釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

日米のマネタイゼーション

2019-11-18 19:19:17 | 経済
先月末に日米それぞれ行われた中央銀行の会合後、いずれもが国内経済に問題はないとの趣旨を発表している。しかし、米国では大型小売店の閉鎖や自動車産業の大規模な人員削減が行われており、日本でも都市銀行や地方銀行のリストラ・合併、小売チェーン店の多数の店舗閉鎖が行われており、今月8日の日本経済新聞は、「上場企業、2期連続で減益へ」と題する記事を載せている。米国でも企業の純利益は2012年をピークに以後、波を打ちながら低下して来ている。すでに日米ともに実体経済は後退して来ており、それ故に、米国中央銀行は10月も金利を下げざるを得ず、しかも「量的緩和QEではない」量的緩和をせざるを得なくなった。また、日本もいまだにマイナス金利と、縮小したとは言え、相変わらず量的緩和を継続せざるを得ない。しかも、米国は日本に倣って、市中金融機関が購入した新規国債をその日のうちに中央銀行FRBが購入している。1913年成立の連邦準備法は、中央銀行による政府発行の国債の直接購入を禁じている。日本でも財政法第5条が、日本銀行による国債の直接購入を禁じている。日本銀行はわざわざホームページで「中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛らなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがある」「これは長い歴史から得られた貴重な経験であり、わが国だけでなく先進各国で中央銀行による国債引受けが制度的に禁止されているのもこのためです。」ともで書いてある。わずか1日や数日で市中銀行から国債を購入すれば、これらの法に触れないと考えている。しかし、これこそまさに役人の形式主義であり、実態は中央銀行による国債の直接引き受けそのものだ。日本では、1931年の大蔵大臣高橋是清による日本銀行の国債直接引き受けがよく知られている。これにより、日本は他国に先駆けて、世界大恐慌から抜け出せたされている。しかし、まさにこの高橋是清による日本銀行の国債直接引き受けが、その後の軍備拡張、太平洋戦争へと発展させた。まさに日本銀行のホームページに書かれているように「政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛らなく」なった結果である。そして、現在、日米政府は年を追って、財政拡大、財政赤字拡大を行っている。中央銀行が国債を引受け、政府の財政赤字を埋めることをマネタイゼーションMonetizationと言う。米国の共和党、民主党共に現第金融論MMT支持者がいる。MMTは自国通貨で発行される政府国債は、インフレを生じさせなければ、無限に発行可能だとする。米国のパウエルFRB議長も日本銀行の黒田総裁も、このMMTを批判している。にもかかわらず、彼らが実際に行っているのは、まさにMonetizationであり、MMTである。国債と言う政府債務も含めて、全ての債務は将来の先取りでしかない。大規模な先取りは国民の将来世代が背負わされる。歴史的には、全ての債務の合計がGDPの90%を超えると、経済成長は損なわれる。現在、米国の合計は330%、EUの合計は450%、日本はGDPに対して600%を超える債務を抱えている。これだけ債務が巨大になれば、金利を下げるしかない。まして、日欧のマイナス金利などは、国債を買った中央銀行が政府に金利を払うと言う異常な状態を続けざるを得ない。長期間の低金利の見本は、英国である。第2次大戦で巨額の政府債務を抱えた戦後の英国は、低金利を長年続けることで、債務を抱える政府を助けて来たが、経済は凋落し、世界最大の経済大国が、今では5位にまで低下しており、1976年には経済破綻して、IMFの支援を受けねばならなかった。日本が果たした高度経済成長を、韓国や中国は日本以上に短期に達成している。過去の歴史で起きたことが、現在はさらに早いスピードで起きている。歴史上かってない現在の巨大なバブルと債務はとても持続不可能だ。

