学校によって、また、専門によって、異なることであろうが、大学院も博士後期課程になると、いわゆる授業(講義)というものはない。 | |
私的な研究会やら学会雑務やらは別として、学部での「授業」に相当する公的なものとしては、週に一度、「研究指導」があるだけだ。 | |
人数もまちまちだが、一般に十数人から数人というところだろう。修士の学生や非常勤講師の先輩が非公式に参加する場合もあるが、指導教授一人に対して学生も一人、ということもある。実際、そうなったことがある。 | |
一週間、ただひたすら勉強して、少しでも研究を進める。そして週に一度、研究室を訪れ、指導教授の前で、一対一で、発表し、質疑を受け、指導してもらう。そんな生活を続けた年もあった。 | |
そんな研究指導の後は、くたくたになる。学校近くの喫茶店で先生にお茶をおごって貰うのが常だが、その後、学校から駅まで、(バスにも地下鉄にも乗らずに)歩いて帰るのが、微かに楽しかった。途中に公園があり、野良猫に会うこともできる。 | |
暗い雲が低く垂れ込め、今にも雪が降りそうで、刺されるように寒い冬の日、疲れ果てた私がその公園のベンチに座っていると、仔猫が膝に乗ってきた。 | |
私は仔猫を抱いたまま、震えながら、一時間ほど、一緒に過ごした。 | |
だいぶ前のことだが、何かにつけて、思い出す。書いておきたかったので、書いておくことにした。 文章は読まずに写真だけ見ているという読者には気の毒だが、写真はない。当時もちろん、カメラなんぞ持ち歩く趣味はなかったし、そんな余裕もなかった。 |