四匹の捨て猫

2010年10月14日 16時39分00秒 | 一期一会

 

 

  この日 ――

私はいつものように、おかか先生たちと一緒に過ごしていた。

と、そこへ、地域の子供たちが数人、やって来た。
  私に向かって子供たちが口々に述べる内容は、必ずしも明瞭ではなかったが、とにかく、駐在所に仔猫がいるらしい。
  私は、その駐在所のお巡りさんとは、顔なじみである。

最近はぴーちゃんの件で、また、以前はキジトラ兄弟の時にも、お世話になった。

普段も、毎日のパトロールで、私や猫たちを見守ってくれているのだ。
  さて、急いで行ってみると ―― 駐在所の前には、わらわらと人だかりがしていた。

地域の子供たちや、ご婦人たちである。
お巡りさんに事情を聞くと ――

仔猫が四匹、捨てられていたという。
四匹とも、ぴーちゃんと同じくらいの週齢で、明らかにまだ乳飲み子である。
  要するに、ぴーちゃんの時と同じパターンなのだ。

引き取り手がなければ、翌日には、センター送りになる……。
 

私は、ぴーちゃんの保護預かりを終えたばかりなので、正直なところ、困ってしまった。

預かるのは、不可能ではないが ―― しかし、仔猫(乳飲み子)を預かれば、私の生活は、またしても、崩壊してしまう。

(ぴーちゃんのことがあった直後なので、お巡りさんは、今回は気を遣って、私には知らせなかったという。)

  だが、更に聞いたところでは ―― 地域の人々の連携プレーにより、預かりボランティアさんにコネのある人が、駐在所に来ることになっているらしい。

しかし、いつになったら来るのやら。
  さて。

駐在所に集まっている子供たちは、仔猫たちを見たり触ったりして、珍しがるやら、喜ぶやら。かわるがわる抱いたりして、大騒ぎである。
  その中に、ひとり、しくしく泣いている女の子がいた。

聞けば、その子は、仔猫の発見者だそうな。

「飼いたい」と親に頼んだけれども、ダメだと言われて、泣いてしまったらしい。
  たいへんキザな言い方で、なんとも面映ゆいのだが ――

私は、その少女の涙を見て、決心したのである。

「仔猫を死なせるわけにはいかない、どうしてもダメなら、また預かろう」と。
  そうこうしているうちに、預かりボランティアさんにコネのある人が、やって来た。

だが、預かりボランティアさんとの連絡には、しばらく時間がかかるそうだ。
 

私は私で独自に、いつもお世話になっているボランティアさんに電話して、協力を仰いだ。

その上で、「どうしてもダメなら私が預かります。後ほどまた参ります」とお巡りさんに言い置いて、駐在所をいったん離れた。

  数時間後 ―― 私は再び、駐在所を訪れた。
 

四匹の内、一匹は、近所の家に貰われた、とのこと。

残る三匹は、ボランティアさんが預かって、里親探しをしてくれる、とのこと。

(私とは全く面識のない、遠方のボランティアさんらしい。)

 

よかった、よかった。

私は胸をなでおろした。

  一つには、もちろん、仔猫の命が救われたので。

もう一つは……保護預かりによって私の生活が崩壊せずに済んだので。
  しかし、四匹の仔猫をまた育ててみたいという気持も、やはり、あった。

だから、ちょっぴり、残念だった。