最高のバブルと債務

2019-11-16 19:14:17 | 経済
14日からの寒波が続き、北海道は最低気温が氷点下になっている。今日の釜石は雲の多い晴れとなったが、最高気温は11度で、外はやはり寒く感じられ、せっかくの紅葉も出かけて見る気がしない。明日の方がよく晴れる予報になってはいても、気温は今日と変わらないようだ。庭でたくさん花を咲かせている菊の花に蜜蜂たちが群がっていた。近所の家の庭先の石楠花にもう蕾が出ていた。 昨日の米国株式市場では、主要3株価指数が最高値を更新した。VIX恐怖指数の先物でも過去最高の売りとなっている。名前の通り、金融危機や株式の暴落があれば、大きく買い込まれ、指数は上昇するが、先物の記録的な売りで、指数は下がっている。この指数の過去最低値は2017年11月の8.56であるが、昨日は12.05で終わっている。2008年10月のリーマン・ショックでは89.53にもなっていた。つまり、現在、金融市場は極めて楽観的になっていると言うことだ。金融市場の楽観論の根拠は、米中間の貿易戦争の進展具合と中央銀行FRBの金融緩和に対する姿勢だ。実体経済の小売店の閉鎖や製造業の人員削減、農業の壊滅的な打撃などは関係ない。米中貿易戦争について、1971年にニクソン政権の国務長官として、米中和解を図ったヘンリー・キッシンジャーHenry Kissingerは、14日のニューヨークで開かれた米国中米関係委員会が主催するイベントで、「A catastrophic conflict between America and China that will be “worse than world wars” is inevitable unless the two sides sort out their differences.(両者が違いをうまく対処しない限り、「世界戦争よりも悪い」アメリカと中国の壊滅的な衝突は避けられない)」と、警告している。確かに米中は、一部で合意しているが、この貿易戦争の根は深い。先端技術やドルの基軸通貨としての地位などが、米国にとって左右される問題でもある。国際取引で主要な通貨として使用される通貨、基軸通貨は歴史的に、オランダ、英国と変遷し、米国が手にした。しかし、金(ゴールド)の裏付のない現在の基軸通貨は、いくらでも印刷可能である。他国が国際決済で使用するドルまで印刷しなければならない。そして、海外へ債務を増やしても、容易に支払い可能となる。実際に、膨大な海外債務を抱えても、基軸通貨の特権で。現在は、とりあえずドルの価値を維持出来ている。しかし、実際には、ドルの価値は印刷すれば、するほど低下しており、米国も承知しているために、なお、中国の経済的な台頭を恐れている。かっては、日本も米国から恐れられていたが、今では軽くあしらわれる存在になってしまった。金融市場が注意を向ける金融緩和については、超低金利や量的緩和は確かに金融市場にマネーの増大をもたらすが、一方で、債務も膨らませる。世界の大手民間金融機関が参加する国際的な組織であるワシントンの国際金融協会IIFは、定期的に世界の債務を公表している。このIIFが14日、最新の世界の債務を発表した。それによると、世界の総債務は2019年末までに過去最高の255兆ドル、世界のGDPの330%に達する。2018年末の243兆ドルから12兆ドル増加し、地球上の77億人のそれぞれが32500ドルの債務を抱えることになる。今年12月31日時点で予想される債務は、家計債務47.9兆ドル、非金融企業75.7兆ドル、政府70兆ドル、金融法人61.7兆ドルとなる。昨日のバンク・オブ・アメリカBOAは、米国では、リーマンの崩壊以来、政府債務は30兆ドル、企業債務は25兆ドル、家計債務は9兆ドル、金融負債は2兆ドル増加したと発表している。世界の債券市場は2009年の87兆ドルから115兆ドル以上に膨らみ、国債が市場の47%を占めるに至っている。新興市場の債務は、過去1年間で5兆ドル近く増加し、過去最高の71.4兆ドルとなった。対前年比で負債の増加率が最も大きい3つの新興国はチリ、韓国、アルゼンチンだ。また、中国の場合は、企業債務の多くが国有企業であるため、実質的に政府債務である。米国も日本も現在が史上最長の「景気拡大」だとされている。しかし、その「史上最長の「景気拡大」」は、中央銀行の異常な金融緩和と異常な政府債務に支えられたものでしかない。2008年を超えるバブルと2008年を超える債務、いつまで持続できるだろうか。米中の戦いも容易には収まらないだろう。
束の間の紅葉

