入るとこうも違うのかと、八島湿原の朽ちかけた歩道を思い浮かべる。ただ、人工的なまでに整備された自然と、なるべく原野のままの姿を残した自然と、どちらを好むかは人次第である。

 特に苦も無く頂上に着く。登山というよりはハイキングコースである。しかし頂上からの眺望は、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳を四方に抱き、圧巻である。

 お握りに食らいつきながら、コンロで湧水を沸かす。マルタイラーメンに、チャーシュー、刻みネギ、メンマ、ゆで卵を入れる。登山を重ねるうち、少しずつ工夫をするようになった。

 食事後、もう一度湯を沸かし、紅茶を淹れて飲む。紅茶を飲みながら、ぐるりと四方を眺め渡す。

 手早く道具を片付けると下山。

 

 

 来シーズンは、再び美ケ原から始めようかと思っている。

 

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