この日 ―― 私はいつものように、おかか先生たちと一緒に過ごしていた。 と、そこへ、地域の子供たちが数人、やって来た。 |
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私に向かって子供たちが口々に述べる内容は、必ずしも明瞭ではなかったが、とにかく、駐在所に仔猫がいるらしい。 | |
私は、その駐在所のお巡りさんとは、顔なじみである。 最近はぴーちゃんの件で、また、以前はキジトラ兄弟の時にも、お世話になった。 普段も、毎日のパトロールで、私や猫たちを見守ってくれているのだ。 |
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さて、急いで行ってみると ―― 駐在所の前には、わらわらと人だかりがしていた。 地域の子供たちや、ご婦人たちである。 |
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お巡りさんに事情を聞くと ―― 仔猫が四匹、捨てられていたという。 |
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四匹とも、ぴーちゃんと同じくらいの週齢で、明らかにまだ乳飲み子である。 |
要するに、ぴーちゃんの時と同じパターンなのだ。 引き取り手がなければ、翌日には、センター送りになる……。 |
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私は、ぴーちゃんの保護預かりを終えたばかりなので、正直なところ、困ってしまった。 |
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だが、更に聞いたところでは ―― 地域の人々の連携プレーにより、預かりボランティアさんにコネのある人が、駐在所に来ることになっているらしい。 しかし、いつになったら来るのやら。 |
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さて。 駐在所に集まっている子供たちは、仔猫たちを見たり触ったりして、珍しがるやら、喜ぶやら。かわるがわる抱いたりして、大騒ぎである。 |
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その中に、ひとり、しくしく泣いている女の子がいた。 聞けば、その子は、仔猫の発見者だそうな。 「飼いたい」と親に頼んだけれども、ダメだと言われて、泣いてしまったらしい。 |
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たいへんキザな言い方で、なんとも面映ゆいのだが ―― 私は、その少女の涙を見て、決心したのである。 「仔猫を死なせるわけにはいかない、どうしてもダメなら、また預かろう」と。 |
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そうこうしているうちに、預かりボランティアさんにコネのある人が、やって来た。 だが、預かりボランティアさんとの連絡には、しばらく時間がかかるそうだ。 |
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私は私で独自に、いつもお世話になっているボランティアさんに電話して、協力を仰いだ。 |
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数時間後 ―― 私は再び、駐在所を訪れた。 | |
四匹の内、一匹は、近所の家に貰われた、とのこと。 |
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よかった、よかった。 |
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一つには、もちろん、仔猫の命が救われたので。 もう一つは……保護預かりによって私の生活が崩壊せずに済んだので。 |
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しかし、四匹の仔猫をまた育ててみたいという気持も、やはり、あった。 だから、ちょっぴり、残念だった。 |