健康を維持するための自然回帰

2019-11-15 19:17:10 | 科学
人はあくまで動物であり、生存のためには、動物であることを忘れることは出来ない。46億年前に地球が誕生して、その地球に40億年前に原始的な生命体が誕生した。以来、生命は進化して来たが、その進化はまさに生存のための進化であり、微小生命体が合体することで、効率的な生存を可能とした。微小生命体が合体し、一つの細胞が形成され、その細胞がまた複数の細胞と合体する。今では、人も他の動物も微小生命体の存在なくしては生存出来ない。人の身体には全身にマイクロバイオームと呼ばれる細菌群が分布し、人と細菌群が互いに生存するために協力し合っている。皮膚の常在菌は、皮膚の健康を守り、外界と直接接する消化管の細菌は、人の身体を有害菌などから守ってくれているだけではなく、人の細胞の遺伝子までコントロールしていることが明かになっている。第2の脳と言われる腸は、人の精神状態まで左右する。また、様々の体外からの侵入者を排除する免疫にも重要な働きをしている。長い動物の進化の過程で、こうした細菌群はもはや動物の生存に欠かせない存在となった。しかし、人はいつの間にか、動物であることを忘れ、忘れるだけでなく、人に不可決な細菌群の生存を危うくしてしまった。抗菌剤の使用は無論、食品添加物や抗生剤、抗癌剤などで、腸内細菌群のバランスを崩してしまった。アレルギー疾患や精神疾患、一般的な成人病、癌なども腸内細菌群の乱れから来ることも明かになっている。人の身体の表面である皮膚を守る細菌も、抗菌剤が溢れることで、生存が脅かされ、逆に、皮膚が守られなくなっている。そして、何より重要な食品が、もはや人の作った化学物質まみれになり、腸内細菌群のバランスを崩してしまっている。一度崩れた腸内細菌群のバランスは容易には回復しない。薬剤への依存傾向を強めた現代人は、気付かないうちに自らの身体を蝕んでいる。安易に抗生剤に頼ることで、腸内細菌群の一部を死滅させている。米国オハイオ州立大学の最近の研究では、抗癌剤の副作用も腸内細菌群のバランスの乱れから来ていることが明かになった。一方、運動、特に有酸素運動は腸内細菌群の多様性をもたらすことも分かって来た。米国ハーバード大学などの研究では、エリートアスリートの腸内には、運動能力を高める細菌までがいることまで分かった。人間は700万年もの間の自然環境での生存に適応した身体に進化した。それを100年も満たないわずかな期間に環境と食物を人工的なものに急変させた。増え続ける病気は、そんな環境の激変に対する細菌群の拒否反応だと見ることが出来る。日々の食事を出来るだけ自然なものに変え、意識的な運動を日々行うことで、少しでも身体に常在する細菌群のバランスをよくすることが可能となる。自分の身体は自分だけのものではない。細菌群のための身体でもある。
近所の紅葉

米国金利

2019-11-14 19:11:49 | 経済
昨夜の米国株式市場はさらに史上最高値を更新した。中央銀行が実質的な量的金融緩和を行い、低金利の貸付ではあるが、市中金融機関を通じて、世の中にマネーを流し込んでいる。そのマネーは産業への投資に向かわず、株式などの資産価格の押し上げに向かっている。中央銀行FRBのパウエル議長が、昨日の上下両院合同経済委員会で、米経済の「持続的な拡大」を予想していると述べたことも株価の上昇に寄与しているようだ。米国財務省は1ヶ月前に、2019会計年度に米国の財政赤字が前年比26%増の9億8400万ドルに達し、2012年の1.1兆ドル以来最大の年間赤字に達した、と報告したが、昨夜は、2019会計年度に米国の財政赤字が前年比26%増の9億8400万ドルに達し、2012年の1.1兆ドルから最大の年間赤字になり、10月の赤字としては5年で最大になることを報告している。また、FRB傘下のニューヨーク連邦準備銀行は、昨日、家計債務が第3・四半期に920億ドル(0.7%)増加し、過去最高の13兆9500億ドルに達した、と発表した。そして、ローン支払い延滞の比率は、第2・四半期の4.4%から4.8%に上昇し、初期の返済遅延が増えたと言う。株式市場の上昇と、政府や家計の債務増大は金融緩和と言う車の両輪である。中央銀行が通貨を大量に印刷すれば、金融界の金融資産は膨らみ、政府や国民・企業の債務は増大する。2008年の金融危機で、弱体化した金融機関を救済するために、大量の通貨を市中金融機関に流し込んだことで、結局は、再び、2008年の金融危機の原因となった状態を、一層規模を大きくして作り出してしまっている。「Everything Babble」であるため、どのバブルが弾けてもおかしくはなく、どのバブルが弾けても、全てに連鎖する。昨日のFRBパウエル議長の議会での証言では、金利のさらなる引き下げは必要ないとしている。しかし、これまでのFRBの動き方からすれば、株価の動き次第であると思われる。貿易戦争とは通貨戦争であり、その通貨戦争は、まさに金利引下げ戦争である。金利を下げて、自国通貨安を図る戦いである。自国通貨が安くなれば、自国製品の輸出で、価格競争力が生まれる。安い製品の方を海外が買ってくれる。しかも、日本のように、自国通貨を安くすれば、販売量は同じでも、為替差だけで利益が生まれる。つまり、米国では、製造業などの実体経済主体にとっては、金利引下げー通貨安の構図が有利となり、金融経済にとっても、国内だけを見れば、金融資産の上昇につながる。ただ、グローバル化した米国経済にとって、また、海外に米国債を買ってもらわねばならない米国政府債務にとっては、自国通貨価値が高い方が望ましい。米国通貨ドルの基軸通貨としての地位を守るためにはドルは強くなければならない。つまりドル高が望ましい。まして、これまで通貨を凄まじい量発行して来たため、実際には、ドルの価値はかなり低下している。それを隠すために金価格を抑え込んで来た。米国金融界にとって、世界的なドル覇権を維持したいが、そのためには、金利は高くなければならない。しかし、金利上昇は、国内的には金融資産を下げることにつながる。幸いなことに、世界の主要国が米国以上に金利を引き下げており、米国金利を相対的に高目に維持し得た。しかも、国内金利としては、米国史上でも稀に見る低さだ。FRBが実質的な量的金融緩和を再開したことで、しばらくは米国発の金融危機を先送り出来るかも知れない。
風に吹かれて

