ゆうちゃんは、以前は、よっちゃんを恐れていた。
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ところが最近、ゆうちゃんは、よっちゃんに、ちょっかいを出す。 | |
どうやらゆうちゃんは、よっちゃんをライバル視しているらしい。 | |
あ、また。 | |
ちょっかいを出されて、よっちゃんが怒った。 | |
だが、よっちゃんにしてみれば、ゆうちゃんは格下の相手である。 | |
だから、本気のケンカにはならない。 | |
結局、まあ、仲が良いということなのだろう……。 |
「漂流の屋根から犬を救出、っていうニュースがあったね」 | |
「うむ。感動的なニュースだったな」 | |
「あれを元にして、僕、面白いお話を考えたんだ……!」 | |
「ふふふ。どんなお話かな?」 | |
「集中豪雨で、この川が、突然に増水するんだ……」 | |
おむさんは、いつものように毛布に乗っていたけれど、 | |
急に、水が押し寄せてきた! 「うわあっ!? 助けてえ!」 |
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おむさんは結局、毛布に乗ったまま、流されてしまう。 ぷかぷか ぷかぷか ← 漂流中 |
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そこへ救助に駆けつけたのが、おかか先生だ! たったったっ 「おいっ、大丈夫か!」 |
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「いま助けてやるぞ!」 | |
おかか先生のおかげで、おむさんは救われた。 「先生は命の恩人です! どうもありがとう!」 |
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「よかった! 毛布も無事だったか!」 | |
「いや~、ほんとによかった!」 | |
「この毛布は、私のお気に入りだからな」 | |
おかか先生が助けたかったのは、毛布だったのです。 | |
「 ―― というお話なんだけど、どう?」 | |
ずこー | |
「ひ、ひどい話だな……」 |
クサちゃんの所へ、 | |
ゆうちゃんが近付いて行った。 とにかく好奇心旺盛なゆうちゃんなのだ。 |
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クサちゃんは、怒っている。 ゆうちゃんを近付けたくないらしい。 |
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ちょっと気圧されて、耳を伏せてるゆうちゃん。 |
「今日は、雨降りだ……」 | |
しとしと びちゃびちゃ | |
「雨に備えて、おかか先生がレインコートを買ったそうだけど……」 | |
「ほんとかなあ? 先生の、いつもの冗談じゃないかな?」 | |
「ふっふっふ、ほんとだとも……」 | |
「あっ、おかか先生!?」 | |
「見ろ、これだ!」 | |
「うわああっ! ほんとだあー!!」 |
春を告げる、菜の花が、 | |
この日、遂に、開花した。 |
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「う~む! 遂に咲いたか……!」 | |
「ゆうちゃんに、教えてやろう」 すたすた |
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「おい! 菜の花が咲いたぞ! いよいよ春だ!」 | |
「次に咲くのは、桜だな……!」 | |
「サクラって、なあに?」 | |
「んっ!? 桜を知らんのか!?」 | |
「だって僕、まだ一歳にならないんだもん」 | |
「ああ、そうか……。桜ってのはな、綺麗なピンクの花さ」 | |
「そうなんだよ、ゆうちゃん!」 | |
「え?」 | |
「綺麗なピンクの鼻なんだよ!」 | |
「ふーん! それが桜かー!」 | |
ずこー | |
「ふふふ。ゆうちゃん、また一つ、おりこうになったねー」 | |
「こらこら、子供に嘘を教えるな……」 |
「おかか先生、風邪は治りましたか?」 | |
「ありがとう、もう平気だよ」 | |
「食欲も出て来たし」 | |
「薬も飲んでるから、大丈夫!」 | |
「でも、治り際が肝心ですよ。無理しないで下さいね」 | |
「大丈夫さ。よし、ひとつ元気のいい所を見せてやるか」 | |
「いいか。久し振りに、私の華麗な走りを見せてやろう」 | |
たったったっ | |
すたたたたーっ | |
ずどどどど | |
ばぴゅ~ん | |
「おお! 凄い走りだ!」 | |
「体力が、完全に回復しましたね!」 | |
「い、いや、ちょっと待て……」 よろよろ よろよろ |
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どてっ | |
「だめだ……疲れた……」 | |
「うあっ!? だ、大丈夫ですか先生っ?」 | |
「大丈夫だ……だが……オチは任せたぞ……」 | |
「えっ? 僕がオチを?」 | |
「そ、そんな……急に言われても……」 | |
「よーし! とりあえずグハーで決めるか!」 | |
「えっ、おむさんのグハー!?」 | |
「ぐはあーっ!」 | |
「す、凄いピンボケだ!」 | |
がくっ |