大統領と中央銀行FRB

2019-11-13 19:15:27 | 社会
米国大統領は不動産商人であり、基本的には戦争を嫌う。しかし、米国には1961年1月、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が退任演説で初めて指摘した軍産複合体(Military-Industrial Complex)が存在し、指摘通りに、その後、巨大化し戦争がどこかで維持されて来た。従って、本来戦争を嫌う現在の米国大統領は、この軍産複合体とも陰で戦わねばならない。彼の好戦的な態度はむしろ意図的なものだ。来年11月には大統領選挙があり、それを考え自分を支持する層のために貿易戦争を仕掛けた。国内の産業労働者や農民の支持を得るためだ。国内産業や農業を保護するために、海外の製品や農産物に関税をかける。また、国内企業の輸出力を高めるためにドル安を主張する。ドル安になれば貿易での価格競争に有利になる。ドル安にするには金利を引き下げる必要がある。大統領が執拗に中央銀行FRBに金利引下げを迫る理由だ。しかし、ウォール街の金融界は逆にドル高を望む。彼らの資産は、まさにドル資産である。金融界が法に違反してまで金(ゴールド)を先物市場で押さえ込んで来たのは、ドルの反通貨である金の上昇は困るからである。大統領は来年の選挙のためには、何としても経済の好調を維持したい。金融危機など絶対に避けたい。一方、100%民間企業でしかない米国の中央銀行FRBの大株主は金融界である。当然、FRBは国益よりも金融界の思惑を優先する。この対立が大統領をツィッターで、FRB議長を口汚く罵らさせたのだ。「根性なし。判断力なし。展望なし!」、「FRBは相変わらず何もしていない!」、「パウエルFRB議長と中国の習近平国家主席のどちらが米国に対するより大きな敵なのか」などなど。大統領は自分が引き起こした貿易戦争が国内景気を悪化させていることも承知だ。また、国内で巨大なバブルが発生していることも分かっている。しかし、どちらもともかく自分の大統領選挙まではさらに悪化させたくはない。一方、金融界を代表するFRBは、実体経済よりも金融経済である金融バブルの崩壊を安易には招きたくない。これらの思惑もあって、昨年まで上げて来た金利を今年に入り三度も下げた。金利を下げることで、バブルが弾けるのを避ける。とは言え、その金利の引き下げが、金融市場には歓迎されて、バブルがさらに膨らんでいる。FRBの実質的な量的金融緩和もさらに金融市場に楽観論を生み出させた。こんな中で、超の付く富裕層は、世界の三大投資家たちがやっているように保持していた株式や債券などの金融資産を手放し、現金で保有し始めている。世界のトップの投資家や超富裕層が臨戦体勢に入っている。いつ金融危機が訪れるか分からないが、そう遠くなくそれがやって来ると考えているようだ。金融危機が到来すれば、暴落した金融資産を買い込むための現金である。彼らは過去何度か起きた金融危機で、こうして資産を膨らませて来た。
近所の庭先の柿の木

危機を先送りし、延命を続ける米国

2019-11-12 19:18:55 | 経済
9月17日、銀行間のわずか1日だけの担保付き貸借市場(レポ市場)で、金利が10%まで急騰した。この超低金利の時代に10%もの金利である。これは、10%の高金利でしか、担保があっても資金を貸してくれる金融機関がないことを意味する。メディアは法人税納入や国債入札での決済が重なったためであると報じたが、これが原因であれば、まさに米国中央銀行の介入はごく短期で治ったはずである。しかし、その後の経過では、FRBは連日、1日当たり最低750億ドルをレポ市場に供給し、これを来年1月まで続けると発表した。しかも、それだけではなく、10月15日から毎月600億ドル規模で短期国債を購入し、それを来年の4−6月期まで継続するとまで発表した。銀行間の貸し借りで、容易に資金を借りられない金融機関の存在が一時的なものであれば、このレポ市場へのFRBによる介入だけで済むはずである。レポ市場で資金を借り受けた金融機関は、翌日には、その借りた資金を返済し、担保の債券を取り戻す。一時的な応急処置で済むはずである。しかし、その応急処置を連日繰り返すだけでなく、短期国債の購入まで続ける。いかに、金融システムに資金不足が起きているかを現している。FRBが実質的な金融緩和を再開せざるを得ないほど金融システムに異変が起きている。2008年以来、中央銀行が金融緩和を行うことで、株価を上げて来た。現在のFRBの行っている「金融緩和」でも、やはり株価を押し上げている。史上最高値圏に至っている。その一方で、信用度の低い金融機関が資金枯渇に陥入り、その状態が続いているのだ。国債通貨金IMFは世界の公私合わせた188兆ドルの債務や19兆ドルに及ぶ社債に対し、警告し、今月には、米国金融安定監視評議会が、11兆ドル規模の住宅ローン市場の資金の流れにリスクがあると警告している。米国の現在の住宅市場では、信用度が低く、リスクが高い個人へのローン分野に、証券会社やヘッジファンドなどの、いわゆるシャドーバンクが進出している。シャドーバンキング業者の多くが資金的に不安定であることが、昨年から指摘されていた。2007年のサブプライム・ローン危機と酷似する状況が生まれている。2008年以降の主要国中央銀行による異常な金融緩和は、単に、金融危機を表面的に覆い隠し、弱体化した巨大金融機関を延命させて来た。今またFRBは、それを行い、延命に過ぎないことを繰り返している。延命すればするほど、債務拡大や金融システムの弱体化を推し進める。もちろんバブルも拡大させる。中央銀行は、すでに金融緩和が限界に来ていることを認識しており、不況時には財政政策も重要だと言い始めている。つまり政府債務をさらに拡大させる方法で、不況に対処すべきと考えているようだ。金融システムの膿を押し出させることを避け、膿の表面に塗り薬を付けて、表面だけを繕っている。問題は何も解決していない。日本が何故、「失われた30年」と言う停滞した経済になったか。超長期の異常な金融緩和で、表面だけを繕って来たからである。弱体化した企業は、救済ではなく、潰すべきなのだ。経済社会に新陳代謝が行われないために、長期の低迷が続いている。中央銀行の金融緩和は、国民から政府や富裕層への所得移転であり、経済で最も基本となる消費の源泉を細めている。低迷するのも当然である。今まさに、米国も欧州も「日本化」しようとしているようだ。次の金融危機で、それが確実に定着するだろう。その時、日本はさらに「日本化」を深めることになる。
百日紅の紅葉

格差が米国を分断させつつある

2019-11-11 19:19:13 | 社会
新自由主義とともに世界に広がった、いわゆるグローバリズムは、長引く金融緩和の後押しを得て、主要国に格差を拡大させて来た。格差が先鋭的に認められるのが米国である。ブルームバーグによれば、米国ではトップ1%の資産が35.5兆ドルで、次の9%が42.6兆ドル、続く40%で36.9兆ドルの資産を保有しており、底辺50%はわずか7.5兆ドルである。個人資産総計122.5兆ドルのうちトップ1%が30%を保有している。底辺の50%はわずか6%しか保有していない。米国は日本より多くの国民が株式を購入しているが、その株式でも最も裕福な10%が株式総額の84%を保有しており、直接保有する株式に投資信託を加えると、93%の株式を保有していることになる。一方、債務を見ると、トップ1%は総債務のわずか6.7%しか占めておらず、次の9%が20.9%で、残る90%が72.4%を占める。こうした格差は米国でもやはり年齢層で拡大しており、第二次世界大戦の終わりから1964年の間に生まれた米国のベビーブーマーは、現在、ミレニアル世代(2000年代に成人あるいは社会人になる世代)の11倍の富を保有している。ミレニアル世代は、日本でも実質賃金が低下する中で仕事をしている。こうした世代間の格差の拡大の中で、ミレニアル世代は声高に格差是正を求めることはないが、今年初めのギャラップGallupの調査では、米国人の43%は現在、何らかの形の社会主義が良い、としている。また、ハリスHarrisの世論調査では、米国人の10人に4人が資本主義よりも社会主義を好んでおり、この傾向は若者に特に顕著になっている。ギャラップの別の調査では、2010年には、18歳から29歳の人々の68%が資本主義を好ましいとしたのに対し、社会主義を好ましいと答えたのは51%であったが、2018年には、同じ年齢層が、社会主義に対しては変わらず51%であったのに対して、資本主義に対しては45%に急低下している。さらに、今年の初めに行われたYouGovの世論調査では、ミレニアル世代の70%とZ世代(1990年代後半から2000年生まれの世代)の64%が社会主義者に投票すると答えている。若い世代が社会主義を支持する要因の一つは、歴史への無知があると言う。彼らにとっての社会主義はスターリンではなく、スカンジナビア、北欧の社会だと言う。彼らの歴史への無知は深刻なようで、基本的な市民権テストに合格できるのは米国人の3人に1人しかいない。45歳未満の受験者では19%しか合格しない。南北戦争中に軍隊を率いたのはドワイト・アイゼンハワーだと答え、アウシュヴィッツやホロコーストを知らず、 U.S. News and World Reportによるアメリカのトップ50の大学の調査では、米国憲法を誰が書いたかを知っているのはわずか23%であった。米国では、大学時代の学生の間で、社会主義への支持がかなり高いが、実際に、政府が管理する経済を支持するかどうか、尋ねると、72%が自由市場のためだと答えている。本来の社会主義経済である政府管理の経済を支持したのは49%であった。米国の大学は多くが私学であり、授業料を上げ続けている。このため、学生の70%がローンを借りざるを得ない。平均で3万ドルである。2015年の米国の世論調査によると、社会主義に対する支持は、高校卒業者の48%、大卒の62%、大学院の学位取得者の78%まで学歴とともに増加している。また、米国では、1984年の時点で、大学教員の39%が左派/リベラル、34%が右派/保守派であったが、 1999年までに大きく変わり、現在は、72%が左派/リベラル、15%が右派/保守派となっている。米国は共和党と民主党の二大政党制になっているが、いずれにも社会主義が浸透し、社会主義ポピュリズムと言うことでは共通している。あのヒットラーでさえ、社会主義を掲げていた。ナチスとは、国家「社会主義」ドイツ労働者党のことである。
秋の日射し

繰り返される金融緩和

2019-11-09 19:12:39 | 経済
中央銀行による金融政策は、宗教のようなものだと言う人がいる。「信じる」かどうかなのだ。世界人口の99.9%は中央銀行のある国に住む。中央銀行を持たない国は9つの小国だけである。しかし、主要国の中央銀行の多くは民間企業であることをほとんどの人が知らない。米国は100%民間であり、日本は50%が民間である。日本銀行は株式会社である。しかも、その民間の名前は伏されている。民間である限り「利益」が無視されることはない。つまり、中央銀行の金融政策はあくまでも運営主体である「民間」の利益が配慮されている。中央銀行が行う金融緩和とは債務増大である。金利を付けた貸し付けでしかない。日本のバブル崩壊を含めた過去の世界のバブル崩壊や金融危機のたびに中央銀行は金融緩和を行って来た。従って、その度に債務は積み上がって来ているのだ。2008年のリーマン・ショックでは、「大き過ぎて潰せない」とした金融機関には中央銀行FRBの大株主が含まれていた。しかも、FRBの「非伝統的」金融緩和により、債務額はさらに急増した。FRBに従った日本とEU、中国を合わせて20兆ドルの通貨が発行されたが、それらは全て債務になっているだけである。日本の通常の通貨発行量は100兆円規模であるが、日本銀行の「異次元」の金融緩和で480兆円規模の通貨が債務の形で発行された。世界の大手民間金融機関が参加し構成している国際機関,国際金融協会IIFとは数値が異なるが、世界銀行のCEO(最高経営責任者)から最近、国際通貨基金IMFの専務理事に就任したクリスタリナ・ゲオルギエヴァKristalina Georgieva氏は、「Global debt — both public and private — has reached an all-time high of $188 trillion. This amounts to about 230 percent of world output(公的および私的両方の世界的な債務は、過去最高の188兆ドルに達した。これは、世界の生産高の約230%に相当する)」と警告している。バブル崩壊や金融危機は、マネー、通貨量の急激な減少であるが、それを中央銀行が債務の形で通貨を大量発行することで、繕って来た。いかなる債務も所得や収益を超えるスピードで増加すれば、どこかで債務不履行にならざるを得なくなる。政府の場合は、体面上、債務不履行より、インフレや新通貨発行で切り抜けようとする。この秋からの欧州連合中央銀行ECBや米国中央銀行FRBの「金融緩和」再開は、ただ債務不履行時期を先延ばししているに過ぎない(日本銀行の金融緩和は規模を縮小してはいるが、継続されている)。しかし、それをやればやるほど、債務はさらに増えて行くだけであり、破綻時の規模を一層大きくするだけである。債務によって政府や企業を助ける方法は、政府や企業の規律を歪め、社会の効率を悪化させるだけである。しかも、それだけではなく、社会に格差を拡大させる原因にもなっている。病は常に早期治療が最良であるように、社会も早期に治療する必要がある。先送りはますます重症化するだけだ。とは言え、すでに重症化しており、困難な治療を要することになる。
いずれ落ちてしまうだろう

「狂気の世界」

2019-11-08 19:20:40 | 社会
昨夜の米国株式市場は史上最高値をさらに更新した。中央銀行FRBが9月半ば以来毎日600億ドル〜1000億ドルを金融機関に流し込んでおり、米中貿易戦争も一部で合意が得られたこともあって、株式市場は楽観的になっているようだ。FRBの行動は量的金融緩和(QE)そのものだが、あくまでも量的金融緩和ではないと主張しており、株式市場もそうせざるを得ない状況になっていることを気にしていないようだ。連日、FRBが金融機関にマネーを流し込まねばならない事態は、異常なのだが、それを無視する株式市場もまさに異常である。フランスのBNPパリバに次ぐ第2の銀行、ソシエテ・ジェネラルの投資戦略専門家で、欧州トップとの評価があるアルバート・エドワーズAlbert Edwards氏は、この米国の株式市場の上昇が、明かにFRBの実質量的金融緩和によると述べた上で、"The World Has Gone Mad(世界は狂ってしまった)"とまで表現している。日本はバブル崩壊後、米国はリーマン・ショック後ともに異常な金融緩和を開始し、マネーを金融機関に流し込むだけでなく、超低金利を持続させた。世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターのCEOレイ・ダリオ氏は、この超低金利が「お金は、お金と信用力がある人には基本的に無料で、お金と信用力がない人には基本的に利用できない。これは、富、機会、政治的ギャップの増大の一因となる。」として、現在の米国の格差問題が米国にとっての緊急課題だと述べている。「金融システムにお金をたくさん注入しても、それが金融システムにとどまってしまう。」金融緩和の恩恵を受ける裕福な人は、資金を投機に向けて、実体経済へはお金が回って行かない。米国で金融緩和が開始された後、富裕層がさらに富めば、それが溢れ落ちて、貧しい人たちへも流れて行く、トリクルダウンと言う考えが異常な金融緩和を擁護した。しかし、現実には、そんなことは起こらなかった。ダリオ氏は、今後の金融危機よりも、むしろ、こうした社会的不平等に危機感を感じている。米国社会を不安定化させるためだ。米国では、株式が最高値を更新する中で、学生ローンは1兆6,390億ドル、自動車ローンは1兆1,944億ドル、クレジットカード債務4.149兆ドルでいずれも過去最高となっている。企業債務も政府債務もまた過去最高の高さだ。この債務を拡大させたのが異常な低金利であった。債務はあくまで将来の先取りである。将来の需要、消費が先取りされていることを意味する。日本では、トヨタがまた最高益を更新した。やはり販売台数が増加したことによるものではなく、為替による利益増である。政府の円安政策だけでなく、国内に投資先が見つけられない巨額の資金が米国に投じられた。海外資産1000兆円は、円を売ってドルに変換した後、海外資産(株式・債券・不動産)がそのドルで買われる。つまり、円売りがあるため、これも円安を助長する。企業は社内留保に励み、国内での新たな産業を興すことなど眼中になく、安易に円安と海外投資での利益を求める。競争力の劣化は当然の結果でもある。政府の赤字財政と中央銀行の異常な金融緩和に支えられて、ようやくこの低成長の経済が維持されている。そんな経済が良く見えるように、政府も中央銀行も株価維持に全力を尽くしている。実体経済ではすでに悪化が明かであってもだ。
周辺の山々も色付いて来た

歪んだ資本主義

2019-11-07 19:19:47 | 社会
通貨が実体経済の商品とサービスの価値を超えて発行されるとインフレを起こす。それが過去の長い歴史であった。金融経済はあくまで実体経済の補助役であった。しかし、1971年の準金本位制離脱後に芽生え、1980年代から1990年代にかけて大きく拡大した金融経済は、今では実体経済を遥かに凌ぐ規模に膨らんでしまった。実体経済の商品やサービスの価値以上に通貨が発行されても、過剰な通貨は金融経済に吸収され、インフレを起こさず、むしろ金融経済に通貨が吸収され過ぎて、デフレ傾向が強まった。生産が賃金の低い新興国へ移転され、インターネットがさらに価格を抑える機能を果たしたこともあって、物価は容易には上がらず、非正規雇用や高齢者・女性労働の拡大が賃金を抑制したため、実体経済の通貨量は相対的に押さえ込まれた。代わりに金融経済での通貨量が急速に拡大した。この金融経済での通貨量の急速な拡大は、2008年の金融危機後の異常な金融緩和が原因である。かっては実体経済への投資が主であったが、実体経済の主体である製造業は先進国から新興国へ移り、先進国の投資資金は株式、債券、金融派生商品、不動産などの金融商品に向かい、中央銀行によるマイナス金利を含む異常な低金利と、債券や株式の購入による金融経済への大量通貨の流し込みにより歴史上かってない歪んだ資本主義社会が生み出されている。しかも超低金利は政府の財政規律を緩ませ、政府債務をも急拡大させている。今や超低金利状態から政府債務も金融経済も抜け出せない状態になってしまった。借金まみれの政府財政も金融経済も非効率になり、先進国の経済成長はますます低下傾向を強めている。事業主体では市中金融機関が最もこの異常な超低金利の直撃を受けており、いずれ遠からず、倒産に追い込まれるため、業界の再編成が必ず起きるだろう。いずれにしてもこの異常な金融緩和状態は持続不可能であり、どこかで金融崩壊が発生し、社会経済の長引く低迷状態をもたらすことになる。この期間を通して、新たな経済システムを構築して行くしかないだろう。英国の中央銀行イングランド銀行などは世界共通のデジタル通貨を提案している。政府や中央銀行にとっては、デジタル通貨はすべての通貨の流れを把握出来るため、とても管理しやすくなる。世界的な流れとしては、いずれデジタル通貨の時代となるだろうが、その際には、すべての国民の金融資産が政府により把握され、脱税などの不正は確かに困難になるだろう。しかし、富裕層はすでにそうした流れをも掴んでおり、小国で税も少ない国にすでに逃れている。Apple社のような超巨大企業すらもが、「タックスヘイブン」と呼ばれる拠点に移ることで多額の税を逃れている。これをいかに徴税対象とし得るかが国にとって大きな問題となっている。超低金利と「タックスヘイブン」は経済的格差を急拡大させており、今後は先進国、特に米国などでは社会不安の拡大とともに大きな混乱をもたらすかも知れない。さらに日米のような持続不可能な政府債務や年金問題もいずれ破綻に追い込まれる時が遠からずやって来るだろう。冷静に考えれば、誰にでも分かることだが、メディアは一切こうしたことには触れいない。
木々の秋